「婚約破棄された令嬢の異世界カフェ革命~甘い復讐と運命の恋~」

鷹 綾

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第12話: 妨害の影

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 第12話: 妨害の影

赤い魔法花火が夜空に咲いた瞬間、私の心臓が凍りついた。

「ミアちゃん!」

リオンと私は街の宿を飛び出し、森へ向かって全速力で駆けた。街の門番が驚いて声を掛けてきたが、無視して通り抜ける。足音が石畳から土の道へ変わり、木々が迫ってくる。

「エレナ、落ち着け。俺の転移魔法で近道する」

リオンが私の手を握り、杖を振った。青い光が二人を包み、次の瞬間、森のカフェのすぐ近くに着地した。

そこは、戦場だった。

カフェの結界は半壊し、テーブルがいくつか倒れ、木々が折れている。中央に巨大な影――フォレストベア・キング。体長五メートルを超える灰色の巨熊で、赤い目が狂ったように輝いている。口元からよだれを垂らし、低い咆哮を上げ続けている。

そして、その前に立ちはだかる小さな姿。

ミアだった。

メイド服が泥と血で汚れ、耳はぺたりと伏せ、尻尾は震えている。それでも、両手に魔法で作ったクッキーの山を抱え、必死に魔物を睨んでいる。

「来ないで……! エレナお姉様のお店、壊さないで……!」

ミアの声は震えていたが、足は一歩も引いていない。

「ミアちゃん!!」

私が叫ぶと、ミアが振り返った。涙で顔をくしゃくしゃにしながら、笑った。

「エレナお姉様……ごめんなさい……ミア、守れなくて……」

その隙に、フォレストベア・キングが巨大な前足を振り上げた。

「危ない!」

リオンが杖を構え、青い魔法障壁を展開。巨熊の攻撃が障壁にぶつかり、衝撃波が周囲を吹き飛ばす。私はミアに駆け寄り、抱きしめた。

「よく頑張ったわ、ミアちゃん……もう大丈夫よ」

ミアが私の胸に顔を埋めて、ぽろぽろ泣いた。

「怖かった……でも、ミア、お姉様の大事なお店、守りたかった……」

リオンが私たちを庇うように立ち、巨熊を睨んだ。

「エレナ、ミアを結界の中に。俺が時間を稼ぐ」

「一人でなんて無理よ! 一緒に戦うわ!」

私はミアを安全な残りの結界に押し込み、カウンターに立った。魔法を全力で集中させる。

「みんなを癒し、力を与えるスイーツを……最大限に!」

光が爆発的に広がり、テーブルの上に巨大なスイーツの山が出現。チョコレートケーキ、モンブラン、プリン、クッキー――すべてに最上級の回復・強化効果を付与。

「リオンさん、これを!」

私はケーキをリオンに投げ、彼は即座に食べながら魔法を連発した。魔力が爆発的に増幅し、青い雷が巨熊を襲う。

巨熊が咆哮し、突進してくる。

私はさらにスイーツを作り続ける。魔物の動きを鈍らせる甘い香りの霧、攻撃を跳ね返すチョコレートシールド、敏捷性を上げるマカロン。

「ミアちゃんも! クッキー食べて!」

ミアがクッキーをかじると、体が光り、小さな魔法を放てるようになった。獣人の素早さを活かして、巨熊の死角にクッキーを投げ込み、動きを乱す。

三人での連携が、徐々に巨熊を追い詰めていく。

だが、巨熊の力がまだ強大だった。リオンの障壁に亀裂が入り、私の魔力も底をつき始めていた。

「このままじゃ……」

そのとき、巨熊の背後から不自然な黒い霧が立ち上った。

リオンが目を細めた。

「あれは……操魔の術式だ。やっぱり誰かが操ってる!」

黒い霧の中から、一人の男が現れた。

ローブを纏った中年男性。顔に不気味な笑みを浮かべ、手に黒い水晶を持っている。

「ふふふ……甘い香りが邪魔でね。転移者のスキルが、これほど脅威になるとは思わなかったよ」

「あなたは……?」

男は嘲笑った。

「王都の貴族、ド・グランベル家の使いだ。転移者を排除するよう命じられてね。特に、冒険者たちの心を掴むようなスキル持ちは危険だ」

王都の貴族――。元の世界の貴族社会と同じ。力を持つ者を潰す。

胸の奥で、黒い怒りが爆発した。

「私のカフェが……私たちの幸せが、邪魔だというの?」

「その通り。スイーツで冒険者たちを癒し、忠誠を変えるなど許されない。消えてもらうよ」

男が水晶を掲げ、巨熊の力がさらに増した。

リオンが歯を食いしばった。

「エレナ、逃げろ。俺が――」

「嫌よ! 誰も置いていかない!」

私は最後の魔力を振り絞った。

「みんなの絆を、甘さで繋ぐ……最大のデザートを!」

光が爆発し、巨大な「トリプルチョコレートタワーケーキ」が出現。見た目だけでなく、食べた者に最強のバフを与える究極のスイーツ。

リオンがケーキを食べ、魔力が爆発的に増幅。

ミアも小さな一切れを食べて、獣人の力を最大限に発揮。

私が叫んだ。

「今よ!」

リオンが最強の雷魔法を放ち、ミアが死角からクッキー爆弾を投げ、私が甘い香りの霧で巨熊の動きを完全に止める。

三人の攻撃が同時に炸裂。

フォレストベア・キングが悲鳴を上げ、倒れ込んだ。

男が慌てて逃げようとしたが、リオンが魔法で拘束。

「お前はギルドに引き渡す。転移者狩りの証拠としてな」

男は悔しげに歯噛みしながら、連れていかれた。

戦いが終わった後、カフェは半壊していた。

でも、三人とも無事だった。

ミアが泣きながら私に抱きついた。

「エレナお姉様……もう、壊れちゃった……」

私はミアとリオンを抱きしめた。

「大丈夫。街に新しいお店があるわ。そこで、また始めましょう」

リオンが静かに微笑んだ。

「そうだな。新しい場所で、もっと大きなカフェを」

朝日が昇り、壊れたカフェを照らした。

私たちの絆は、どんな妨害にも壊れない。

そして、この事件は逆に噂を呼び、街のカフェはオープン初日から大盛況になるだろう。

元の世界の理不尽を思い出しながら、私は決意した。

この成功を、いつかあの世界に届けてやる。

甘い復讐を、必ず。

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