「婚約破棄された令嬢の異世界カフェ革命~甘い復讐と運命の恋~」

鷹 綾

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第14話: パトロンの獲得

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第14話: パトロンの獲得

街のカフェがオープンして一週間が経っていた。

毎朝、開店前から行列ができ、昼過ぎには満席。夕方からは貴族や商人の予約客で埋まり、夜は冒険者たちの二次会で賑わう。甘い香りが街路に漂うたび、新しいお客さんが自然と引き寄せられてくる。

「エレナお姉様! 今日も大盛況です! ミア、幸せすぎて尻尾が止まりません!」

ミアがトレイを抱えながら、耳をぴこぴこさせて笑う。メイド服のフリルが可愛らしく揺れ、お客さんたちから「ミアちゃん!」と声がかかるたび、頰を赤らめてお辞儀する。

リオンは二階の窓際で、街を見下ろしながら警戒を続けていた。王都からの妨害の兆しはまだ小さいが、時折怪しいローブの男が店を遠巻きに観察しているらしい。

「リオンさん、いつもありがとう。少し休んで、ケーキでも食べて」

「……ああ」

リオンが席に着くと、私は新作の「ロイヤルミルクティーシフォンケーキ」を出した。ふわふわの生地に、濃厚なミルクティークリーム。疲労回復と魔力増幅効果を最大限に。

リオンが一口食べると、珍しく目を細めた。

「美味い……魔力が安定する」

「良かった」

そんな穏やかな午後、ある豪華な馬車が店の前に停まった。

金と銀の装飾が施された馬車。御者がドアを開けると、中から出てきたのは中年男性の貴族だった。

黒い髪に白い髭、立派な体躯。服装は王都の最高級シルクで、胸元に大きなルビーのブローチ。ルミナスの街では見かけない、明らかに高位の貴族だ。

「おお、ここが噂の魔法カフェか。甘い香りが街中まで届いておるわい」

貴族は店内を見回し、満足げに頷いた。

私はすぐに迎えに出た。

「いらっしゃいませ。ようこそ『エレナの甘い魔法カフェ』へ」

「うむ、君が店主のエレナ嬢か。わしはこの街の領主、ヴァルター・フォン・グレンベルク伯爵じゃ」

領主!?

店内が少しざわついた。ルミナスの街は王都直轄に近いが、周辺領地を治める貴族がいる。グレンベルク伯爵は冒険者ギルドにも多額の寄付をしており、街の有力者だ。

「伯爵様、ご来店ありがとうございます。どうぞこちらのお席へ」

私は一番良い窓際の席にご案内した。ミアが緊張しながらお冷を運ぶ。

伯爵はメニューを見て、目を輝かせた。

「ほう、どれも珍しいものばかりじゃな。すべておすすめで出してくれ」

私はフルコースのように、クロワッサン、ショートケーキ、モンブラン、チョコレートフォンデュを順番に出した。

伯爵が一口食べるごとに、表情が変わっていく。

「これは……! ただの菓子ではないな。魔力が体を巡る……傷が癒える感覚じゃ」

伯爵は若い頃冒険者だったらしく、回復効果に敏感だった。

「嬢ちゃん、このスキルは一体何じゃ? 王都の宮廷菓子職人でも、この味と効果は出せまい」

「転移者のスキルです。甘いもので人を癒したいと思って」

伯爵は深く頷いた。

「素晴らしい。わしの領地は魔物が多く、冒険者たちが疲弊しておる。このカフェがあれば、街がもっと活気づく」

そして、伯爵は突然立ち上がり、私に頭を下げた。

「エレナ嬢、頼みがある。わしの領地の公式パトロンになってくれぬか? 資金援助をし、保護も約束する。代わりに、領地の冒険者たちに優先的にスイーツを提供してほしい」

パトロン!?

店内のお客さんたちがどよめいた。

「伯爵様、それは光栄です。でも、なぜ私に……」

「正直に言うておるよ。王都から、転移者を排除せよという圧力が来ておる。特に、冒険者たちの心を掴むスキル持ちは危険だとな」

胸がざわついた。あの魔物を操った貴族と同じ流れだ。

「だが、わしは違うと思う。君のような才能は、領地を発展させる。冒険者たちが強くなれば、魔物被害が減り、民も幸せになる」

伯爵の目は真剣だった。

「王都の連中に負けぬよう、わしが守る。どうじゃ?」

私は少し迷ったが、リオンが二階から軽く頷いたのを見て、決意した。

「……お受けします。伯爵様のパトロン、ありがたくいただきます」

伯爵が大笑いした。

「決まりじゃ! 明日から正式契約じゃ!」

その日から、カフェは領地公認の施設になった。

伯爵の援助で、店はさらに拡大。テラス席を増やし、持ち帰り専門のコーナーも作った。冒険者ギルドとの提携も進み、クエスト報酬にスイーツクーポンを付ける企画まで始まった。

売り上げはさらに爆発。街の景気まで上向き、みんなが笑顔になった。

ミアが喜んで飛び跳ねた。

「エレナお姉様! お店、もっと大きくなります!」

リオンが静かに言った。

「これで、王都の妨害にも対抗できる」

私は頷いた。

伯爵のような味方ができた。

この領地を、繁栄させてみせる。

そして、王都の貴族たちに――私の成功を見せつける。

だが、その夜。

伯爵が去った後、店の裏口に一通の手紙が置かれていた。

王都の紋章入り。

『転移者エレナへ

貴女のスキルは王国に脅威である。

即座に店を閉じ、王都へ出頭せよ。

さもなくば、領主ごと排除する』

脅迫状だった。

リオンが手紙を見て、目を細めた。

「来たか……本格的な陰謀だ」

私は手紙を握りしめ、微笑んだ。

「いいわ。来るなら、来ればいい」

私の甘い復讐が、少しずつ形になり始めていた。

王都の連中よ。

あなたたちが私を追放した世界で、どれだけ私が強くなったか――。

そろそろ、教えてあげるときだ。

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