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第15話 誇らしい妻、という自覚
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第15話 誇らしい妻、という自覚
クロード・アイゼン公爵は、その日、少しだけ集中できずにいた。
原因は明白だ。
(……誇らしい)
その感情が、頭から離れない。
執務机の上には、各所から上がってきた報告書。
その中に、見覚えのある文字があった。
――孤児院運営改善案、第一段階完了。
現場の混乱なし。
職員・子ども双方の満足度向上。
(……早すぎる)
わずか数日で、だ。
しかも、“公爵夫人の権威”を振りかざした形跡はない。
「……どうして、君は」
彼は、小さく呟いた。
「自然に、周囲を動かすんだ」
***
夕刻。
クロードは、珍しく自分から中庭へ向かった。
そこにいたのは、
花壇の手入れをしているセレナ。
ドレスではなく、動きやすい服。
だが、所作は変わらず優雅だ。
「……何をしている」 「見て分かりませんか?」 「分かるが、聞いている」
彼女は、微笑んだ。
「息抜きですわ」 「……それが?」 「花は、仕事を急かしませんから」
クロードは、何も言えなくなった。
(……敵わない)
彼女の隣に立つ。
沈黙が、心地いい。
「王宮から、噂が届いている」 「どんな?」 「“手放したのは、最大の失策だった”そうだ」
セレナは、肩をすくめた。
「ようやく、ですわね」
その反応に、
彼は胸の奥が、少しだけ締め付けられた。
「……怒らないのか」 「怒りは、もう使い切りました」
彼女は、土を払う。
「今は、前を見る方が楽しいですから」
クロードは、その横顔を見つめ――
自覚してしまった。
(……私は)
(この人を、誇りに思っている)
それは、契約の範疇ではない。
保護でも、責任でもない。
感情だ。
***
その夜。
二人で、書斎にいた。
「公爵」 「クロードでいい」
自然に、そう言ってしまった。
セレナが、少しだけ目を瞬く。
「……クロード」 「……」
呼ばれただけで、心拍が上がる。
情けない。
「今日の件ですが」 「孤児院か?」 「はい。今後は、現場に任せます」
クロードは、頷いた。
「無理はするな」 「承知しています。
――誰かが、止めてくれますから」
そう言って、彼を見る。
彼は、息を吸い、吐いた。
「……それが、私なら」 「はい」
即答だった。
胸の奥で、何かが決まる。
(……もう、戻れない)
白い結婚。
契約。
その言葉が、
少しだけ、遠くなった。
「セレナ」 「はい」 「私は――」
言葉が、詰まる。
まだ、言えない。
でも――
「君を、誇りに思っている」
それだけは、言えた。
セレナは、一瞬驚き、
そして、ゆっくり微笑んだ。
「……ありがとうございます」
その笑顔が、
胸に、深く刺さる。
――誇らしい妻。
その言葉が、
初めて“現実”として、胸に落ちた。
---
クロード・アイゼン公爵は、その日、少しだけ集中できずにいた。
原因は明白だ。
(……誇らしい)
その感情が、頭から離れない。
執務机の上には、各所から上がってきた報告書。
その中に、見覚えのある文字があった。
――孤児院運営改善案、第一段階完了。
現場の混乱なし。
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(……早すぎる)
わずか数日で、だ。
しかも、“公爵夫人の権威”を振りかざした形跡はない。
「……どうして、君は」
彼は、小さく呟いた。
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セレナは、肩をすくめた。
「ようやく、ですわね」
その反応に、
彼は胸の奥が、少しだけ締め付けられた。
「……怒らないのか」 「怒りは、もう使い切りました」
彼女は、土を払う。
「今は、前を見る方が楽しいですから」
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自覚してしまった。
(……私は)
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それは、契約の範疇ではない。
保護でも、責任でもない。
感情だ。
***
その夜。
二人で、書斎にいた。
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自然に、そう言ってしまった。
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「……クロード」 「……」
呼ばれただけで、心拍が上がる。
情けない。
「今日の件ですが」 「孤児院か?」 「はい。今後は、現場に任せます」
クロードは、頷いた。
「無理はするな」 「承知しています。
――誰かが、止めてくれますから」
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彼は、息を吸い、吐いた。
「……それが、私なら」 「はい」
即答だった。
胸の奥で、何かが決まる。
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その言葉が、
少しだけ、遠くなった。
「セレナ」 「はい」 「私は――」
言葉が、詰まる。
まだ、言えない。
でも――
「君を、誇りに思っている」
それだけは、言えた。
セレナは、一瞬驚き、
そして、ゆっくり微笑んだ。
「……ありがとうございます」
その笑顔が、
胸に、深く刺さる。
――誇らしい妻。
その言葉が、
初めて“現実”として、胸に落ちた。
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