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第37話 白い結婚、終わりの宣言
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第37話 白い結婚、終わりの宣言
宣言は、
静かであるほど重い。
***
王都へ向かう使者が、
城門を出たのは正午前だった。
封蝋は、公爵家正式印。
署名は――二人分。
それだけで、
意味は十分だった。
***
午後。
セレナは、書斎で紅茶を飲んでいた。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ席。
それなのに。
(……空気が、違いますわね)
胸の奥が、妙に静かだ。
緊張でも、不安でもない。
――覚悟が、落ち着いたあとの静けさ。
***
クロードもまた、執務室で同じ感覚を抱いていた。
(……宣言した)
(だが、
何かを失った感覚はない)
むしろ。
(肩の奥にあった重さが、
少し軽い)
***
夕刻。
王都からの早馬が到着した。
「……思ったより、早いですね」 「向こうも、
察していたのだろう」
クロードが、書簡を受け取る。
内容は簡潔だった。
――
公爵夫妻の意思、確かに受理した。
形式上の整理に入る。
――
理由の追及はない。
詮索もない。
それが、
最大限の承認だった。
***
「……終わりましたわね」 セレナが、静かに言う。
「ああ」 クロードも、同じ調子で答える。
感情的な言葉は、ない。
だが。
白い結婚は、
この瞬間、正式に終わった。
***
城内には、
すぐに噂が走った。
「白い結婚、解消だそうだ」 「……やはりか」 「理由は?」 「公表されていない」
人々は、
勝手に理由を作り、
勝手に納得する。
だが、
本当の理由は――
誰にも渡さない。
***
夜。
二人は、久しぶりに同じ場所で夕食を取っていた。
形式ではなく、
選択として。
「……妙ですね」 セレナが、ぽつりと言う。 「終わったはずなのに」 「……?」 「何も、壊れていません」
クロードは、少し考えてから答えた。
「壊すための関係では、
なかったからだろう」
セレナは、静かに微笑んだ。
「ええ」
***
食事の後。
二人は、回廊を並んで歩いた。
距離は、
まだ保たれている。
触れない。
越えない。
だが――
縛りは、消えた。
「……これから」 クロードが言う。 「外は、
“次”を期待するだろう」
セレナは、頷いた。
「ええ。
婚姻、再婚、
新たな政略」
「だが」 「……?」
「それは、
今日の問題ではない」
その言葉に、
セレナは少し笑った。
「同感ですわ」
***
立ち止まる。
回廊の中央。
「……白い結婚は終わった」 クロードが、改めて言う。
「ええ」 セレナが答える。
そして。
沈黙。
だが、
それはもう――
選ばれなかった沈黙ではない。
次の言葉を、
待つための沈黙。
***
夜空に、星が浮かぶ。
セレナは、静かに思う。
(終わりを宣言したということは)
(……始まりを、
否定しなかったということ)
クロードも、同じ星を見ていた。
(白い結婚は、
終わった)
(だが)
(私たちの関係が、
終わったわけではない)
宣言は、なされた。
外に向けて。
形式として。
そして今。
内側だけが、
本当の始まりを迎えようとしていた。
宣言は、
静かであるほど重い。
***
王都へ向かう使者が、
城門を出たのは正午前だった。
封蝋は、公爵家正式印。
署名は――二人分。
それだけで、
意味は十分だった。
***
午後。
セレナは、書斎で紅茶を飲んでいた。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ席。
それなのに。
(……空気が、違いますわね)
胸の奥が、妙に静かだ。
緊張でも、不安でもない。
――覚悟が、落ち着いたあとの静けさ。
***
クロードもまた、執務室で同じ感覚を抱いていた。
(……宣言した)
(だが、
何かを失った感覚はない)
むしろ。
(肩の奥にあった重さが、
少し軽い)
***
夕刻。
王都からの早馬が到着した。
「……思ったより、早いですね」 「向こうも、
察していたのだろう」
クロードが、書簡を受け取る。
内容は簡潔だった。
――
公爵夫妻の意思、確かに受理した。
形式上の整理に入る。
――
理由の追及はない。
詮索もない。
それが、
最大限の承認だった。
***
「……終わりましたわね」 セレナが、静かに言う。
「ああ」 クロードも、同じ調子で答える。
感情的な言葉は、ない。
だが。
白い結婚は、
この瞬間、正式に終わった。
***
城内には、
すぐに噂が走った。
「白い結婚、解消だそうだ」 「……やはりか」 「理由は?」 「公表されていない」
人々は、
勝手に理由を作り、
勝手に納得する。
だが、
本当の理由は――
誰にも渡さない。
***
夜。
二人は、久しぶりに同じ場所で夕食を取っていた。
形式ではなく、
選択として。
「……妙ですね」 セレナが、ぽつりと言う。 「終わったはずなのに」 「……?」 「何も、壊れていません」
クロードは、少し考えてから答えた。
「壊すための関係では、
なかったからだろう」
セレナは、静かに微笑んだ。
「ええ」
***
食事の後。
二人は、回廊を並んで歩いた。
距離は、
まだ保たれている。
触れない。
越えない。
だが――
縛りは、消えた。
「……これから」 クロードが言う。 「外は、
“次”を期待するだろう」
セレナは、頷いた。
「ええ。
婚姻、再婚、
新たな政略」
「だが」 「……?」
「それは、
今日の問題ではない」
その言葉に、
セレナは少し笑った。
「同感ですわ」
***
立ち止まる。
回廊の中央。
「……白い結婚は終わった」 クロードが、改めて言う。
「ええ」 セレナが答える。
そして。
沈黙。
だが、
それはもう――
選ばれなかった沈黙ではない。
次の言葉を、
待つための沈黙。
***
夜空に、星が浮かぶ。
セレナは、静かに思う。
(終わりを宣言したということは)
(……始まりを、
否定しなかったということ)
クロードも、同じ星を見ていた。
(白い結婚は、
終わった)
(だが)
(私たちの関係が、
終わったわけではない)
宣言は、なされた。
外に向けて。
形式として。
そして今。
内側だけが、
本当の始まりを迎えようとしていた。
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