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第38話 終わったはずの関係で、初めて選ぶ
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第38話 終わったはずの関係で、初めて選ぶ
白い結婚は、終わった。
それは事実で、
もう覆らない。
――だからこそ。
初めて、選べるようになった。
***
朝。
セレナは、いつもより少し遅く目を覚ました。
予定表は、白紙に近い。
(……決められていない一日)
それは、
彼女にとって久しぶりの感覚だった。
***
一方、クロードは中庭にいた。
剣も持たず、
訓練でもない。
(……誰にも、
決められていない時間)
公爵としてではなく、
夫でもなく、
“選ぶ立場の人間”としての時間。
***
昼前。
二人は、回廊で顔を合わせた。
偶然。
だが、足は止まる。
「……お時間は」 「あります」
条件も、理由もない。
それだけで、
会話が成立する。
***
「城下へ出る予定でした」 セレナが言った。 「視察ではなく」 「……私的な?」 「ええ」
クロードは、少しだけ考えてから答えた。
「……同行しても?」 「……命令ではなく?」 「もちろん」
その問いと答えが、
すでに“違い”だった。
***
城下。
護衛は最低限。
行程も、簡素。
人々は二人を見て、
一瞬だけ立ち止まり、
そして視線を逸らす。
――噂は、もう知っている。
(……今は、
“元夫婦”ですものね)
セレナは、内心でそう思い、
不思議と気が楽になる。
***
市場。
「こちらの果実、
よろしければ」 「……では、二つ」
些細な買い物。
だが。
(……誰に気を遣う必要もない)
それが、
こんなにも軽いとは。
***
店を出たところで、
セレナが立ち止まる。
「……不思議ですわね」 「……何が」
「白い結婚が終わって」 「……」 「初めて、
隣にいる理由を
自分で選んでいます」
クロードは、すぐに答えなかった。
少し考え、
そして言う。
「……私もだ」
短い言葉。
だが、はっきりしている。
***
歩く速度は、自然に揃った。
触れない。
越えない。
だが、
離れる理由もない。
***
昼食を取る店。
格式も、肩書きも関係ない。
「……こういう場所は」 セレナが言う。 「公爵夫人としては、
避けるべきでした」 「……今は?」 「今は、
“セレナ”ですわ」
クロードは、わずかに微笑んだ。
「……いい名だ」
それ以上、言わない。
***
食後。
店を出て、
人混みを抜ける。
ふと、セレナが足を止める。
「……クロード」 「……何だ」
「今日、
ここに来た理由を」 「……?」
「後悔していません」
クロードは、静かに頷いた。
「私もだ」
それは、
愛の言葉ではない。
だが。
選択の肯定だった。
***
夕刻。
城へ戻る道すがら。
セレナは、静かに思う。
(終わったはずの関係で)
(初めて、
誰にも決められずに
選んだ一日)
クロードも、同じ空を見ていた。
(……白い結婚が終わったから)
(ようやく、
始められる)
城門が見える。
ここで別れる。
それは、変わらない。
だが。
「……また」 セレナが言う。 「今日のような日を」 「……ああ」
「選んでも、
いいですか」 「……もちろん」
それだけで、
十分だった。
白い結婚は、終わった。
だからこそ。
誰にも決められていない関係が、
静かに、
動き出した。
---
白い結婚は、終わった。
それは事実で、
もう覆らない。
――だからこそ。
初めて、選べるようになった。
***
朝。
セレナは、いつもより少し遅く目を覚ました。
予定表は、白紙に近い。
(……決められていない一日)
それは、
彼女にとって久しぶりの感覚だった。
***
一方、クロードは中庭にいた。
剣も持たず、
訓練でもない。
(……誰にも、
決められていない時間)
公爵としてではなく、
夫でもなく、
“選ぶ立場の人間”としての時間。
***
昼前。
二人は、回廊で顔を合わせた。
偶然。
だが、足は止まる。
「……お時間は」 「あります」
条件も、理由もない。
それだけで、
会話が成立する。
***
「城下へ出る予定でした」 セレナが言った。 「視察ではなく」 「……私的な?」 「ええ」
クロードは、少しだけ考えてから答えた。
「……同行しても?」 「……命令ではなく?」 「もちろん」
その問いと答えが、
すでに“違い”だった。
***
城下。
護衛は最低限。
行程も、簡素。
人々は二人を見て、
一瞬だけ立ち止まり、
そして視線を逸らす。
――噂は、もう知っている。
(……今は、
“元夫婦”ですものね)
セレナは、内心でそう思い、
不思議と気が楽になる。
***
市場。
「こちらの果実、
よろしければ」 「……では、二つ」
些細な買い物。
だが。
(……誰に気を遣う必要もない)
それが、
こんなにも軽いとは。
***
店を出たところで、
セレナが立ち止まる。
「……不思議ですわね」 「……何が」
「白い結婚が終わって」 「……」 「初めて、
隣にいる理由を
自分で選んでいます」
クロードは、すぐに答えなかった。
少し考え、
そして言う。
「……私もだ」
短い言葉。
だが、はっきりしている。
***
歩く速度は、自然に揃った。
触れない。
越えない。
だが、
離れる理由もない。
***
昼食を取る店。
格式も、肩書きも関係ない。
「……こういう場所は」 セレナが言う。 「公爵夫人としては、
避けるべきでした」 「……今は?」 「今は、
“セレナ”ですわ」
クロードは、わずかに微笑んだ。
「……いい名だ」
それ以上、言わない。
***
食後。
店を出て、
人混みを抜ける。
ふと、セレナが足を止める。
「……クロード」 「……何だ」
「今日、
ここに来た理由を」 「……?」
「後悔していません」
クロードは、静かに頷いた。
「私もだ」
それは、
愛の言葉ではない。
だが。
選択の肯定だった。
***
夕刻。
城へ戻る道すがら。
セレナは、静かに思う。
(終わったはずの関係で)
(初めて、
誰にも決められずに
選んだ一日)
クロードも、同じ空を見ていた。
(……白い結婚が終わったから)
(ようやく、
始められる)
城門が見える。
ここで別れる。
それは、変わらない。
だが。
「……また」 セレナが言う。 「今日のような日を」 「……ああ」
「選んでも、
いいですか」 「……もちろん」
それだけで、
十分だった。
白い結婚は、終わった。
だからこそ。
誰にも決められていない関係が、
静かに、
動き出した。
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