『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第9話 フェルメリア不在の王国、ついに崩壊が露呈する

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◆第9話 フェルメリア不在の王国、ついに崩壊が露呈する

エヴァントラが隣国へ旅立ってから三日後。

王城は、早くも地獄の様相を呈していた。

廊下を駆ける文官たちの叫び声が響く。

「フェルメリア様が残した“年間予算案”、誰も読めません!!」
「殿下が“全部簡単にしろ”と言って書類を破り捨てたせいで……」
「外交文書が、他国へ誤送されました!」
「会議資料がなくて誰も発言できない!!」

文官A「殿下は今どこだ!?」
文官B「アイラ様と街へ……デートに……」

文官全員「デートぉぉぉおおおお!?!?!?」

その瞬間、王城に“集団の絶望”が満ちた。


---

一方その頃──
街のカフェ。

ウィッシュ王太子はアイラにケーキを食べさせながら、ご満悦だった。

「フェルメリアがいなくなっても、意外と何も変わらないな」
「ですよねぇ! わたし、殿下といると何も心配なくって!」

店の店員(いやめちゃくちゃ変わってますけど!?)

アイラはさらに続けた。

「そういえば、文官の人が“今日が他国との返答期限です!”って走ってましたよ?」

ウィッシュはケーキをつつきながら答えた。

「期限なんて適当に延ばせばいい。どうせ大した内容でもない」

(((重要です!!!!!)))

カフェの全客が心の中でツッコんだが、誰も言えなかった。

アイラはウィッシュの腕にしなだれかかる。

「殿下はすっごく頼りになります♡
もうフェルメリア様なんていりませんね!」

その言葉に、周囲の客たちが一斉にむせた。

「(いや逆!! むしろ今こそフェルメリア様が必要!!)」
「(国政を支えてたのは殿下じゃなくてフェルメリア様!!)」

だが当人たちは幸せそうに笑っている。


---

王城では──
ついに限界に達した国王アクトロスが怒鳴り声を上げた。

「フェルメリア嬢をすぐに呼び戻せ!! 今すぐだ!!」

文官長が震えながら答える。

「む、無理でございます陛下……」
「彼女はすでに国境を越えられました。追いかけようとしても……」

「しても?」

「“フェルメリア様を追放した国になど戻るわけがない”と、
 国中の者が止めに入り……」

国王「お前たち、どれだけ彼女に依存していたんだ……!」

文官長「陛下……申し上げにくいのですが……
フェルメリア様のいない王国は──
“行政処理能力が三割以下”に低下しております」

国王「三割!?」

文官長は泣きながら報告を続けた。

「書類は行方不明、会議は混乱、他国は不審がり始め……
国境近くの諸侯からは“王国が機能していない”と抗議が……!」

国王は頭を抱えた。

「……ウィッシュ……お前は何ということを……」


---

その頃──
フェルメリアはアイオン官邸のバルコニーで、静かに紅茶を口にしていた。

鳥の声、透き通る空気、
王国ではあり得なかった穏やかな時間。

アイオンが控えめに声をかける。

「……お口に合いますか?」

「ええ。とても落ち着きますわ」

アイオンは、ほっと安堵した顔をした。

ふと、フェルメリアは空を見上げながら呟いた。

「さて……王国はそろそろ大混乱でしょうね」

アイオン「……それは、あなたが必要とされていた証ですよ」

フェルメリアはくすっと笑った。

「でも、戻りませんわ。
“必要とされるから戻る”なんて、あの国には似合いませんもの」

アイオンは一瞬だけ目を見開き──
やがて静かに頷いた。

「……あなたが選んだ未来を、わたしは尊重します」

フェルメリアは微笑む。

(不思議な方。
王国では誰も、わたくしの選択を尊重してはくれなかったのに)

彼女の胸には、確かな“自由”の温もりが宿っていた。

そしてその頃──

ウィッシュ王太子とアイラは
“国の崩壊の火種がすぐそこに迫っている”ことを
まだ何ひとつ理解していなかった。


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