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第三十二話 選ばれる側
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第三十二話 選ばれる側
揺らぎは、測られた。
残ったのは、数ではなく――態度だった。
王都の朝は、静かだった。
だが、その静けさの中で、現場の空気が確かに変わり始めている。
「……判断が、早くなっています」
マティアスが示した新しい集計表には、はっきりとした差が出ていた。
「報告遅延、平均一時間以内。
“判断待ち”の項目は、ほぼ消えました」
「選ばれる側になったのですわね」
エヴァリーナは、淡く頷く。
判断を仰ぐ側から、
判断される側へ。
立場が変わると、人は動く。
数日後、王城に届いた要請書の文面が、以前と違っていた。
『当方は、検証条件を理解しております』
『撤回条件についても、了承済みです』
『期限内に結果を出せない場合、辞退を受け入れます』
言い訳は、ない。
保険も、張られていない。
「……ずいぶん、覚悟がはっきりしていますね」
官吏の声に、ヴァルターは短く答えた。
「選ばれる条件を、理解したからだ」
条件は、縛りではない。
入口だ。
一方、クロイツ公爵家では、面談が続いていた。
人数は少ない。
だが、空気は濃い。
「不安は、ありませんか」
エヴァリーナの問いに、若い商人が答える。
「あります」
正直な声。
「ですが、曖昧な期待より、
条件の方が耐えられます」
その言葉に、彼女は小さく頷いた。
「それで、十分です」
完璧さは、求めない。
選択を、引き受ける覚悟だけでいい。
同じ頃、辞退の書簡も届いていた。
『今回は、参加を見送ります』
『現体制では、条件を満たせないと判断しました』
理由は、簡潔だ。
責任転嫁は、ない。
「……去り方も、変わりましたね」
マティアスが言う。
「ええ」
エヴァリーナは、肯定した。
「選ばれない理由を、
外に求めなくなった」
それは、秩序が機能している証だ。
夜、エヴァリーナは記録帳に新しい項目を書き足した。
――選ばれるのは、
――能力ではない。
――選択を引き受けた者だ。
席に座る者が、選ぶ。
だが同時に、選ばれる側も、席を試している。
条件が曖昧なら、
誰も本気にならない。
条件が明確なら、
本気の者だけが残る。
窓の外、王都の灯りは安定していた。
派手さはない。
だが、迷いもない。
エヴァリーナ・フォン・クロイツは、
その灯りを見下ろしながら、静かに思う。
――次に試されるのは、
選ぶ側ではない。
選ばれた後の責任だ。
物語は、
次の段階へ進もうとしていた。
揺らぎは、測られた。
残ったのは、数ではなく――態度だった。
王都の朝は、静かだった。
だが、その静けさの中で、現場の空気が確かに変わり始めている。
「……判断が、早くなっています」
マティアスが示した新しい集計表には、はっきりとした差が出ていた。
「報告遅延、平均一時間以内。
“判断待ち”の項目は、ほぼ消えました」
「選ばれる側になったのですわね」
エヴァリーナは、淡く頷く。
判断を仰ぐ側から、
判断される側へ。
立場が変わると、人は動く。
数日後、王城に届いた要請書の文面が、以前と違っていた。
『当方は、検証条件を理解しております』
『撤回条件についても、了承済みです』
『期限内に結果を出せない場合、辞退を受け入れます』
言い訳は、ない。
保険も、張られていない。
「……ずいぶん、覚悟がはっきりしていますね」
官吏の声に、ヴァルターは短く答えた。
「選ばれる条件を、理解したからだ」
条件は、縛りではない。
入口だ。
一方、クロイツ公爵家では、面談が続いていた。
人数は少ない。
だが、空気は濃い。
「不安は、ありませんか」
エヴァリーナの問いに、若い商人が答える。
「あります」
正直な声。
「ですが、曖昧な期待より、
条件の方が耐えられます」
その言葉に、彼女は小さく頷いた。
「それで、十分です」
完璧さは、求めない。
選択を、引き受ける覚悟だけでいい。
同じ頃、辞退の書簡も届いていた。
『今回は、参加を見送ります』
『現体制では、条件を満たせないと判断しました』
理由は、簡潔だ。
責任転嫁は、ない。
「……去り方も、変わりましたね」
マティアスが言う。
「ええ」
エヴァリーナは、肯定した。
「選ばれない理由を、
外に求めなくなった」
それは、秩序が機能している証だ。
夜、エヴァリーナは記録帳に新しい項目を書き足した。
――選ばれるのは、
――能力ではない。
――選択を引き受けた者だ。
席に座る者が、選ぶ。
だが同時に、選ばれる側も、席を試している。
条件が曖昧なら、
誰も本気にならない。
条件が明確なら、
本気の者だけが残る。
窓の外、王都の灯りは安定していた。
派手さはない。
だが、迷いもない。
エヴァリーナ・フォン・クロイツは、
その灯りを見下ろしながら、静かに思う。
――次に試されるのは、
選ぶ側ではない。
選ばれた後の責任だ。
物語は、
次の段階へ進もうとしていた。
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