婚約破棄はあなたの意思でしたわね? ~王太子を廃嫡に追い込み、義妹を平民に落とした公爵令嬢は新時代の王妃になります~

鷹 綾

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第二十四話 義妹切り捨て

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第二十四話 義妹切り捨て

廃嫡審議の知らせが王都を駆け巡った翌日。

王宮の一室で、アルヴァリオはひとり書類を見つめていた。

王位継承再審議。

その文字が、まるで刃のように胸を刺す。

扉が控えめに叩かれ、セシルが入ってくる。

顔色は悪く、目元は泣き腫らしている。

「殿下……審議は誤解ですわよね?」

彼女の声はかすれていた。

アルヴァリオは答えない。

机の上には、監査の最終報告草案が置かれている。

盗用。
横領疑惑。
監督責任。

そして一行。

――資金移動の直接指示者:セシル・アーディン。

彼はその一文を、何度も読んだ。

「殿下?」

セシルが一歩近づく。

「わたくしを守ると仰いましたわ」

その言葉が、かつては誇りだった。

だが今は重い。

「……セシル」

低い声。

「資金移動の指示は、お前が出したのか」

彼女は一瞬、視線を逸らす。

「父が……」

「お前は承認したのか」

沈黙。

それが答えだった。

アルヴァリオの胸に、冷たい現実が落ちる。

守れば、自分が終わる。

切れば、まだ可能性は残る。

王になる道か。

彼女との約束か。

扉の外では、重臣たちが待っている。

王位継承審議は感情を考慮しない。

必要なのは、責任の明確化。

アルヴァリオは立ち上がる。

「……今回の資金移動は」

声が乾く。

「セシルの独断によるものだ」

空気が止まる。

セシルの瞳が見開かれる。

「え……?」

「俺は詳細を知らなかった」

その言葉は、完全な嘘ではない。

だが真実でもない。

「殿下……?」

セシルの声が震える。

「俺は監督責任を負う。だが、直接の指示は彼女だ」

扉が開く。

重臣たちが入る。

その場で、アルヴァリオは同じ言葉を繰り返した。

「盗用も資金移動も、セシルの判断だ」

冷たい静寂。

セシルはその場に崩れ落ちる。

「違います……!」

誰も動かない。

守ると誓ったはずの男が、今は距離を置いている。

公爵邸。

報告が届く。

「王太子殿下、義妹様を主犯と明言」

私は目を閉じる。

「そうですか」

執事が静かに続ける。

「保身に出られました」

「当然の流れです」

怒りも嘲笑もない。

選択は続く。

盗用を庇ったのも選択。

切り捨てたのも選択。

王宮。

セシルは立ち上がる。

「殿下……わたくしは殿下のために!」

「国のためだ」

アルヴァリオの声は冷たい。

その瞬間、セシルは理解した。

自分は守られる存在ではなくなった。

必要なくなったのだ。

重臣の一人が言う。

「責任の所在は明確になりました」

冷酷な言葉。

それは宣告に近い。

王位を守るため、王太子は義妹を切った。

だが。

切ったことで、何が残るのか。

王都では即座に噂が広がる。

「殿下が義妹を切った」
「保身だ」
「愛を選んだのではなかったのか」

矛盾は鋭い。

舞踏会の夜。

“俺が守る”

その言葉は、今や嘲笑の種だ。

公爵邸の庭。

私は薔薇を見つめる。

「選びましたね」

守ると言い、切る。

その矛盾こそが、彼の限界。

セシルは孤立する。

アルヴァリオは王位に縋る。

だが信用は戻らない。

義妹切り捨て。

それは延命策。

しかし同時に――

王太子としての最後の誇りを、自ら砕いた瞬間でもあった。
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