婚約破棄はあなたの意思でしたわね? ~王太子を廃嫡に追い込み、義妹を平民に落とした公爵令嬢は新時代の王妃になります~

鷹 綾

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第二十三話 廃嫡審議開始

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第二十三話 廃嫡審議開始

王宮の鐘が、ゆっくりと三度鳴った。

それは通常の会議ではない。

王位継承に関わる審議が始まる合図だ。

玉座の間には、王族、重臣、貴族院議長、軍務卿、財務卿が揃っている。

中央に立つのは、王太子アルヴァリオ。

かつて堂々と立っていたその場所で、今日は沈黙している。

国王が立ち上がる。

「本日、王太子の資質について審議を開始する」

ざわめきが広がる。

“廃嫡”という言葉はまだ出ていない。

だが誰もが理解している。

そこへ向かう議題だと。

財務卿が報告する。

「監査結果中間報告。資金管理の重大な過失。監督責任の放棄」

軍務卿が続く。

「南方補給停止により、国防体制が一時的に弱体化」

外交官代表が言う。

「隣国との信用協定にも影響」

積み上がる報告。

ひとつひとつは“失策”。

だが重なれば、“資質の問題”になる。

国王は息子を見つめる。

「アルヴァリオ」

低い声。

「王太子として、自らをどう評価する」

沈黙。

大広間が凍る。

アルヴァリオの胸に、怒りはない。

残っているのは、焦燥と恐怖。

「……俺は」

喉が渇く。

「過ちを犯した」

ざわめき。

「だが、王として学ぶ機会を」

その言葉に、議長が口を挟む。

「学ぶ機会は、国を賭けるものではございません」

静かな拒絶。

アルヴァリオの拳が震える。

かつては当然だった。

王太子であること。

王になること。

だが今、それは審議対象だ。

重臣の一人が言う。

「感情優先の判断。責任の曖昧化。監査中の逆上」

一つ一つ、突き刺さる。

「王に必要なのは、冷静さと責任です」

その言葉が、大広間に重く響く。

第二王子レオニードは沈黙している。

何も言わない。

それが逆に際立つ。

比較は、もはや暗黙ではない。

公式だ。

国王がゆっくりと告げる。

「本日より、王位継承権について再審議を行う」

空気が止まる。

ついに核心が出た。

再審議。

つまり、剥奪の可能性。

セシルは顔を失う。

「そんな……」

彼女は理解していなかった。

盗用が、横領が、謹慎が。

ここまで繋がるとは。

公爵邸。

報告は即座に届く。

「廃嫡審議、正式開始」

私は目を閉じる。

「王家は決断に向かいましたね」

「はい」

執事の声は静かだ。

私は窓の外を見る。

怒りも喜びもない。

これは私の手で行ったことではない。

選択の積み重ねが、ここへ辿り着いただけ。

王宮。

アルヴァリオは立ったまま、父を見つめる。

父の目は冷たい。

王の目だ。

「まだ決定ではない」

国王が告げる。

「だが、お前は自らの立場を理解せよ」

王太子は、初めて足元の崩れを実感する。

それは噂ではない。

謹慎でもない。

王位そのものが揺れている。

大広間の扉が閉じられる。

重い音。

それは、ひとつの時代の終わりの始まりだった。

王太子アルヴァリオ。

彼はまだ王位を失ってはいない。

だが――

初めて、王位が“自分のものではない”可能性を突きつけられた。

廃嫡審議開始。

それは最強ざまぁへの、決定的な第一歩だった。
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