婚約破棄はあなたの意思でしたわね? ~王太子を廃嫡に追い込み、義妹を平民に落とした公爵令嬢は新時代の王妃になります~

鷹 綾

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第三十一話 格の違い

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第三十一話 格の違い

北方へ向かう馬車が王都を発ったその日。

王宮の大広間では、静かな集まりが開かれていた。

華やかな舞踏会ではない。

だが、集まった顔ぶれは重い。

重臣、諸侯、主要貴族。

そして――第二王子レオルド。

私は招かれていた。

形式は「王国再建に関する意見交換会」。

だが、実質は次の体制を誰が支えるかの確認の場。

かつてアルヴァリオの隣に立っていた位置。

今、私はそこに立っていない。

少し離れた場所で、静かに席に着く。

それでも視線は集まる。

レオルドが立ち上がる。

「兄の件で、王家は大きく信頼を損ねた」

声は穏やかだが、揺らがない。

「だが、立て直せる」

彼の視線が、私へ向く。

「ヴェルミリア公爵令嬢の協力があれば」

ざわめきが走る。

あからさまな指名。

私はゆっくり立ち上がる。

「公爵家は王家と対立する意思はございません」

落ち着いた声で言う。

「ただし、責任と契約を守る体制が前提です」

誰かが小さく息を呑む。

条件提示。

しかしそれは当然。

レオルドは頷く。

「同意する」

即答。

そこに迷いはない。

「感情ではなく、制度で支える」

かつての王太子との決定的な違い。

彼は私を“使える駒”として扱わない。

対等な協力者として扱う。

会議は具体的な再建策へ移る。

財務整理。

無謀な投資の清算。

透明化。

私は必要な指摘だけを述べる。

過剰に前へ出ない。

だが、誰もが理解する。

実務の軸は私だと。

会議が終わる。

廊下で数名の貴族が囁く。

「格が違う」
「元殿下とは比べものにならない」
「だから公爵令嬢なのだ」

私は聞こえないふりをする。

褒め言葉に酔う趣味はない。

庭園。

レオルドが近づく。

「今日の提案、助かった」

「当然のことを申し上げただけです」

彼は軽く笑う。

「兄なら、君の意見を自分の功績にしただろう」

私は目を伏せる。

否定しない。

それが事実だから。

「私は、君の力を借りたい」

真っ直ぐな言葉。

「支配ではなく、協力として」

風が静かに吹く。

私はゆっくり顔を上げる。

「殿下」

「私は王妃の座が欲しいわけではありません」

「ですが、国が健全であることは望みます」

彼は頷く。

「ならば、共に作ろう」

無理な誓いも、甘い言葉もない。

現実的で、誠実な提案。

その瞬間、私は理解する。

格の違い。

王になる資格とは、血統だけではない。

責任を理解するかどうか。

他者を尊重できるかどうか。

かつて私を切り捨てた男と。

今、隣に立つ男。

比較するまでもない。

遠く北方へ向かう馬車。

元王太子は寒風の中で揺られている。

一方、王都では新しい基盤が築かれ始める。

同じ王家の血を引きながら。

未来は、これほどまでに違う。

私は静かに息を吐く。

終わりは近い。

次は――

新時代の始まり。
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