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第十二話 年齢詐称
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第十二話 年齢詐称
アルヴェイン公爵邸の書斎。
机の上には新たな書類が並んでいた。
結婚記録。
教会の登録簿。
貴族戸籍。
フロレンティアは静かにページをめくっていた。
その向かいで、執事レオナードが報告を続ける。
「王都中央教会の結婚記録です」
「オデット伯爵家の協力を得て確認しました」
フロレンティアは頷く。
「ありがとうございます」
そして書類に目を落とした。
そこに書かれている名前。
ヴィオレッタ・オデット
その下には。
配偶者
ダリオン・アルヴェイン
フロレンティアは小さく息を吐いた。
「……正式な結婚ですね」
レオナードが答える。
「はい」
「教会の誓約も行われております」
フロレンティアはページをめくった。
結婚の日付。
その数字を見て、彼女の指が止まる。
「三年前」
レオナードが言う。
「当時」
「ダリオン様は十七歳」
フロレンティアは静かに頷いた。
「覚えています」
彼女の弟はまだ少年だった。
そして。
彼女は次の欄を見る。
花嫁の年齢 十九歳
フロレンティアはその数字を指でなぞった。
「十九歳」
レオナードは言う。
「社交界でも、その年齢で通っていました」
フロレンティアは静かに計算した。
そして、ふっと小さく笑った。
「おかしいですね」
レオナードが尋ねる。
「どこがでしょう」
フロレンティアは別の書類を出した。
それは貴族戸籍だった。
「こちらを見てください」
レオナードは覗き込む。
そこに書かれている生年。
そしてフロレンティアは言った。
「この生年が正しいなら」
「結婚当時の年齢は」
彼女は静かに告げる。
「二十八歳」
レオナードの表情が固まった。
書斎が静まり返る。
フロレンティアは紅茶を一口飲んだ。
「九歳」
レオナードが呟く。
「はい」
フロレンティアは微笑んだ。
「九歳も若く申告していたことになります」
レオナードは慎重に言う。
「つまり」
フロレンティアは答えた。
「年齢詐称」
静かな言葉だった。
だがその意味は重い。
貴族社会では。
年齢詐称はただの嘘ではない。
婚姻詐欺に等しい。
レオナードが言う。
「伯爵家が仕組んだのでしょうか」
フロレンティアは少し考えた。
「可能性は高いですね」
彼女は書類を整える。
「二十八歳の令嬢」
「しかも伯爵家」
「政略結婚は難しい」
レオナードは頷いた。
「ですが十九歳なら」
フロレンティアは続ける。
「若い花嫁」
「問題ありません」
レオナードはゆっくり言う。
「つまり」
フロレンティアは静かに答えた。
「年齢を偽って」
「公爵家に嫁いだ」
書斎の空気が重くなる。
フロレンティアは机の書類を軽く叩いた。
「そして今」
彼女は小さく笑う。
「王太子妃」
レオナードは苦笑した。
「大変な野心でございます」
フロレンティアは椅子にもたれた。
「二十九歳」
「人妻」
「それでも王太子妃」
彼女は静かに言った。
「欲張りですね」
レオナードは少し迷いながら尋ねた。
「殿下は」
「この年齢をご存知なのでしょうか」
フロレンティアは首を横に振った。
「いいえ」
そして静かに続ける。
「知っていたら」
彼女は微笑む。
「さすがに“真実の愛”とは言えないでしょう」
レオナードは小さく笑った。
フロレンティアは立ち上がる。
窓の外では、夕日が庭を赤く染めていた。
彼女はその光を眺めながら言う。
「二十九歳」
そしてゆっくり続けた。
「でも」
「社交界では二十歳」
レオナードが尋ねる。
「公表されますか?」
フロレンティアは首を横に振る。
「まだです」
彼女の声はとても落ち着いていた。
「今は」
「証拠を揃えるだけ」
レオナードは頷く。
フロレンティアは最後に書類を見つめた。
そこに並ぶ二つの名前。
ヴィオレッタ・オデット
ダリオン・アルヴェイン
彼女は静かに呟いた。
「年齢詐称」
そして。
ゆっくり微笑んだ。
「これは」
「面白くなりそうですね」
アルヴェイン公爵邸の書斎。
机の上には新たな書類が並んでいた。
結婚記録。
教会の登録簿。
貴族戸籍。
フロレンティアは静かにページをめくっていた。
その向かいで、執事レオナードが報告を続ける。
「王都中央教会の結婚記録です」
「オデット伯爵家の協力を得て確認しました」
フロレンティアは頷く。
「ありがとうございます」
そして書類に目を落とした。
そこに書かれている名前。
ヴィオレッタ・オデット
その下には。
配偶者
ダリオン・アルヴェイン
フロレンティアは小さく息を吐いた。
「……正式な結婚ですね」
レオナードが答える。
「はい」
「教会の誓約も行われております」
フロレンティアはページをめくった。
結婚の日付。
その数字を見て、彼女の指が止まる。
「三年前」
レオナードが言う。
「当時」
「ダリオン様は十七歳」
フロレンティアは静かに頷いた。
「覚えています」
彼女の弟はまだ少年だった。
そして。
彼女は次の欄を見る。
花嫁の年齢 十九歳
フロレンティアはその数字を指でなぞった。
「十九歳」
レオナードは言う。
「社交界でも、その年齢で通っていました」
フロレンティアは静かに計算した。
そして、ふっと小さく笑った。
「おかしいですね」
レオナードが尋ねる。
「どこがでしょう」
フロレンティアは別の書類を出した。
それは貴族戸籍だった。
「こちらを見てください」
レオナードは覗き込む。
そこに書かれている生年。
そしてフロレンティアは言った。
「この生年が正しいなら」
「結婚当時の年齢は」
彼女は静かに告げる。
「二十八歳」
レオナードの表情が固まった。
書斎が静まり返る。
フロレンティアは紅茶を一口飲んだ。
「九歳」
レオナードが呟く。
「はい」
フロレンティアは微笑んだ。
「九歳も若く申告していたことになります」
レオナードは慎重に言う。
「つまり」
フロレンティアは答えた。
「年齢詐称」
静かな言葉だった。
だがその意味は重い。
貴族社会では。
年齢詐称はただの嘘ではない。
婚姻詐欺に等しい。
レオナードが言う。
「伯爵家が仕組んだのでしょうか」
フロレンティアは少し考えた。
「可能性は高いですね」
彼女は書類を整える。
「二十八歳の令嬢」
「しかも伯爵家」
「政略結婚は難しい」
レオナードは頷いた。
「ですが十九歳なら」
フロレンティアは続ける。
「若い花嫁」
「問題ありません」
レオナードはゆっくり言う。
「つまり」
フロレンティアは静かに答えた。
「年齢を偽って」
「公爵家に嫁いだ」
書斎の空気が重くなる。
フロレンティアは机の書類を軽く叩いた。
「そして今」
彼女は小さく笑う。
「王太子妃」
レオナードは苦笑した。
「大変な野心でございます」
フロレンティアは椅子にもたれた。
「二十九歳」
「人妻」
「それでも王太子妃」
彼女は静かに言った。
「欲張りですね」
レオナードは少し迷いながら尋ねた。
「殿下は」
「この年齢をご存知なのでしょうか」
フロレンティアは首を横に振った。
「いいえ」
そして静かに続ける。
「知っていたら」
彼女は微笑む。
「さすがに“真実の愛”とは言えないでしょう」
レオナードは小さく笑った。
フロレンティアは立ち上がる。
窓の外では、夕日が庭を赤く染めていた。
彼女はその光を眺めながら言う。
「二十九歳」
そしてゆっくり続けた。
「でも」
「社交界では二十歳」
レオナードが尋ねる。
「公表されますか?」
フロレンティアは首を横に振る。
「まだです」
彼女の声はとても落ち着いていた。
「今は」
「証拠を揃えるだけ」
レオナードは頷く。
フロレンティアは最後に書類を見つめた。
そこに並ぶ二つの名前。
ヴィオレッタ・オデット
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