『ラノベでリアルに描いてみた。舞踏会で婚約破棄したら、その場で人生が終了した件

鷹 綾

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第33話 公式は、裁きを私情から隔離する

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第33話 公式は、裁きを私情から隔離する

 責任の所在が確定した時点で、次に行われるのは裁定だ。多くの人は、裁きを「怒りの発露」だと誤解する。だが、公式における裁きとは、感情を排除し、秩序を回復するための配置変更に過ぎない。罰することが目的ではない。再発を防ぎ、制度を保つことが目的だ。

 私は控室で、裁定文案に目を通していた。文面は簡潔で、形容詞が極端に少ない。評価語が混じれば、そこから私情が滲む。今回の案件に、それは不要だった。必要なのは整合性と再現性だ。誰が同じ行為を行っても、同じ結果になる。その原則が守られているかどうかだけを確認する。

 国王陛下の側近が、静かに報告する。「王家としての最終案です。身分剥奪、称号失効、王族名簿からの除籍。保護対象からの除外は即時。猶予措置は付しません」私は頷いた。猶予は、理解と更生を前提に置く制度だ。公式を理解しない者に、前提を置く意味はない。

 「対外文書は?」と私が尋ねると、「国内外ともに同文です。感情的な表現は排し、事実と根拠のみを記載しています」と返ってくる。それで十分だ。説明責任は、事実の列挙で果たされる。説得や弁解は不要であり、むしろ害になる。

 私は文書の末尾に視線を落とした。再教育や保護の可能性を示す注記が残っている。制度上の安全弁として理解はできるが、今回に限っては過剰だ。私は静かに首を横に振った。「削除してください。公式の内側に戻す余地を残す必要はありません」側近は一礼し、修正に入る。

 次に、クラス・クラウン男爵令嬢の処遇案を確認した。直接的な違反はない。署名もない。だが、公の場での位置取りがもたらした影響は否定できない。そこで示されているのは、一定期間の社交制限と、監督下での行動義務。過不足のない配置だ。重すぎれば不均衡を生み、軽すぎれば再発の誘因になる。その中間を選ぶのが、公式の仕事である。

 私は承認の印を付けた。
 裁きは、個人の感情に寄り添わない。だが、影響の範囲には正確に比例する。それが公平というものだ。

 窓の外では、朝の光が王宮の回廊を照らしている。昨夜の舞踏会は、すでに記録の中に移行しつつあった。だが、記録は風化しない。いつでも参照され、同じ判断を再生する。

 王太子だった者が、この裁定をどう受け止めるか。考える必要はない。受け止め方は、制度の関心事ではない。重要なのは、同じ誤りが起きたとき、同じ裁きが迷いなく適用されること。そのための前例を、正確に残すことだ。

 私は最後の文書に署名し、扇子を閉じた。
 公式は、裁きを私情から隔離する。その原則が守られた以上、世界は次の配置へ進める。
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