婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾

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第24話 王家からの謝罪と、帰郷の決意

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 王太子の私室を後にし、長い廊下を歩くアイシスの足取りは静かだった。
 その背中には、一切の迷いがない。

(これで……本当に終わりですわね、殿下)

 胸の奥で小さく息を吐いたとき——

「アイシス様、国王陛下よりお呼びです」

 侍従が深々と頭を下げる。

「お時間をいただけるかと」

「はい。すぐに参ります」

 アイシスは歩みを止めず、まっすぐ謁見室へ向かった。


---

■国王・王妃からの正式謝罪

 扉が開くと、そこには国王レオニードと王妃セレナ。
 二人だけが静かに彼女を待っていた。

「アイシス……来てくれてありがとう」

 王妃の柔らかな声に、アイシスは丁寧に礼をした。

「ご用件を伺いに参りました、陛下」

 国王は深々と頭を下げた。

「まず謝らせてほしい。
 長年、そなたを“王太子の婚約者”として支えにしてきた我々が、
 そなたを守り切れなかった。」

「……陛下」

「殿下の軽率な判断、そしてスティアスの暗躍。
 そなたは完全に被害者だった。
 本当に……申し訳なかった。」

 王妃も静かに頭を下げた。

「あなたが泣く必要など、一度もなかったのに……
 私たちが気づくのが遅かったのです。」

 アイシスは小さく微笑む。

「どうか、頭を上げてくださいませ。
 私が傷ついたのは事実ですが……
 こうして真実が明らかになり、十分に報われましたわ。」

 その気品ある返答に、王と王妃はさらに感銘を受けたようだった。


---

■“今後”に関する問い

 国王は椅子に戻り、真剣な目でアイシスを見つめる。

「……ひとつ伺いたい。
 今後、そなたはどの道を望む?」

「私の……望む道、ですか?」

「うむ。
 王宮での地位を改めて与えることもできる。
 別の役職につけることも、爵位を与えることも可能だ。
 そなたほど有能な人材を手放すのは惜しい。」

 王妃もうなずく。

「アイシス。
 あなたが王宮に留まりたいのであれば、全力で支えます」

 どれほどの重責を担える女性だと思われているのだろう。
 かつて「可愛げがない」と切り捨てられた令嬢が、
 今では国の中心から必要とされている。

 だがアイシスの答えは、すでに決まっていた。


---

■アイシスの選択

「――私は、領地へ戻りたいと存じます。」

 その言葉に、王と王妃は少し驚いたように目を見開いた。

「領地へ?」

「はい。
 あの場所には、私を支え、信じ、歓迎してくださる人々がいます。
 あの地を豊かにすることこそ、今の私の使命だと思うのです。」

 王妃は優しく微笑む。

「……ふふ。本当にあなたらしい選択ですね」

 国王も深く頷く。

「分かった。
 アイシス、そなたの望む道を行くがよい。
 ただし——」

「ただし……?」

「そなたが二度と不当な扱いを受けぬよう、
 王家として正式に“潔白と名誉回復”を布告する。」

「陛下……ありがとうございます」

「さらに、王都から領地への旅路は王家が護衛を付ける。
 どこへ行っても、そなたはこの国の誇りだ。」

 アイシスは胸に熱いものが広がるのを感じた。

(私……ちゃんと前に進めているのね)


---

■帰郷の決意と、王宮との別れ

 王妃がそっとアイシスの手を取った。

「ひとつだけ母としての願いがあります」

「……母として?」

「あなたが幸せでありますように。
 この国よりも、殿下よりも……
 あなた自身の未来を大切にしてね。」

 アイシスは、静かに微笑んだ。

「はい。
 私は、私の人生を選びます。」

 その返答は、王妃の目を潤ませるほど美しかった。


---

■静かに始まる“凱旋”

 王宮を出ると、外にはすでに彼女を迎える護衛隊と馬車が整っていた。

 騎士団長ルーファスが前に進み、胸に手を当てる。

「お嬢様、お戻りの準備は整いました。
 ……お帰りを、皆が待っております。」

 アイシスは深く息を吸い込み、頷いた。

「ええ。帰りましょう。
 私の……大切な場所へ。」

 こうして——
 アイシスの新たな人生が、静かに幕を開けた。


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