婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾

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第25話 凱旋と、領地が見せた“答え”

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第25話 凱旋と、領地が見せた“答え”

 王宮からの正式謝罪を受け、アイシスは護衛隊とともに領地へ戻ってきた。
 王都とは違い、彼女の故郷の空気はすべてを包み込むように温かい。

 城門が見えたとき——
 アイシスは思わず息を呑んだ。

「……これは……」

 門前の広場は、数え切れないほどの領民で埋め尽くされていた。

「お嬢様だ!!」
「お帰りなさいませ、アイシス様!!」
「我らの誇りが戻ってきたぞー!!」

 彼らの歓声が、朝の空に響き渡る。

 花びらが舞い、音楽隊が奏でる祝いの曲が流れ、
 子どもたちが手作りの花冠を抱えて走り寄ってくる。

「お嬢様、これ……!」
「歓迎のお花です!」

 アイシスは目を細め、膝を折って受け取った。

「まあ……素敵ですわ。ありがとう、皆さま」

 その優しい笑顔を見た瞬間、
 群衆はさらに大きな拍手を送った。


---

■領地側の“答え”

 屋敷へ戻ると、家臣団、騎士団、職人たちが一列に並んでいた。

 騎士団長ルーファスが前に出て、胸に手を当てる。

「アイシス様。
 この度の審問、そしてご帰還……心よりお喜び申し上げます。」

「皆さまのおかげです。
 本当に、皆さまが支えてくださらなければ——」

「いいえ」

 ルーファスは優しいが力強い声で遮った。

「助けたのではありません。
 あなたが日頃から我々を照らしてくださったから、
 皆が自然と“守りたい”と思っただけです。」

 家臣も、職人も、農民たちまで頷く。

「お嬢様が領地を良くしてくれた」
「苦しい時、一緒に悩んでくれた」
「だから、恩を返しただけです!」

 アイシスは胸がいっぱいになり、思わず目を伏せた。

(……ああ。
 私は、この場所で生きていけるのだわ)

 そう確信した。


---

■そして、新しい知らせ

 その夜。

 アイシスが自室でお茶を飲んでいると、家令が控えめに扉を叩いた。

「お嬢様、実は……王宮より、もう一通の正式な書状が届いております。」

「まあ……謝罪なら昼間に受けましたけれど?」

「いえ。それとは別件でございます。
 “今後の進路について王家より正式提案” とのことです。」

「……進路?」

 家令は慎重に書状を手渡した。

 開封した瞬間、視界に飛び込んだ一文──。

『王国は、アイシス・ヴェルステッド殿の再起を支援するため、
 新たな公務・爵位案を提示したく存じます』

「……まあ」

 驚きと同時に、胸の奥で静かに何かが広がった。

 ──これは“新しい人生”への扉。

 婚約破棄でもう終わったはずの未来が、
 むしろここから始まるかのように。

 アイシスはそっと微笑んだ。

「……面白くなってきましたわね」


---
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