婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾

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第28話 王家が示した“三つの未来”

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第28話 王家が示した“三つの未来”

 王家からの名誉回復布告が領地に届いて三日後。
 今度は使者が直接、アイシスの元へやってきた。

「アイシス・ヴェルステッド様。
 王家より、今後の進路に関する正式な提案をお持ちしました」

 使者は丁寧に一礼し、三つの封書をテーブルへ並べた。

「三つ……?」

「はい。いずれも、あなたの功績を踏まえた“未来の形”でございます」


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■【第一案】国政参与としての登用

 一つ目の封筒を開く。

『王国中枢に席を設け、改革に携わる役割を担ってほしい』

「……まあ。大層なご提案ですこと」

 横でバルド執事が小さく頷く。

「お嬢様の改革案は王宮でも高く評価されております。
 “わが国の宝”という声もあるとか」

「宝だなんて……
 “不要物”として婚約破棄されたばかりですのに?」

 アイシスが涼しい顔で言うと、使者は気まずそうに目をそらした。

(まあ、悪いのは彼ではありませんけれど)

 アイシスは気持ちを切り替えるように、次の封筒へ手を伸ばした。


---

■【第二案】領地経営の独立権付与

 二つ目の封筒には、こう記されていた。

『ヴェルステッド領を正式に“自治領”として独立させ、
あなたを領主として認めたい』

「……これは、思い切りましたわね」

 町長たちが聞けば、卒倒して喜びそうな内容だった。

「お嬢様は、これまでも実質的に領主同然でしたからな……」

 バルドが感慨深くつぶやく。

 しかしアイシスは眉を寄せた。

「でもこれは……簡単には受け取れませんわ。
 領民たちの負担も変わりますし、軽率に決めるべきではなくてよ」

 現実的判断である。

 使者も納得したように小さく頷いた。

「ご懸念ももっともです」


---

■【第三案】“縁談”の申し出

 三つ目の封書。
 これだけ封蝋が妙に豪華で、妙に……色めいた雰囲気を放っている。

(……いやな予感がしますわ)

 アイシスが封を切ると、さらりとした紙が現れた。

そこに書かれていたのは、まさかの内容だった。


---

■王家正式文書・第3案

『王弟殿下レオニールより、
 “前向きに婚約を検討したい” との申し出がありました。』


---

アイシス「……………………は?」

バルド「…………なんということで」

使者「殿下は以前より、アイシス様のご活躍を高く評価しておりまして……」

アイシス「評価するのと婚約は、全く別問題ですわよね!?」

「た、確かに……」

 使者も苦笑い。

 しかし文書は続く。

『貴女が望まぬのならば、強制はいたしません。
 ただ、殿下は大変本気でございます。』

「いや、“本気”をこんな手紙で伝えられても……!」

 思わず額に手を当てた。

(王太子の次は王弟殿下ですの?
 王家、落ち着きませんこと?)


---

■領民の反応(速い)

 その日の夕方。

 この話はすでに領地中へ広まっていた。

「お嬢様が……王弟殿下に求婚されたってほんとか!?」

「王都、ざまぁ第二弾きたわね……!」

「王家の見る目のあるのは“弟の方”だったか……」

 みな好き放題に盛り上がっている。

 バルドは咳払いしつつ、アイシスに報告した。

「領民の皆さま……とても楽しそうでございます」

「なぜ私の人生が娯楽の一部になっておりますの……?」


---

■アイシスの結論(保留)

 その夜、アイシスは窓辺で紅茶を飲みながらつぶやいた。

「国政参与、自治領主、王弟殿下との縁談……
 どれも軽く決められる未来ではありませんわ」

 月明かりに照らされた横顔は、以前の彼女とは違う。

 婚約破棄で傷つくどころか——
 むしろ、未来が広がっている。

「急ぐ必要はありませんわね。
 私は、私が納得できる道を選びます」

 ティーカップを置くと、そっと微笑んだ。

「……ふふ。
 王家がどれだけ慌てようと、
 私の人生の主導権は、もう私が握っていますわ」


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