転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
9 / 190

09 収納魔法

しおりを挟む
 動かないオークの前で、ルリと2人の冒険者は安堵の表情を浮かべていた。

「いやぁ、助かったよ。ありがとう」

「こちらこそ、皆さん無事でよかったです」

 男性は、20代中盤だろうか、大きくはないががっしりとした体つきで、いい男だ。
 女性の年齢は、20歳になるかならないか。ブロンズの長い髪をポニーテールに結んでいる。


「俺はケルビン、リンドスの街で冒険者をやっている。Cランクだ。
 こっちは妻のアリシャ、同じくCランク」

「お嬢さん小さいのに強いのね、本当に助かったわ」

 2人は夫婦の冒険者らしい。
 しかもCランクであるから本来オークに後れを取ることは無いのだろうが、突然襲われたことで体勢を崩してしまったようだ。

「ルリちゃんって言ったかしら。リンドスでは見たことがないけど旅の途中か何かなの?」

「いえ、旅の途中と言えばそうなんですが、先日田舎から出てきたばかりで、まだ冒険者になったばかりなんです……」

「そうなのね、強くてしっかりしてるから、これからが楽しみね!」

 アリシャが母親のような顔になっている。

 簡単な自己紹介を終え、この3体のオークを解体して持ち帰ることになった。
 硬い皮や食材としての肉を、ギルドで買い取ってくれるらしい。
 そこでルリは、先輩冒険者にお願いをする。

「あの、良かったら解体を教えていただけませんか?」

 そう、ルリのアイテムボックスの中には大量の魔物が仕舞ってある。
 解体や素材の知識があれば、それらを売ることもできるのだ。

「おぉいいぞ。どうせこの3体を解体しなきゃいけねんだ。
 一緒にやってくといい。それに、1体を倒したのはルリちゃんだ。
 当然報酬をもらう権利もあるしな。
 俺が1体やるから、もう1体はアリシャと一緒にやってみなよ!」

 ケルビンはオークに刀を入れながら、丁寧に皮や肉、骨などに切り分けていく。
 私とアリシャも同じように、短剣でオークの解体を始めた。


 オークは200キロもある巨体だ。得られる素材の量も多い。
 解体した素材を細かく切り分けながら、ケルビンは言った。

「オーク3体もあると結構な稼ぎになるんだけどな。
 さすがに全部を街まで持ってはいけないだろう。
 だから、高く売れる部分を切り取って持って帰るんだ。
 まぁ小さい魔物ならばギルドに手数料を払えば解体してくれるからそのまま持って帰ることもあるがな……」

「売れない部分ってあるんですか?」

「オークは内臓以外ほとんど売れるなぁ。
 いらない部分は埋めて帰るんだけど、もったいないだろう。
 でも放置すると違う魔物が寄って来るかもしれないからな。
 魔物を倒して素材を取り、後処理をするまでが冒険者の仕事だ!」

 ケルビンは埋めなければいけない素材部位を悔しそうに見つめながら、脂の乗った肉を袋に詰めている。


(そか、でも私には女神様の恩恵、アイテムボックスがあるものね!)

 ルリは声に出して、「収納」と叫ぶ。
 ケルビンの前から、余った肉や素材がサッと消える。

「「収納魔法???」」

「えへ、売れるんなら全部持って帰った方がいいでしょ!」

 驚く2人に、さらっと言ってのけるルリ。

 解体された2体と解体前の1体を丸ごとアイテムボックスに放り込んで、思いがけずに解体の方法が教われたルリは、笑顔を輝かせた。


「お、おぉ。収納魔法使いか、それは便利だな。
 いいのか、俺たちの分まで持って帰ってもらって……」

「はい、もちろんですよ。困ったときはお互い様です!」



 オーク3体を収納し、3人で街に戻ることにした。
 ケルビン夫妻も、目的である依頼は達成できているようで、すぐにギルドに戻ることになった。

 チロリン
 ギルドのドアを開く。

「お、ケルビン、アリシャ、おかえり~」

 ケルビン夫妻は、リンドスの街を拠点にしたCランクパーティだ。
 冒険者ギルドの中でも、顔が知れている。


 買い取りは、ギルドへ入って左側の窓口で行われる。

 カウンターの窓口では薬草や小型の魔物の買い取りを。
 大きい時は、横の通路から直接奥の解体場に持ち込むらしい。

「ケルビンさん、お疲れ様。今日は買い取りかい?」

 見知った顔なのか、窓口の男性が気軽に声を掛けてくる。

「ああ、ただ今日は大量なんだ。奥まで行っていいかい?」

 通路の奥へ進むと、テニスコートくらいの大きさのある体育館のような場所になっていた。
 大きなテーブルで、何人かの職員が魔物の解体作業を行っている。
 奥は倉庫のようになっており、解体した後に商人へと引き渡す場所のようだ。

「じゃ、この辺に出してくれるかい」

 職員の男性の言われると、目の前の台の上に解体されたオークをアイテムボックスから取り出し並べていく。

 ドン
 ドン
 ドン
 ドドォォォォン

 最後に、1体丸ごとのオークを出し、その重量から地響きのような音がこだました。


「何だ、コラ、収納魔法かよ!!
 嬢ちゃん見ない顔だけど、2人の娘さんか?」

「違うわよ。まだ子供はいないわ!」
 アリシャが顔を赤くしている。

「すみません、私は新米冒険者のルリと言います。森でケルビンさん達と出会いまして、一緒に来ました」

 怒鳴られたせいで思わず謝ってしまった。

「新米? まぁいいか。とりあえず査定するから、窓口に行っててくれ。
 このでかい1体はこっちで解体していんだな?」

「はい、お願いします」

 解体を職員のおじさんにお願いして、ケルビン、アリシャと共に窓口へ戻る。
 待っていると、アリシャが話しかけてくれた。

「ルリちゃんすごいわねぇ。魔法が使えて剣技も出来て、収納魔法まで使えるなんて。
 旅の途中って言ってたけど、いつまでこの街にいるの?」

「旅と言いますか、私、王都の第2学園に入りたいんです。だから、夏までには王都に向かう予定です。
 でも入学の条件がDランクの冒険者なので、まだしばらくはこの街でランクアップに向けて頑張るつもりです」

「第2学園かぁ。あそこは貴族様じゃなくても入れるものね。
 でも、ルリちゃんって登録したばかりってことはFランク?
 実力的には問題ないだろうけど、夏までにDランクになるにはちょっと気合い入れないとダメかなぁ。
 良かったら、私たちにもお手伝いさせてくれない? ケルビンもいいでしょ?」

 私のDランクへのランクアップに、アリシャたちが協力してくれる事になった。

 FランクからEランクへ上がるには規程回数の依頼達成のみでいいが、Dランクに上がる為にはパーティでの依頼経験も必要になる。
 知らない人たち、ましてやチンピラのような冒険者と組むよりもずっと安心だ。

「いいんですか? ありがとうございます。
 お時間あるときにはぜひご一緒させてください!!」


 ケルビン夫婦は、週に3回程度で討伐に出ているそうだ。
 もちろん1日で終わらない依頼もあるため不規則ではあるが、危険の少ない依頼の際には同行させてもらえることになった。

 予定のすり合わせなどを行っていると、解体を終えた職員のおじさんが戻ってきた。

「オーク3体。1体に付き金貨8枚、合計で24枚だ。全部買い取りでいいかい?
 解体の手数料は、嬢ちゃん今日が初なんだろ、まけとくよ」

 3人で頷き合い、全ての買い取りとして了承した。
 8枚ずつの金貨を受け取る。

「今日はありがとうございました。また明日からもよろしくお願いします!」
 ケルビンとアリシャにお礼を言い、ギルドから帰っていく2人を見送る。


 私は、もう一つ達成の報告をしなければならない。
 解体のおじさんを振り返り、声を掛けた。

「すみません、薬草の採取もしてきたので、納品したいのですが……」

「お、わかった」
 10束の薬草と、黄色い花を渡す。

「確かに受け取った。受付で完了の報告をしてきな。報酬もそこで渡すからな」

 言われた私は、受付に向かう。変わらず元気なダーニャの列に並んだ。

「ダーニャさん、採取依頼、完了してきました!」

「うん、お疲れさま。
 なんかオークも倒してきたんだって? 大変だったねぇ。
 報酬はこれよ。まず、薬草が10束で銅貨30枚、つまり銀貨3枚ね。
 黄色いお花、エナモという花なんだけど、これはちょっと珍しいので1本銀貨1枚。
 常時買い取りだから咲いてたら摘んできてね。
 さ、合計銀貨6枚よ」


 私は、銀貨を受け取る。Eランクに上がる条件は、1週間以内での3つの依頼達成だ。

 これであと一つとなる。
 明日の依頼達成を心に決め、ルリは宿に戻った。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...