転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

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67 開発会議

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 温泉街での素敵な時間。
 1日のんびりと過ごし、宿に戻る。

 明日には王都に向けて発ってしまうので、ここで過ごす最後の夜だ。
 それは、夏休みの終わり、旅の終わりも示している。
 温泉と食事を、全力で楽しむ事にした。


 夕食で振舞われたのは、心温まる料理の数々。
 海と山の味覚が、とても美味しい。

 ルリは、お礼にと、手持ちの材料で、アメイズ・バーガーやパスタを作ってあげる。
 宣伝もかねて……。

 短い時間ではあったが、ゆったりとした癒しの時間を過ごせたルリ達。
 名残惜しい気持ちを抑え、王都への帰路につくのであった。



 ベラの両親、宿の皆さんに感謝を伝え、王都への馬車旅が始まる。
 順調に進めば、12日間の旅だ。
 そして、到着して1週間後には、学園に戻らなければならない。
 疲れも出たのか、帰りの道中、少女たちは大人しく馬車に揺られているのであった。


(楽しい旅行だったなぁ。それにしても……旅先の滞在時間よりも移動時間の方が長いのよねぇ……)

「ねぇラミア、セイレン? 空を飛べる大きな魔物の知り合いはいない?」

「空を飛ぶ魔物か? 竜種に知り合いはおらんのう」

 ふと聞いてみるが、そう都合のいいように仲間がいる訳ではなさそうだ。
 この世界で、魔物使い、テイマーと言われるチカラを持った人とは出会ったことがない。存在するのかどうかは不明だが、空を飛べる魔物が仲間にいたら……などと、楽に移動する術を考えていた。

「ルリ、どうしたの?」
 ミリアが不思議そうに聞いてくる。

「ううん、いいの。空を飛べるような仲間がいたら、移動が楽になるなぁと思ってね」

「私は見た事ないけど、本の中には竜に乗って戦う戦士がいるから、やりようはあるのかも知れないわよ」

 セイラが言うには、竜騎士という存在は、話の中でなら存在しているらしい。
 飛竜ワイバーンならば少ないながらも目撃されてはいるので、調教が出来れば、乗れる可能性はある。


 その後も、もっと早く移動する手段が無いかと、みんなで話しながら過ごした。
『蛇女』の姿に戻ったラミアであれば全員が乗れる大きさではあるが……、人が乗る様な形状はしていない。
 数人ならば乗ってもいいぞ、とは言ってくれたが、あまり実用的とは言えなかった。


 旅の締めくくりは、王都でのパレードだ。
 出発時と同じ配置につき、大通りを進む。

 変わらない歓声。変わりない街並み。
 1ヶ月ぶりの王都の活気。帰ってきたことを実感するのだった。

 王宮に着くと、一息つく。
「楽しかったわね」
「「「「「うん」」」」」

「グレイシー、ベラ、ありがとう!」
「……。わたくしも、楽しかったですわ。またご一緒したいですわ!」

 ミリアが代表して、マリーナル領の2人にお礼をする。
 グレイシーは本気で……照れている。


 土産話もあるが、まずは身体を休める必要がある。
 その場は解散となり、それぞれの屋敷に帰る事になった。

「家に帰るまでが旅行ですよ!」
「「「「はい!」」」」


 学園での再会を誓い、それぞれ帰路につく。
 アメイズ領の王都屋敷には、ルリの他、ラミアとセイレンも一緒に向かった。
 メアリーも、後ほど馬車で送る為に、いったんルリの屋敷に移動する。

「アルナ、お願いがあるの。セイレンの為に、お屋敷にプールみたいなの作ってほしいわ」

「分かりました。まずはお住まいになる部屋を整えまして、明日にでも職人に相談してみます。それと、衣服なども明日イルナに買いに行かせますね」

 既にラミアの例があるし、セイレンが『人魚』である事は既に知っている。
 今更驚く理由もなく、慣れた対応で新しい居候を迎えるメイド三姉妹だった。


 屋敷は、臨時でアメイズ領から来てもらった使用人と護衛に任せてある。
 特に問題があった訳でもなさそうで、綺麗に掃除された状態を保っていた。

「リフィーナ様、お帰りなさいませ。留守中、トラブルなどはございません。
 お手紙類はまとめてありますので、後でご確認ください」

 貴族家ともなると、手紙は多い。令嬢としてもお誘いばかりでうんざりするのだが、時々無視できない内容の物もある為、一通り目を通す必要はあった。


「第2学園の学園長から、新学期の3日前には寮に戻るように言伝がありました。
 詳しくはお手紙をご覧いただきたいそうです」

「ありがとう。何かあるのかしら?」

 メアリーと一緒に手紙を見る。
 そこには、新入生歓迎の準備の為に協力するように書かれていた。

 夏休み後の新学期という事は、ルリ達は2年生に進級する。
 つまり、新1年生が入学してくるという事になる。その手伝いとして、呼ばれていた。
 また、同室の4人組が、入学式に上級生の代表として出席する事も書いてある。

「アルナ、3日前には学園に戻らなければいけないみたい。
 ミリアとセイラとも、スケジュール相談しておいてくれる?
 メアリーも、ここから一緒に行く事でいいかな?」


 ミリアとセイラは王宮の馬車で学園に向かうはずである。
 メアリーは事前にルリの屋敷に集合し、アメイズ領の馬車で学園に向かう。

 歩いてもそう遠い距離ではないのだが、貴族家の令嬢が従者も連れずに歩いて行くのは、体裁が悪いらしい。
 メアリーも、飾らないアメイズ領の馬車であれば気恥ずかしさも無いので、一緒に行動する事が多い。


 屋敷で休憩した後、メアリーは馬車で送られ、家に帰って行った。
 3日後、また屋敷に集合だ。ちょっと行ってくるね、と言うメアリーは、ルリの屋敷も家のように、感じていた。

 簡単な食事と入浴だけ済ませ、その日は早く床に就く。
 さすがに疲れていたようで、全員すぐに眠りにつくのであった。


 翌朝。

「ただいま~、おはようございます!」

 朝の支度が終わり朝食を済ませた頃に、聞き覚えのある声がする。

「あれ? メアリー、3日後に来るんじゃなかったの? あ、メルヴィンさんも。おはようございます」

 貴族家のお屋敷。本来ならばアポなしの訪問など門前払いなのだが、メルヴィン商会の面々は別だ。家族のような扱いになっている。
 応接室には、メアリーとメルヴィン、そして商会の主要メンバーが揃っていた。

「ルリさん、この度はいろいろとありがとうございました。
 まずはメアリーが楽しく旅行から帰れた事、お礼申し上げます。
 それに、数々の商売ネタを持ち帰ってくださったようで」

「こちらこそ。メアリーさんも大活躍だったんですよ。私からもお礼させてください。本当に助かりました。
 あ、お腹空いてます? お土産の魚介料理、少し食べていきませんか?」

 メイド三姉妹の料理担当、ウルナに、アイテムボックスから新鮮なままの食材を渡して、刺身などを準備してもらい、商会のメンバーに振舞う。


「おお、これがマリーナル領の食材ですか。王都には無い美味しさですなぁ」

 舌鼓を打つメルヴィン達。新鮮な魚介や、魚醤を使った料理に驚く。
 また、珍しい野菜やフルーツにも、感動している。
 なぜ新鮮なのかとの疑問は、言わないのがお約束だ。

「この魚醤を、王都でも使えるようにしたいのです!
 あと、似たような味の調味料があれば、その噂も調べてください!」

 ルリが最も広めたいのは、魚醤だ。料理の幅が格段に変わる。
 それに、この味が一般的になる事で、大豆から作られた醤油にたどり着ける可能性もある。

 マリーナル領との商いは距離という壁があるので難航する事は間違いないらしい。
 それでも、商人として全力を尽くす事を、約束してくれた。


「それでルリさん。本日お伺いしたのは、もう一つ理由がございまして……」

 メルヴィンの合図で、テーブルに並べたのは、以前提案した日用品と同じような、庶民の普段使いに良さそうな新商品。
 安く作れて大量生産が可能な、アイデアグッズの数々だ。

「歯ブラシやたわしを販売して以来、街の声をよく聞くようにしたのですよ。
 そうしたら、あれやこれやとアイデアがたくさん集まるようになりまして。それで、端から試作していたら、いい商品が出来たんです」

 ひとつ便利なモノを手にすると、人はもっと欲が出る。
 もっとこうだったらいいのに……と言う声を集めたら、商品開発が飛躍的に進んだらしい。

 当然のような考え方なのだが、ちょっとした発想の転換だった。
 頼まれたものを作るのが職人。作られたものを右から左に流すのが商人。

 そんな世界の中で、ルリは知らず知らずのうちに、マーケティング的な思考を、広めてしまっているのであった。


 使い道のわかる物……日本で見た事のありそうな物は、より良い形を知っているのでアドバイスする。
 何をするモノかわからない物体もあったが、この世界ならではの使い方。面白いアイデアに、一喜一憂する。

「売る時なのですが、いきなり大量に作らずに、10人とか20人とかに使ってもらって感想を聞くといいと思いますよ。お店に、サンプルとして使えるように展示するのもいいと思います」

 化粧品のモニターやサンプル品、店舗の展示スペースを思い出しながら説明する。
 マーケティング的な知識などないルリではあるが、便利な世界の為なら自重しない。

「消費者の声と口コミが大事なんです。便利な商品を試すことが出来たら、家族や友人に話すじゃないですか。消費者の声を取り入れて開発された商品、噂の商品と言われたら、買いたくなりませんか?」

 メルヴィン達に力説し、新商品の開発会議は終了した。
 半信半疑の部分もある様ではあるが、メルン亭やアメイズ・バーガーなど新しい店舗のアイデアで成功を実績があるルリの言葉である。
 しっかりと受け止め、屋敷を後にするメルヴィン達であった。
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