75 / 190
75 面倒事
しおりを挟むチンピラ達のアジトで大暴れしようと、魔力全開で乗り込んだ『ノブレス・エンジェルズ』の4人。
あっさりと降参されてしまい、ミリアは呆れていた……。
「はぁ……。情けないわねぇ。降参ね、分かったわよ……。
まだ奥にもいるでしょ、全員出てきて、地面にうつぶせになりなさい」
ミリアの声で、奥に潜んでいたチンピラ達が表に出てくる。
電撃で動けない者を含め、チンピラの一味は全部で11人だ。
セイラが探知した人数に合致する。
驚いた事に、奥から出て来た者には女性も3人含まれていた。
「ええと、あなた方は盗賊団ですの? ご家族もいるようね。見た所、森で逃亡生活をしている様に見えるのですが」
「ひぃぃぃぃ、盗賊ではない。信じてくれ。事件に巻き込まれて、逃げながら暮らしているだけだ……」
「事件に巻き込まれてねぇ……。首謀者ではありませんの? 他にも仲間がいるんでしょ。大人しく吐きなさい!」
「違う! 違うんだ。確かに、盗賊に協力したので巻き込まれたというのは言い過ぎだが、俺たちは悪くないだ!」
「いや、悪くないんなら逃げてないでしょ?」
「違う! いや確かにそうなんだが……。
盗賊に協力した事もあったが、その盗賊団も昨年壊滅したんだ……。
だから逃げて、森の中で暮らしていたんだよ。
でもどうにも暮らせず、近くの集落に、脅しをかけただけなんだ……」
「……」
言い訳を精一杯並べるチンピラ達。
いまいち、話の筋が見えない。
ミリアが言葉に詰まると、今後はセイラが話し始めた。
「一年前に壊滅した盗賊団て、『常夜の闇』だったかしら?
その一味だったの?」
「一味ではない。盗賊団の下っ端に脅され、情報を流したりしただけだ。盗賊団の一味として捕まるか、そうでなくても盗賊団に追われる可能性があったから、俺たちは逃げたんだよ」
「……。逃亡して、食べるのに困ったから集落を襲ったと。
まぁいいわ。本当か嘘か、申し開きは詰め所で行ってちょうだい」
氷槍と火の鳥が狙いを定める中、チンピラ達は涙目で弁明している。
その必死さから察するに、盗賊団から逃げていると考えるのが妥当であろう。
実際、人相も服装も、そう悪い人達には見えない風貌ではある。
『常夜の闇』は、ルリが壊滅させた盗賊団だ。
騎士団の捜査により、あの場……盗賊団のアジトにいた仲間以外でも、街に潜伏していた協力者などは一網打尽に捕まえられた。
とは言え、中には、逃げのびた者もいるだろうし、今でも森の中や街中に潜伏する者だっているだろう。
情報の漏洩を恐れ、組織内で粛清が行われていてもおかしくはない。
必死に言い訳をするチンピラ達。
ミリアもセイラも、同じ回答しか得られない事に、尋問にも飽きてきたようだ。
いずれにせよ、チンピラ達を放置も出来ないので、全員を縄で縛る。
とりあえず、集落、そして街まで連れて行く事にした。
先に倒した3人と合わせて14人。なかなか面倒だ。
「盗賊団の壊滅が原因って事は、あなたが元々の原因って事ね。何? これを予想して世直し旅とか言ってたの?」
ジト目でルリを見てくるミリアとセイラ。
「いや、まさかこんな事になるとは思わなかったのだけど……」
(壊滅させた盗賊の残党かぁ……。元凶と言われると不本意だけど、他にも同じような事が起こってる可能性は高いわねぇ)
早めに衛兵に引き渡し、他の仲間の行方など聞き出してもらう必要がある。
『常夜の闇』の協力者を捕まえたとなれば、貴重な情報源だ。
それに、旅の途中である。
チンピラ達を連行したまま移動を続けるのは、面倒事以外の何物でもない。
早く衛兵の元に、連れて行く必要があった。
4人集まって、この後の動きについて話し合いをした。
「ねぇどうする? アメイズ領都までまだ1週間以上かかるわ。ぞろぞろと連れ歩くのは面倒よ」
「うん、いっそ殺しちゃう? 誘拐の現行犯だし戦闘もあったのだから、殺しても問題は無いはずだけど」
「うん、でもこの人たち、そこまで悪人には見えないのだけど……」
「ルリは甘すぎるのよ……。善人の皮をかぶった悪人何て、世の中いくらでもいるんですからね」
「まぁそうだけど……。そう言えばセイラ、隠密の護衛って、どこかで付いて来てるんじゃないの? 護衛の兵士さん達に預けられない?」
「そのはずなのですけど……。西の森に入る時までは後方に反応があったのだけど今は感じないのよね……」
「ついて来てないんだ!? じゃあ、一度王都まで戻る? まだ王都の方が近いでしょ?」
「それでも、街道沿いを動けば何日かかかるわ。集落の人も王都が遠いって言ってたでしょ」
「「「う~ん……」」」
とりあえず、救出した母子を集落まで連れて行くため、移動を開始する。
ぞろぞろとつながれた14人は、常に氷槍で狙われている為、大人しくしている。
全員を生きたまま連行する必要はないのだ。
「いつでも殺せるのよ」というミリアの言葉に恐怖し、文句も言わずに着いて来た。
集落に戻った頃には夕方になっていた。
長老に事情を説明し、母子を引き渡す。
当然、一番喜んだのはチンピラに殴りかかった父親だ。
家族の感動の再開に、皆で涙を流した。
集落の皆さんとの話を終えると、ルリ達は出発の準備をする。
チンピラ達をどうやって衛兵に引き渡すのか問題は未解決なのだが、動くしかない。
そこに、メイド三姉妹のアルナが、声を掛けてきた。
「リフィーナ様、馬を1頭お借りできますか? アメイズ領まで先行して、衛兵を連れて戻ってまいります」
「アルナ、その手があるわね。ありがとう。だったら私も行くわ! 子爵家の私がいれば、話が早いんじゃない?」
「ありがたいのですが……、リフィーナ様、騎乗が出来ませんでしょ?」
残念ながら、馬に乗れないルリがついて行っても足手まといだ。
セイラが騎乗して王都に向かうという方法もあるのだが、一人で行かせる訳にもいかない。
それに、食事などを全てルリが持っている為、ルリが本体から離れることは出来ず、アルナに任せる事になった。
集落で待つという手もある。
しかし、縄で縛ってあるとは言え、集落を苦しめたチンピラ達と一緒に過ごすのは、住民には酷だ。
集落を離れる為に、ルリ達はゆっくりと街道に向けて歩き出したのだった。
(誘拐事件を防げたのは良かったのだけどねぇ……。
何でこんな面倒事を抱え込む事になるのかしら……)
世直し旅として意気揚々とチンピラ退治に向かったはずであるが、捕まえた後にどうするかまでは考えてなかった。
ドラマでは描かれない、部隊の裏側にある面倒事。
その事実を突きつけられ、がっくりと肩を落とす、ルリであった。
----
その頃、王宮、近衛騎士団の詰め所では騒ぎが起きていた。
セイラの父、コンウェル公爵の元に、騎士が駆け寄る。
「申し訳ございません、王女様方ご一行を……見失いました」
初日、西の森で狩りに出た所までは見ていたのだが、夜になっても戻らない。
慌てて報告に戻った次第だ。
「狩りに出た時もついて行ったのだろう? なぜ見失うのだ?」
「あの、それが、あまり動きが早く、ついて行けませんで……」
身体強化を纏った状態で、魔物に足止めされる事もなく突き進むルリ達。
森の中だと言っても、進行速度は平地と変わらない、いや、駆け足でも追いつけるどうかのスピードであった。
収納魔法など使えず、重装備になる兵士には、ついて行く事は困難だったのだ。
「……あぁもういい。言い訳は聞きたくない。
とにかく、アメイズ領に向かっているのだろう、街道から進んで追いつけ。最悪、アメイズの領都で待機だ、いいな、行け!」
「ははっ」
「あー、それと、一小隊を見繕って、西の森の探索に行かせろ。
足跡ぐらいは残っているだろう。とにかく、一刻も早く探すんだ。
あぁ、国王になんと報告したらよいものか……」
血管を浮かべて怒鳴り散らすコンウェル公爵。
旅に出てまだ2日でトラブル発生という現実に、頭を抱え込むのであった。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる