転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
146 / 190

146 勅命

しおりを挟む
 王宮から屋敷に戻ったルリは、早々にベッドに潜ると今日の出来事を思い出していた。

 戦争における論功を受け、同時に没収されたアメイズ子爵家。
 しかも、王家の管理下に入り、第2王子がアメイズ領を見る事になる。

(傘下の貴族が王族に切り掛かったのですからね。最悪、領主の座から追われるとも言われてたし、温情ある処分だったのよね。それに……)

 ふと思う……。

(結果としては王家を巻き込んでアメイズ領の改革が進展するし、ミリア達ともずっと一緒にいられるし、オールオッケー、問題なしじゃない?)

 大勢の貴族の前で処罰を受けたのだから、貴族としては恥である。
 ただ、そんな大人の事情……体裁など気にしないルリにとっては、やりたい方向に事態が進んだ、いい結果としか思えてならなかった。




「リフィーナ様、朝ですよ」
「アルナ、おはよう……」

 考え込んでいたら夜更かししてしまったルリ。
 メイドのアルナに起こされ、朝の支度を行う。……と言っても、もう昼に近い。

「リフィーナ様ぁ、大変です! 王宮から使者が来ました。今すぐ登城するようにと!!」

 遅い朝食を取っていると、イルナが飛んでくる。
 昨日の今日での王宮からの呼び出し。
 何かあったと、思わずを得ない……。
 直ぐに着替えて、王宮へと、馬車を走らせる。



「あれ? メアリーも呼ばれたの?」
「そうなの。ルリもなのね? 心配して焦っちゃって……」

 王宮の前で、少し汗ばんだメアリーと合流する。
 突然の呼び出しで、驚き飛び出して来たらしい。


 王宮の部屋に通されると、ミリアとセイラも待っていた。
 どうやら、『ノブレス・エンジェルズ』としての呼び出しだった。
 子爵家の話では無さそうで、少し安堵するルリ。

「ミリア、セイラ、何の話か知ってる?」
「まだ分からないわ。全員揃ったら伝えるからって……」



「お揃いですね。では、応接室へどうぞ」
 案内されて通された部屋には、国王と側近、そして、冒険者ギルドと商業ギルドの両ギルドマスターが座っていた。
 ルリ達も、大きなテーブルを囲んで席につく。

「早速だが、本題に入ろう。今朝、王都の冒険者ギルドに、ある国からの書状が届いた。
 その件で、皆に集まってもらったのだ」

 国王が口火を切る。
 今朝方、冒険者ギルドのギルドマスター、ウリム宛に書状が届き、慌てて国王に相談したらしい。

「それで、内容は……?」

「ミリアーヌ、そう急かすでない。
 折りしも昨日、そなたらに世界を巡って成長するように伝えた所だが……。世界を巡り経験を積みたいという心に偽りはないか?」

「「「「はい」」」」
「世界を、知らない世界を、見てみたいですわ!! わたくし達4人とも、同じ想いですの」


「ならば、勅命である。リフィーナ、いや、冒険者ルリ。さらに、冒険者パーティ『ノブレス・エンジェルズ』に命ずる。
 これより、魔導王国イルームへ向かえ!!」

 世界を巡りたいと宣誓したミリアーヌ、そしてルリ達。
 それに対する国王の回答は、魔導王国イルームへ向かうという勅命だった。

 クローム王国の東側に隣接する、魔導王国イルーム。
 その名の通り魔法の技術に長け、クローム王国で日常的に使われている魔道具も、そのほとんどが魔導王国イルーム製らしい。

「お父様!! それは本当ですか? わたくし達が、魔導王国へ向かうという事ですか!?」

 真っ先に反応したのは、ミリアだった。
 魔法に関する知識が豊富に得られそうな魔導王国。ミリアがずっと行きたがっていた国だ。
 その点では、ルリにしても同感である。

 尤も、ルリが本気で行きたいと考えているのは、米の産地、農業国ザバスではある……。


「遊びに行くのではないわ! クローム王国の名代も兼ねての訪問だ。しっかりと準備せい!!」

 一瞬、また旅行に行けると喜んだミリア達だが、名代と聞いて緊張する。
 そもそも、まだ何をしに行くのかすら、聞いていない……。


「書状、正確には召喚状となるが、こう書かれておる……」

 ----冒険者ルリなる者、魔導技術に長けた者と聞く。ぜひ教鞭を賜りたく、お招き申し上げたく……


 国王が書状を読み上げる。それは、技術者としての召喚状。魔導王国にて職人たちに技術を講義してほしいというものだった。

(魔導王国に興味はあるけど、私、いつの間に技術者になった?)

「私、技術者では無いのですが……」

 慌てて否定するルリ。
 思い当たる事はたくさんある。あり過ぎる……。
 だからと言って、本物の職人に教えられるようなものではない……。
 あくまで、完成形を知っているだけで、それの作り方など分からないのだから……。



「以前お話しいただいた、蒸気機関か鉄道の件かが伝わったのかと思われます……。知識も技術の一つです。同じ話をしていただければ大丈夫かと……」

 口を開いたのは商業ギルドのギルドマスターだ。
 王都の西の森の探索で鉱石らしき物を見つけた際に、それを運ぶにはどうしたらいいかと、蒸気で動力を作る話や、鉄道を引いて物流網を作る話などをした。

 それを聞いた技術者たちが、実現の為に知恵を借りようと、魔導王国に向かったらしい。
 タイミング的にも、その件が今回の事態につながっているはずだと説明される。


「しかし、名代とはどういう事ですか? 今の話なら、職人たちに会いに行くのが用件に見えますが……」

 ミリアが疑問に思う通り、国王の名代として動くような案件には見えない。
 むしろ、冒険者のルリ宛に話が来ており、冒険者として向かう方が正解に見える。

 何より、国家間で人を呼びたいという話であれば、冒険者ギルド宛ではなく、王宮宛に直接書状が届くであろう。


「ここを見てみろ。この署名……」

 国王の指差す署名欄には、シェラウドという名前が記載されている。
 肩書が書かれていないので、どのような人物かは一見分からないのであるが……。

「問題は差出人の署名だよ。何度かお会いしたが、これは、魔導王国の重鎮の名だ。裏に、国王が絡んでいると考えて間違いない」

「イルーム国王に謁見する可能性があるという事でしょうか?」

「ああ、ほぼ確実にな。それだけならいいのだが……」

「他にも問題が?」

「懸念で終わればいいが、取り込まれる可能性がある……」

 レドワルド国王の懸念。それは、ルリが魔導王国に軟禁される事。
 冒険者であれば他国に移る事は珍しくも何ともなく、また、そこで囚われたとしても、他国が口を出せる事では無い。

 しかし、王家の名代と共に行動するのであれば、そうそう手を出せなくなる。
 クローム王国としての正式訪問の形をとる事で、ルリの安全を確保しようというのが、レドワルド国王の狙いらしい。

 もし何かがあっても切り抜けられそうなルリ達ではあるが、他国ではくれぐれも暴れるなと釘を刺された。


「分かりましたわ。わたくしが、クローム王国の代表として魔導王国に向かいます。
 そこに冒険者ルリが同行するという形を取ればいいのですね?」

「ああ。頼んだぞ。勅命、全うしてこい」


 役目を理解したミリアが、父である国王に告げる。
 しかし、静観していたセイラが、口を挟んだ。

「あら、国王様。そういう事なら、もう一つ、やっていただくことがありますわ」

「国王様、名代のミリアは勅命かも知れませんが、『ノブレス・エンジェルズ』は冒険者ですの」

「セイラめ、言いよるな。ではわかった。指名依頼だ。『ノブレス・エンジェルズ』、魔導王国に赴き、召喚に応じた後、無事に戻ってこい」

「承りましたわ!!」


 しっかりちゃっかり。冒険者としての報酬を請求するセイラであった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...