転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
157 / 190

157 非常識

しおりを挟む
 早朝、魔導王国イルームの王都、宿の前。
 8人の選ばれた騎士が、整列して主の到着を待っている。

 兵士たちは、昨夜、大騒ぎだったらしい。
 急きょ決まった『ノブレス・エンジェルズ』の魔物狩り決行。
 野営の可能性もあるとの事で、近衛騎士団としては、誰が同行するかで揉めた。

 誰もが腕に自信あり。それに、噂に聞く少女たちの戦いぶりも見てみたい。
 最大8名と言われた護衛枠に、我こそはと名乗りを上げる。

「セイラ様、申し訳ございません。同行希望を譲らない者が多すぎまして……」
「張り切らなくてもいいですのに……。では……」

 セイラとしては別に誰でもよかった。戦う事はないだろうし、仕事は野営の警戒に付き合ってもらう程度だ。立場上、兵を連れて行かないのはまずいと考えて、兵を連れて行くだけ……。
 本音を伝えるのは気が引け、若手を中心に人選する。もちろん、連携が崩れないように配慮も行って。

 結果、セイラ直々の指名を受けた兵士たちは、朝早くから、意気揚々と『ノブレス・エンジェルズ』の到着を待つ事になったのだ。



「では、参りますわ。目的は、魔石の調査です。
 狩場には、未知の魔物がいるかもしれませんので、慎重に、かつ楽しんで来ましょう!!」
「「「「「おー!!」」」」」

 準備が整い表に出ると、ミリアの掛け声で出発。
 森に入れば邪魔になるので、馬車は使用せず、徒歩での出発だ。
 もちろん、動きやすいように、服装は冒険者の衣装にしている。


 1時間ほど北東に向けて進むと、森が見えてくる。
 この先に、魔物の生息域があるらしい。

「他にも冒険者が来てますわね、何組もいそうですわ」
「魔導王国は冒険者が多いみたいよ。ギルドも賑わってたわ」

 セイラの広域探知が、人の姿をとらえたらしい。
 全員、魔石を求めてきているのであろう。この国の冒険者は、朝野菜を収穫するかのように、職業として魔石を集めに魔物狩りに出るのが日課となっている。


「周囲に魔物の姿は無いわ。すでに狩られたか、あるいはもっと奥が生息域なのか」
「では、奥まで進みましょう。他の冒険者とかち合わないように注意ね」

 魔物の横取りはご法度だ。時には協力して戦う事もあるが、冒険者パーティはそれぞれの距離を保ちながら狩りをするのが、暗黙の了解となっている。

 さらに1時間ほど奥へと進む。
 魔物の姿は見えるようになってきたが、他のパーティが戦っているようなのでスルーして進んだ。


「人が多いわね。いっそ、山まで向かった方がいいのかしら?」
「そうね……。だったら、この辺でお茶にしましょうよ」

 2時間近く歩いて、少し疲れも見える。……兵士たちが。
 周囲の安全を確認すると、テーブルを並べて、休憩をとる事にした。

 クローム王国からの馬車での移動中に1ヶ月近くトレーニングし、体力が底上げされたうえに、武器を収納して軽装のルリ達と違い、全身フル装備の兵士は、疲れるのである。


「兵士さんもゆっくりなさって。警戒しなくても、魔物が近づけばわかるわ」
「セイラ様、ではお言葉に甘えて」

 近衛騎士団は、そのほとんどが貴族の出身だ。
 爵位は様々だが、文武に長け、王家に忠誠を誓う家柄で育ったものが修練を積み、初めて近衛の地位を得る。
 当然、お茶の心得もある。

 森の真ん中に出来上がる優雅な空間。
 偶々通りかかった冒険者たちが、不思議そうな……白い目で見ていくのは、当然であろう。



「他の冒険者の実力も見たいわね」
「毎日狩りをしてるとしたら、かなり強いのかしら?」
「そうそう、ギルドでは魔術師っぽい人も多かったの。魔法使える人が多いのかも!」

 クローム王国では、近接戦闘を得意とする冒険者が多かった。正確には、魔法をまともに使える冒険者は、ほとんどいなかった。

 ルリとメアリーが見た冒険者ギルドの様子では、魔術師らしき服装の冒険者が多く、それなりに魔法を使える者が多いだろうと想像できる。


 しばし休憩し、さらに奥へと進むと、少し上り坂になっているのを感じる。
 山が近づいて来ているという事だろう。

「前方200メートル、戦闘中みたい。行ってみましょう!」
「わかった。邪魔しないようにね」

 休憩からさらに2時間ほど歩いたところ、やっと狩場についたようだ。
 他の冒険者の様子も、今までとは違い、戦闘モードになっていることが分かる。


「見てみて! 魔法で戦ってるわよ!」
「ホントだ。しかも、かなり強力ね!」

 戦闘中のパーティを遠巻きに見ると、火や水の魔法で攻撃しているのが見えた。
 威力もありそうで、オークが火だるまになっている。

(さすがに、呪文は詠唱するのか。でも、あんな威力の魔法、ミリア以外では初めて見たわ……)

 今のミリアと比べるのは可哀想だが、出会った頃のミリアに近い、強力な魔法。
 戦闘で決め手になり得る威力の魔法を他人が使っているのを、ルリは初めて見た。



「おいおい、こないだのお嬢様かい? こんなに奥まで来たら危ないじゃないか」

 戦闘を終え、ルリ達に気付いた冒険者たちが近づいてくる。
 ルリは覚えていないが、先日ギルドに居たパーティらしい。

「先日はお騒がせしました。全然魔物がいなくて、奥まで来てしまいましたの」

「手前はほとんど狩りつくされたからなぁ。でもこの先は魔物も多い。帰った方がいいぞ」

 元々はもっと手前まで魔物もいたらしいが、毎日冒険者が押し寄せれば、魔物もさすがに減るであろう。

「でもCランクでしょ、この辺だったら大丈夫なんじゃない?」
「そうだな。護衛の兵士さんもいるみたいだし……」

『兵士と従者を連れて冒険者ごっこかよ……』
『魔術師3人か? 誰も武器持ってないとか死ぬ気か?』
『こら、聞こえるでしょ……』

 奥でひそひそと話している声も聞こえる。
 言われてみればその通り。どうみても未成年の魔術師らしき少女が3人とメイド姿が3人。
 さらに、兵士が8人というパーティは、異様だ。

 しかも、戦闘中ではないので武器は収納中。ミリアが杖を持っているだけだ。
 冒険者ごっこと思われても納得できる。


「ご忠告ありがとうございます。もう少し進んで、無理なら帰らせていただきますわ。
 それに、この先なら魔物がいるのですわね。情報、感謝します!」

 少しイラついたのだろうか。ミリアが返事すると、先に進もうとする『ノブレス・エンジェルズ』。いずれにしても、ここで引く訳にいかない。

「待って、北に500メートル、オーク10。他に冒険者の姿なし、こっちに向かってるわ」

「了解! 戦闘態勢!! 行くわよ!!」
「「「はい!」」」

 セイラの探知が魔物を捉えた。
 それぞれ、収納していた武具を取り出す。

「出でよ~大盾~」
「メアリー、行くよ~」

 背丈ほどもある大盾を目の前に出すと軽々と持ち上げるセイラ。
 ルリも、メアリーの弓と自分用の双剣を取り出す。

 今では、アイテムボックスの使い方にも慣れ、直接メアリーの手元に出現させる事が出来るようになっている。傍から見れば、メアリーが自分で収納から取り出したように見える。


『おい待て、何で魔物いるのがわかる!?』
『それにあの盾、どっから出てきた? しかも細腕で軽々と……?』
「弓と剣もだぞ!! このパーティ、全員収納使いか???」
『『『『『ありえねーだろ』』』』』

 目を丸くする冒険者たちを後目に、走り出す『ノブレス・エンジェルズ』の4人。
 アルナとイルナ、兵士も慌てて続く。


「距離100メートル、もうすぐ視認できますわ」

火の鳥フェニックス、行きます!」
氷槍アイスランス、待機モード!」

 まだ距離があるが、メアリーの火の鳥フェニックスが舞い上がり、狙いを定める。
 ルリも、氷槍アイスランスを空中に並べて待機させる。

「戦闘開始よ! 目的は魔石、殲滅するわよ!」
「「「おー!!!」」」

 魔石は体内にあり、そう壊れるものではないので、思いっきり魔法を使っても大丈夫だ。
 森の中なので火事だけ注意すればいい。ミリアが嬉しそうだ。

 前衛として戦闘メイドのセイラ、アルナとイルナが並び、中衛にルリ。
 ミリアとメアリーが後衛で、兵士もそこに並んでいる。


「行くわよ、風刃ウィンドカッター!!」
氷槍アイスランス、発射!!」
火の鳥フェニックス、急降下!!」

「突撃~!! うりゃぁぁぁぁ」

 一斉に放たれる魔法攻撃。狙いは、胸のあたり、魔石のある場所だ。
 さらに、メイド姿の3人が止めを刺そうと突撃する。

 ビシュン
 バシン
 ズドーン

 戦闘は一瞬。真っ二つになった10体のオークが残るだけだった。

『何なんだよ、あのパーティ』
『ま……魔法が浮いてる?』
『詠唱……してなかったよな……』
『メイドが前衛で兵士が後衛とか……どうなってるの?』

 追いついた冒険者たちが驚いている。
 ルリ達の戦闘風景は、魔導王国においても、非常識なようだ。




「強さは変わらないわね。魔石はある?」
「4センチくらいの魔石があるわ」
「普通のオークなのに、魔石はあるのね。不思議だわ……」

 倒したオークを解体しながら、魔石を探すルリ達。
 小さめではあるが、確かに魔石はあった。魔物の強さが変わらないとなれば、環境的な要因で、魔石が出来ると考えるのが妥当ではあろう。

「もう少し、様子を見てみましょう。次、行くわよ」
「うん、奥まで行ってみようか」

 先に進もうとするルリ達に、後ろで唖然としていた冒険者が話しかけてくる。

「おい、待ってくれ。お嬢さんたち、本当にCランクか? 非常識すぎるだろ!!」

「クローム王国所属、Cランクパーティ『ノブレス・エンジェルズ』ですわ!!
 お見知りおきを!!!」

 厳密には、4人の冒険者パーティとお供のメイドと兵士なのだが、まぁいいだろう。
 高らかに宣言し、山へと向かって歩き出す、ルリ達であった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...