転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
160 / 190

160 ユニコーン

しおりを挟む
「おはよう!」
「夜中は少し笑ったけど、よく眠れたわ」
「見張り、お疲れ様でした!」

 魔導王国イルーム、王都から半日ほど離れた山中で朝を迎えたルリ達。
 快適な睡眠で、今日も元気だ。

「魔物に注意しながらもう少し山を登って、お昼前には引き返しましょう」
「そうね、今日中に王都に戻らなくちゃだしね」

 セイラが行きたいのは、因縁の相手、ゴーレムがいるという中腹の岩場。
 以前は油断もありやられてしまったので、しっかりと倒しておきたい。

「魔石の調査という意味では、もう十分ね。魔物に魔石がある事はわかったわ」
「理由は不明だけどね。魔物の強さが変わらないのだとすれば、土地の環境の影響でしょうけど……」

 クローム王国にもいたオークなどの魔物は、強さが違うとは思えなかった。
 この地域で初めて倒した魔物については比べようがないが、べらぼうに強力という感覚はないので、地域的な特徴だろうと推測する。

(魔石が生まれやすい地域特性かぁ……。アメイズ領で真似するのは難しそうねぇ……)

 魔石が育つ理由を発見し、アメイズ領で再現したいと考えていたルリ。
 土地そのものの魔力が原因だとすれば、そうそう再現は出来ないであろう。
 アメイズ領の魔物でも魔石が獲れるようにと思ったが、難しそうだ。


「サクッとゴーレム倒して、帰りましょう!!」
「「「おー!!!」」」

 魔石の事はこれ以上考えても分からない。
 ならば、さっさと狩りを終えて、帰ろうという事で、山を登り始めた。



「もうすぐ岩場に到着ね!」
「ゴーレムらしき反応もあるわ。戦闘準備よ!」

「それで、魔法も物理攻撃も効かない相手よ。どうやって倒すの?」
「わたくしに、考えがあるわ。試してみたいの!」

 周囲は岩場。火事の心配がない。
 ミリアが張り切って魔力を高めている。


「いたわ。ストーンゴーレムにアイアンゴーレム。全部で5体!」

「みんなは、岩陰に隠れてて!」

 ちょうど、5体のゴーレムが纏まっていた。
 魔法で狙うには、絶好のシチュエーションだ。

 言われなくても、ミリアが全力で魔法を放ちたい事はわかる。
 飛び火してこないように、隠れて見守るルリ達。
 念の為、絶対防御バリアをいつでも張れるようにしておく。

「セイラ、一応、周囲に注意しておいてね」
「当然よ。もう二度と、不意を突かれたりはしないわ」

 周囲を警戒しながらミリアを見守ると、イメージが整ったようだ。

火炎旋風フレアストーム!!」
氷結旋風アイスストーム!!」
「プラズマ~!!」

 ごぉぉぉぉぉぉぉぉ
 ずどぉぉぉぉぉぉぉ
 バリバリバリバリバリ

 ミリアの特大魔法三連荘。
 灼熱の竜巻がゴーレムを襲い、動きを止めると、間髪入れずに、氷の粒を巻き上げた極寒の竜巻がゴーレムを包む。
 そこに、天空からプラズマの雷が落ちた。

 急激に加熱され、急速に冷やされる。
 熱処理の効果で脆くなった所に、雷で切り刻まれては、さすがのゴーレムもひとたまりもない。
 魔法や物理攻撃が効く効かない以前の問題だ。

 辺りには、粉々に砕かれたゴーレムの残骸が転がっていた……。


「ルリ~、見てた~? 出来たわよ~!!」

 轟音と暴風が収まると、駆け寄ってくるミリア。
 大魔法の連続使用はミリアとしてもチャレンジだったようで、満面の笑みだ。

 硬いものでも、急激に熱して冷やせば脆くなる。
 ルリが、以前教えた事を、しっかり実践したミリア。
 実戦での投入は初だが、イメージ通りに出来たらしい。

「ミリアぁぁぁ!! 最高~!!」

 爆風の方向なども見事に制御されたミリアの魔法。今までを考えても、かなり上手に出来ている。
 魔法適性の高いミリアだが、今でも一応、ルリは魔法の師匠的な立場だ。
 ルリに抱きついて、嬉しそうにはしゃいでいた。

 セイラも、何かした訳では無いのだが、目の前でゴーレムが粉々になるのを見たので、満足したようだ。
 ミリアの喜びは、セイラの喜びでもある。


「ゴーレムも倒したし、そろそろ帰りましょうか」
「待って、魔石だけ回収ね」

 岩や鉄のくずの中から、魔石を探す。10センチ以上の、大きな魔石を5個、探すことが出来た。

「キレイな魔石だねぇ」
「高く売れそうよ」

 魔石と、鉄くずを回収、アイテムボックスに収納すると、戦闘は終了だ。
 帰りは一気に山を降りるので、少し休憩した後に、出発する事とする。

「セイラ、一応警戒、お願いね」
「うん。それなんだけど……」

「何かいるのね? こっち来そう?」
「ううん、様子を見られてる感じかなぁ」
「ゴーレム? それとも違う魔物?」
「見た事のある反応ではないわ……」

 これ以上戦う必要もないので、避けられる戦闘は避けたい。
 探知を広げるセイラが、首をかしげた。

「何て言うんだろう。魔物なんだけど、反応がラミア達に近いのよねぇ」
「それって、伝説級の魔物って事?」

 未知の魔物が、こちらを窺っている。しかも、『蛇女』のラミア同様、伝説になるような魔物と反応が似ているという。

「興味深いわね。逃げる? それとも……」
「遠くから見るくらいなら平気かなぁ?」

 顔を見合わせるルリ達。もちろん、好奇心は抑えられず……。

「いい? 遠くから見るだけよ。間違っても、戦おうとか考えない事」
「そうね。絶対に刺激しないように……」

「ただもし、ラミア達みたいに会話ができるのなら?」
「会話ができたとしても、味方とは限らないわ。ラミアとだって、最初は殺されかけてるのよ!」

 遠くから魔物の姿を確認したら、刺激せずに立ち去る。
 行動の方針を確認し合うと、少しずつ反応に近づいて行った。

「みんなは、少し離れてて!」
「いや、ここは、命を懸けてでもお守りせねば……」
「すぐ逃げるから大丈夫。もし追いかけてきて、どうしようもなくなったら時には、お願いするわ」

 兵士たちに、後方で待機するように伝えるミリア。
 自分が盾になると兵士が言うが、優しく拒否する。
 命を懸けて守ってもらうような状況になるなら、最初から近づいたりしてはならない。



「ねぇ、馬、かしら?」
「しかも白いわね。白馬?」
「角があるわ!」

 遠くに見えているのは、2頭の白馬。頭に1本の大きな角がある。

「一角獣……ユニコーン? 本当にいるんだ……」
「ルリ、知ってるの?」
「想像上の生き物って意味では……」

 実物を見るのは、もちろん初めてだ。
 しかし、目の前に存在する姿は、物語で見たユニコーンそのものだった。

「危険なの?」
「知らない……。聖なる存在、神様とかと同列で語られる事は多いけど……」

(確か、幼女好きなんだっけ……? 関わらない方がいいかも……)

 処女の香りに誘われたという伝説はあるが、幼女に限った話ではないであろう。少し勘違いしているルリ。

「とにかく、姿は確認したわ。長居は無用ね」
「わたくしも、何か視線にゾワゾワしますの。早く立ち去りたいですわ……」

 こっちを見つめている様に見える、2頭のユニコーン。
 もし、地球の伝説同様の存在ならば、ミリアの気配に誘われているのかも知れない。

「早く行きましょ。珍しい魔物だろうけど、気味が悪いわ」
「そうね、分かったわ……」

 早く帰りたがるミリアに、ルリとメアリーが同意する。
 セイラは、少し残念そうだ。

「いいの。あんな綺麗な白馬、なかなかいないでしょ。少し勿体ないって思っただけ……」

 4人の中では唯一、馬に騎乗ができるセイラ。
 ユニコーンにまたがる騎士の姿を想像したのだろう。

「白馬は一緒に探しましょうね。得体の知れない伝説級の魔物よりも、普通の馬の方が安全だわ」

 ミリアが元気付けるようにセイラに言うと、セイラも納得したようだ。
 急いで兵士たちの待つ場所へ走る、4人であった。



「貴重な経験だったわね」
「珍し魔物を見られたわ」

 山を下りはじめたルリ達。
 ユニコーンは貴重な経験だが、これ以上深追いはしない事にして、王都に戻る事にした。


「ねぇセイラ、ユニコーン、ついて来たりしてないよね?」
「反応は感じないけど、どうかしたの?」
「気のせいかな。まだ、ゾワゾワした視線を感じるんだけど……」

 気持ちの悪い視線が、まだ続いているというミリア。
 心配して周囲を見渡すが、魔物の気配はない。

(目を付けられた? 危険かしら? 伝説の魔物なら、気配を消す事も出来るのかも知れない。
 ならば、私が囮になって……)

 ミリアが目を付けられたとすれば、危険かもしれない。そう思ったルリは、行動に出る。


「ユニコーン、出てらっしゃい。幼女はここにいるわよ!!」

 シーン

 突然叫ぶと、装着そうちゃくの魔法で水着に着替え、ポーズをとる。
 しかし、……何も起こらなかった……。


「あれ? これでユニコーンが現れると思ったんだけど……」
「はぁぁぁぁ? 意味がわかんない」
「恥ずかしいから服着なさい!」

「ルリ、ちょっと、そこに座りなさい。あなたはねぇ……」

 本人は大真面目。ユニコーンを魅了しようと考えたルリだったが……。少し、いろいろと、……足りなかったようだ……。



「わかったわ。ユニコーンが幼女好きだというのね。ミリアを助けようと思った、その気持ちは、理解するけど……」
「ルリ、それじゃぁ、幼女じゃなくて痴女だよ……」

「しかし、ミリアに目を付けるとはねぇ。ユニコーンも見る目があるわね」
「どういう意味よ……?」

 結局、ユニコーンは現れず。
 ミリアのゾワゾワも、いつの間にか消えたようだ。

(なんか癪だけど、とりあえず、一件落着ね!)

 気を取り直して、王都へ向かって歩き始める、ルリ達であった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...