転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
178 / 190

178 王女と王女

しおりを挟む
 公聖教会の総本山へ、魔導王国の王女を探しに潜入したルリは、無事に、王女を探し出し、教会からの脱出を試みていた。

 ルミナス王女の天候を操る魔法により、大雨の災害に見舞われた教会。
 大規模な土砂崩れにより、内部は混乱を極める。

「ほら。城壁がなくなりましたわ。道が出来たでしょ!」
「そ、そうですね……」

 明らかに過剰な魔法により、東側が大きく破壊され、城壁も土砂に埋まっている。
 再びの土砂崩れを気にしなければ、そのまま歩いて外に出る事も可能だ。
 ルミナスに導かれるままに、ルリは歩いて教会から出た。



『ルリ、そのまま東に進んでくれる? 10分位で合流できるわ』

 教会の敷地……だったと思われる場所から出ると、セイラからの通信が届く。
 ルミナスに伝え、合流を目指すことにした。

 雨はだいぶ小雨になっている。脱出できたので魔法を弱めたのだろう。
 しかし、激しい雷光だけが、今もなお空を照らしている。

(ミリア、遊んでるのね……)

 犯人は、言うまでもない。
 激しい雨に便乗して、空に魔法を放って遊んでいるのであった。
 何日も森に潜んだ、憂さ晴らし……らしい。


「面白いお友達のようですね。気が合いそうですわ」
「そうですね。たぶん、似た者同士だと思います……」

 空の雷が、誰かの魔法である事にルミナスも気付いたようだ。
 ミリア達の事はまだ紹介していないにも関わらず、似た雰囲気を感じ取ったのかも知れない。
 実際、似た者同士に思える……。

「ルミナス様、もうすぐ合流です。紹介しますわね」
「楽しみにしてますわ」



 すぐにミリア達の姿を確認すると、久しぶりの再会を果たす。

「お互い、大変だったわね。ルリは洗脳されかけてたんだって?」
「そうなの。魔法封じられた時はヤバかったわ。そう言えば、戦闘は大丈夫だったの?」
「うん、逃げるついでに、魔物を兵隊に押し付けちゃった。その後あの雨でしょ。どうなった事やら」

 離れていた間にいろいろあったので、話題には事欠かない。

「あの、ご紹介、いただけるかしら?」
「あ、ごめんなさい」

「魔導王国イルームの王女、ルミナス様です。教会でシスターをなさってたのですが、一緒に来てくださいました」

「ルミナス・フォン・イルームですわ。ごきげんよう」
「ミリアーヌ・フォン・クロームです。よろしくお願いします」

 それぞれ自己紹介を行う。
 小雨降る森の中、ずぶ濡れになって話すようなメンバーではない。
 ここだけ、違う空間のような雰囲気を醸し出していた。

「クローム王国の王女様ですのね。お目にかかれて光栄ですわ」
「わたくしもですわ」

 長い金髪にすらっとしたモデル体型のルミナスと、まだ成長途中で小柄ながらも、愛くるしいロリ巨乳のミリア。
 二人の王女の出会いが、この先の世界に影響を及ぼしていくとは、今はまだ誰も知らない。


「立ち話も何ですし、少し離れたら休みませんか」
「そうですね。追っては来ないと思いますが、教会の近くにいるのも危険ですしね」

 ルミナスの言う通り、追っては来ないであろう。
 教会では多数のシスターが逃げ出しているし、警備兵もそれどころではない。

「では、山沿いを進んで、ユニコーンの里を目指しましょう。教会の勢力圏を出れば、町に立ち寄る事も出来るでしょうし」

 脱出のどさくさで多少の私物は持ってきたが、緊急で必要なのはルミナスの私服だ。
 長く教会で過ごしていたため、服が修道服しかない。

 ルリの服装はどうにでもなるものの、シスター2人と魔術師2人、それにメイドが1人という女性だけのパーティは、街中を歩くには、正直おかしい。

 野営中心にしながらも、街で買い物をする事を決めると、ルリ達は歩き出した。




「今日はこの辺で休もう。ルリ、お風呂出してよ、もうずっと入ってないの……」
「分かった~」

 どぉぉぉぉん

 アイテムボックスから次々と野営道具を取り出すルリ。
 テントに炊事台、そして、リクエストのお風呂。
 収納使いとは知っていたものの、まさかこの大容量とは思わなかったらしく、ルミナスも驚いていた。

(久しぶりにいっぱい食べられるわ!)

 教会では野菜スープ、しかも薬入り中心の質素な食事だったので、食事に飢えていたルリ。
 やっと心置きなく食べられると、喜びを露にする。

「お肉、焼きますわよ。ルミナス様はお肉、大丈夫ですか?」
「教会ではあまり食べませんでしたが、もちろんいただきますわ」

 さっそく焼肉を始めるルリ。
 一方、大容量に加え、新鮮な食材が次々と出てくるルリの収納に、目を奪われているルミナスであった。




「本当に、ユニコーンの里に行くのですよね……」

 夕食後、心配そうにつぶやいたのは、ルミナスだ。
 ユニコーンに会いに行く事に、ためらいがあるらしい。

(そうか、ルミナスの中では、ユニコーンに嫌われた王族の末裔の印象が強いのだろうな……)

 魔導王国に伝わる伝説、そして真実。どちらをとっても、ユニコーンは魔導王国に三下り半を突きつけた事になっている。
 いくら愛し子としてユニコーンが会いたがっていると伝えた所で、信じられない部分もあるのであろう。

「少なくとも私たちの印象では、ユニコーンはルミナス様を好意的に思ってらっしゃいました。心配いらないと思いますわ」

「そうかしらね。でもわたくしは、謝罪をせねばならない気がしております。歴史の真実がどうあれ、今現在、魔導王国が、ユニコーンを蔑ろにしているのは間違いない事実です」

 ミリアがフォローするが、ルミナスにとっては、かなり重い決断のようだ。
 ユニコーンの庇護下にあると言われる魔導王国の王族としては、思う所があるのであろう。

「会ってみないと分かりませんわね。さぁ、お食事いただきましょう!」
「「「「はい!」」」」

 ルミナスが明るく笑うと、全員で焼肉を楽しんだ。
 暗い雰囲気を払拭するかのように、全員、笑顔で。

 ユニコーンの真意など、ここで話し込んでもわからない。
 ならば、会ってみるしかないだろう。ミリアと同じような発想のルミナス。
 姉妹の様な二人の様子に、どこか期待してしまうルリであった。




 途中、小さな街で目的であったルミナスの服を買い、ついでに食料の調達も行う。
 長居はせず、そのまま急いでユニコーンの里に向かった。

「しかし、あなた便利ねぇ。大容量の収納に、絶対防御バリアの魔法? どこでも快適、安全に野営できるなんて、世界中探してもルリしかいないわよ」

「それだけが取り柄ですので!」

「しかも、あなた達の魔法……。無詠唱でポンポンと。今度、コツとか教えてもらえないかしら? 無理にとは言わないけど……」

「いいですよ」

「いいの?」

「なんか、ルミナス様って、ミリアのお姉さんみたいで。それに、信頼できますから」

 魔法はイメージなどと伝えつつ、道中で魔物を狩りながら無詠唱の練習を行う。
 さすが、呑み込みの早いルミナスは、里につくまでの数日で、しっかりと無詠唱を習得していた。


「ルミナス様も、一緒に冒険者やりませんか?」
「それも面白そうね。ユニコーンの話次第ですが、旅に出る時はご一緒しようかしら」

 すっかり打ち解けた、似た者同士の姉妹のようなミリアとルミナス。
 お互い王女という事もあり、そうそう気軽に旅に出る事などできないと分かっている。

 ユニコーンに会えば、今後の方針も決まるだろう。
 見慣れた山の麓まで到着したルリ達は、ついに、里へ向けて山を登り始めるのであった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...