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一話 干渉
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暗い。
何も見えない。
ここはどこだ??、というか何がどうなったんだ?
俺の記憶じゃ変な奴に出会って…そしたら意識が飛んで…
そこで俺は自分の状況を理解した。意識が覚醒したのだ。
俺の名は、葉月大智。メイドに人生を捧げた天才。
確か秋葉のイベントで刺されて死んだんだ。
どうやら異常はないようだな…安心、安心…
って、それどころじゃねぇだろ!
記憶は鮮明に残っているし、なんと言っても刺された腹が痛くない。
というか俺の身体どうなってんだ…
意識はあんのに動かせねぇ…
いやいや、待て落ち着けよ俺。慌ただしくて冷静さを欠いてるだけだろ?
身体を動かすだけだ…落ち着け、落ち着けばきっと…
もう一度身体に動けと命令するが、なんとしても俺の身体は微動だにしない。
おいおい…これはまずいぞ。洒落にならない、身体が思うように動かせないなんて…
というか刺された腹は??
意識はあるのに身体が見えないのはおかしくないか?
そもそも俺の腕と足はどうした、なぜ姿を見せない?
俺の心に焦りが押し寄せてくる。
なんだこれは…植物状態か?
まさか生きたまま病棟で寝てるのか俺は…だから意識だけ残ってるとか??
まてまてまてまて、勘弁してくれよ!
せっかくあの事件で生き残ったのに、こんな不自由な身体のまま生き続けなきゃならないのかよ!?
実際問題、こんな状態でいるなら死んだ方がマシだ。
何も見えないし感覚も無い。
何も聞こえないし、ただただ寒い。
不安と絶望感だけが俺に降りかかる。
あー、やばいやばいやばい。
落ち着け俺…まだ道はある。
さっきまで一緒にいた、あの悪魔のような女はどうした??
覚えてる限りじゃ、アイツのせいで苦しんで…それで何処かに飛ばされた?
いや、これじゃ推論に過ぎない。
記憶を辿れ…俺は何をされた??
確か、痛かったんだ。とてつもない激痛を浴びた。
あれは魂自体を曲げられるような痛みだ。
そして、あの痛みを俺に与えたのはあの悪魔だ。
だが、アイツは祝福を与えると言ってたな…
まさかあの痛みが祝福なのか??
いや、流石にあれが祝福とは考えにくい。明らかにあの痛みは悪意を感じた。
となると、あの痛みが今の状況を作り出した元凶である可能性が高い。
あの魂を曲げる痛みが、俺の身体を作り替えたとか??
だとしたら、今俺の身体が見当たらないのは納得出来る。
もしそうだとして、残った祝福は何処へ??
特に何も見えないし、聞こえないし、それこそ怖い。
俺が今いるのは何もない暗黒空間だ。
人は一定時間以上、暗闇にいると、発狂してしまう程に軟弱らしい。
俺は今まさにそれだ。
今にも狂いそうな程に慌てている。
このままだと本当に狂ったままどうにかなってしまいそうだ…
その時……、、
ガシャンッ
何かが俺を持ち上げる感触があった。
なんだ?何かに持ち上げられた…?
俺の体重は52kg弱、持ち上げられないほどでもないが、それにしては軽々と持たれたような…
ツンツン…
またしても何かに触られた感触。
さっきと違って、指先で押された感じ…
ちょっとこそばゆい…腹か胸?のあたりを撫で回すように指されている。
少し嬉しくなった。
無理もないだろう、この世界で何かが俺に触れているのだ。
つまるところ何も無いわけじゃない…
希望が見えてきたが、指されている所に意識を向ければ向けるほど感覚は強くなってくる。
指…
誰かいるのか??
おーい、いるなら返事してくれよ!!
すると……、、
サワサワ。
今度は撫でられるような感触。
これは確定だ、今俺の目の前に誰かいる。
持ち上げられたからには、俺の今いる場所は病院ではない。
目は見えないし真っ暗だが、見えなくなってるだけで感覚的に目はある。
失明したとは考えにくいから、目を閉じてるのか俺は?
それとも見えない身体になった??
まだまだわからん事だらけだが、取り敢えず人が近くにいるのは安心だ。
まだ助かる未来が残っているという事…
よし、なんとかこの人とコンタクトを取れればいいんだが…
目、耳、匂い…今のところこの三種は死んだ。
目は見えないし、何も聞こえない。嗅覚なんて今の今まで忘れるほどに感じない。
となると残された五感、つまりは触覚と味覚だけども…
触覚は感じる訳で、残されてるのは口だが、これは期待できない。
そもそも口がどこにあるのかすら、わからない。
強いて言うなら今触られているのは頭だ。
指で指されたのは腹と胸…
てか、俺の身体どんな形してんだ??
考えてみれば頭と腹までの距離感がおかしい。
なんだ、この俺の身体の形…
球体ではないし、人の姿とも言えない。
四角……それも箱型のような?なんで人の形じゃないんだ??
その時、俺の脳裏にあの魔物の姿がよぎった。
RPGのダンジョンで見かけると、なりふり構わず即死魔法をぶっ放してくるアイツだ。
名前は確か、ミミック?だったか…
見た目からもわかるように、討伐時の報酬が美味い。
冒険者ご用達のレアモンスター。
あれ、でも俺の記憶じゃアイツの特徴は箱と一体化した大きな口だった気が…
《大丈夫ですか"主人"、もしかして聞こえてない??
ど、どうすれば…主人ど、どうしよう!!
突然、俺の脳内に声が響いた。
ん!?
な、何何何?!?
今確かに声が聞こえた?
主人……もしかして俺のこと?
てか、この声は何だ?
脳内に直接響いてくるような声、明らかに発声とは異なる聞こえ方だ。
目の前にいる誰かが話しかけてきたのか?
それとも念話的な何かか??
あの悪魔とも似ても似つかない声質だし、敵とは考えにくい。
そもそも俺のことを主人って言ってる訳だし…
《聞こえてるなら返事して主人!!
実は聞こえてたりしない??
やっぱり聞こえない?
もしかしたら、しなかったりしたりしない? 》
いや、どっちやねーん!
ついツッコミを入れてしまった…
確かに聞こえるこの声は、やはり俺めがけて発せられている。
この子は俺の現状をそれなりに理解しているみたいだけど、どうしたものか…
それにしても、声が聞こえただけでとても安心している俺がいる。
今まで年齢=独身だった俺が、この子の声一つでここまで落ち着くなんてな…
この子は今にも泣き出しそうだが、代わりに俺は冷静さを取り戻したようだ。
しかしな、何とかして反応してあげたいが、俺に発声能力がない以上、どうしようもないんだよなぁ。
心の中で反応はできるが、表に出せないのがこの体の困ったところである。
俺に口が付いてればなぁ…
《贈与能力『変幻自在』を使用しますか?YES/NO |》
またしても俺の脳内に別の声が響いた。
は??
今度は何だ、スキル?変幻自在?
ギフトスキルって何だよ…
さっきまでの声と違うし、それこそ機械音みたいな声だ。
目の前にいる誰かさんの声とは考えにくいし、さっきまでの声よりもっと深い所で響いてくる声だ。
一体誰なんだ…
俺の祝福がこれか?
贈与能力って言うくらいなんだ、多分俺の祝福はこれだろう。
変幻自在…確か何にでも変われるって事だよな?
もしかして…今の状況を何とか出来るかも?
俺の身体がどうなってるのかはわからんが、もしもこの力で人の姿になれれば会話ができる。
目の前にいるのが誰なのかもわかるし試してみる価値しかない!
YESだ!!
変幻自在?を使う!!
《『変幻自在』を使用します。
貴方の理想の肉体を再構築します…
過度の魔力を消費します。それでも使用しますか?YES/NO 》
魔素?
魔力的な何かか?
取り敢えず今は会話の方が優先だ。
当然YES!!
すると俺の呼びかけに答えたかのように、俺の身体が変形していくような感覚がした。
次第にその揺れは落ち着き、ようやく視界に光が見え始める。
『ア、あ、あ……
コエ、声が出せるぞ!!
よっしゃー!!! 』
あまりの喜びに雄叫びを上げる俺。
いや、でもさ?
これは流石に喜ぶだろ。
だって何も見えなかった視界が戻ったんだぞ??
身体を見回してみると、俺の身体は細く柔らかくなっていたが、それも今は気にならない。
『あ、そういやさっきまでの声の子は……』
辺りを見渡してみる。
すると俺の視界に一人の美少女が収まった。
ひらりとなびくロングの銀髪に、綺麗に整えられた顔。
宝石のような真紅の眼に、傷一つないサラッとした足…
美しいとしか言いようがない、絶世の美少女だ。
『えと、君がさっきの声の子か??
それとも人違いだった??
だとしたらすまん。』
俺が返答を待つまでもなく、彼女は俺に告げる。
「主人、声が聞こえてるなら反応してくださいよ!!!
私心配してたんですよ!?」
出会い頭に怒号を浴びせてくる彼女。
その美しさとは裏腹に、彼女の周りにはそれを掻き消す程の怒りが見える。
なんだ、俺の目おかしくなった?
何故だか彼女の後ろに赤いオーラのようなものが見える。
それにその額には涙らしかものも見える。
『すまん、俺も声出せなかったんだよ。
だから泣かないでくれよ…』
それしか言えない。
そもそも俺何か悪いことしたかな…?
というかこの子誰だよ…
俺は今見ず知らずの子に説教されてるのか??
「主人の事情は把握しましたが、私の気持ちも少しは気にしてください!
私にとって主人は神です。主人に何かあれば私はこれから何を糧に生きていけば……、、」
『いやいや、ちょっと待ってくれよ!
そもそもアンタは誰だ、というか何故俺のことを主人と呼ぶ? 』
「私は主人のメイドです!! 」
『は?
メイド?
アンタがか?? 』
「はい!!
私は主人のメイドです。」
メイド?
この美少女が俺のメイド……だと??
そもそも何でここにいるのか、誰なのか、目的は?
気になることが山積みすぎて、どれから聞いたらいいものか…
『アンタが俺のメイドなのはわかったけど、何で?
どこから来たんだ?
何のために俺のメイドになりたがる?? 』
「え、主人に私が仕える理由なんてありませんよ?
というかこの質問、本当に要るんですか?
私はメイド、主人はマスター。これ以上に何かは必要でしょうか! 」
う、うーん。
なんでこの子はこんな誇らしげなんだ。
何も状況良くなってないし、全然ダメなんだけども。
「主人のためなら何でもします!! 」
ぐっ、可愛い。
そんな可愛い目で見ないでくれ…俺の思考力が落ちる。
外見だけなら完璧を超える完璧。
さっきの話も考えてみれば、正論ちゃ、正論なんだよな。
確かにメイドだって言ってるんだしそれでいいのかな?
いや、落ち着け俺!
今の俺は可愛さのあまり冷静さを欠いている。
この子が何なのかははっきりさせなければ…
『名前!
名前教えてよ、流石にメイドって呼ばれたくないでしょ。』
「名前は主人が決めてください。前の名前は忘れます! 」
『え、そんな簡単に前の名前捨てちゃっていいのか? 』
「別に構いません!
今の主人は貴方です! 」
『う、うん。
それじゃあ…… 』
名付け…
この子に合うとっておきの名前…
まずい、かんがえれば考えるほど浮かんでくるな。
仕方ないじゃないか、この可愛さだぞ?
思考が捗るってものだ。
銀髪が綺麗だからシルバーとかか?
いや、流石にそのまま過ぎるしな……
それこそ俺の飼ってた犬と同じワッフルにするか?
うーん、でも犬と同じは怒るか…
これはどうしたものか……
その時、俺の脳裏に一つの名前が浮かんだ。
ジャンヌ・ダルク……聖女、聖乙女《ワルキューレ》なんて呼ばれる聖なる巫女。
まさにこの子のことじゃないだろうか?
メイドだから戦闘出来るのかはわかないけど、それでも似合うと思う。
『一つに絞るのが難しい、が!
決めたぞ、お前の名前は〈ジャンヌ〉だ!! 』
「ジャンヌ…
それが私の名前ですね!!
ありがとうございます"ご主人様"!! 」
こうして、俺とジャンヌの異世界生活が幕を開けるのだった。
何も見えない。
ここはどこだ??、というか何がどうなったんだ?
俺の記憶じゃ変な奴に出会って…そしたら意識が飛んで…
そこで俺は自分の状況を理解した。意識が覚醒したのだ。
俺の名は、葉月大智。メイドに人生を捧げた天才。
確か秋葉のイベントで刺されて死んだんだ。
どうやら異常はないようだな…安心、安心…
って、それどころじゃねぇだろ!
記憶は鮮明に残っているし、なんと言っても刺された腹が痛くない。
というか俺の身体どうなってんだ…
意識はあんのに動かせねぇ…
いやいや、待て落ち着けよ俺。慌ただしくて冷静さを欠いてるだけだろ?
身体を動かすだけだ…落ち着け、落ち着けばきっと…
もう一度身体に動けと命令するが、なんとしても俺の身体は微動だにしない。
おいおい…これはまずいぞ。洒落にならない、身体が思うように動かせないなんて…
というか刺された腹は??
意識はあるのに身体が見えないのはおかしくないか?
そもそも俺の腕と足はどうした、なぜ姿を見せない?
俺の心に焦りが押し寄せてくる。
なんだこれは…植物状態か?
まさか生きたまま病棟で寝てるのか俺は…だから意識だけ残ってるとか??
まてまてまてまて、勘弁してくれよ!
せっかくあの事件で生き残ったのに、こんな不自由な身体のまま生き続けなきゃならないのかよ!?
実際問題、こんな状態でいるなら死んだ方がマシだ。
何も見えないし感覚も無い。
何も聞こえないし、ただただ寒い。
不安と絶望感だけが俺に降りかかる。
あー、やばいやばいやばい。
落ち着け俺…まだ道はある。
さっきまで一緒にいた、あの悪魔のような女はどうした??
覚えてる限りじゃ、アイツのせいで苦しんで…それで何処かに飛ばされた?
いや、これじゃ推論に過ぎない。
記憶を辿れ…俺は何をされた??
確か、痛かったんだ。とてつもない激痛を浴びた。
あれは魂自体を曲げられるような痛みだ。
そして、あの痛みを俺に与えたのはあの悪魔だ。
だが、アイツは祝福を与えると言ってたな…
まさかあの痛みが祝福なのか??
いや、流石にあれが祝福とは考えにくい。明らかにあの痛みは悪意を感じた。
となると、あの痛みが今の状況を作り出した元凶である可能性が高い。
あの魂を曲げる痛みが、俺の身体を作り替えたとか??
だとしたら、今俺の身体が見当たらないのは納得出来る。
もしそうだとして、残った祝福は何処へ??
特に何も見えないし、聞こえないし、それこそ怖い。
俺が今いるのは何もない暗黒空間だ。
人は一定時間以上、暗闇にいると、発狂してしまう程に軟弱らしい。
俺は今まさにそれだ。
今にも狂いそうな程に慌てている。
このままだと本当に狂ったままどうにかなってしまいそうだ…
その時……、、
ガシャンッ
何かが俺を持ち上げる感触があった。
なんだ?何かに持ち上げられた…?
俺の体重は52kg弱、持ち上げられないほどでもないが、それにしては軽々と持たれたような…
ツンツン…
またしても何かに触られた感触。
さっきと違って、指先で押された感じ…
ちょっとこそばゆい…腹か胸?のあたりを撫で回すように指されている。
少し嬉しくなった。
無理もないだろう、この世界で何かが俺に触れているのだ。
つまるところ何も無いわけじゃない…
希望が見えてきたが、指されている所に意識を向ければ向けるほど感覚は強くなってくる。
指…
誰かいるのか??
おーい、いるなら返事してくれよ!!
すると……、、
サワサワ。
今度は撫でられるような感触。
これは確定だ、今俺の目の前に誰かいる。
持ち上げられたからには、俺の今いる場所は病院ではない。
目は見えないし真っ暗だが、見えなくなってるだけで感覚的に目はある。
失明したとは考えにくいから、目を閉じてるのか俺は?
それとも見えない身体になった??
まだまだわからん事だらけだが、取り敢えず人が近くにいるのは安心だ。
まだ助かる未来が残っているという事…
よし、なんとかこの人とコンタクトを取れればいいんだが…
目、耳、匂い…今のところこの三種は死んだ。
目は見えないし、何も聞こえない。嗅覚なんて今の今まで忘れるほどに感じない。
となると残された五感、つまりは触覚と味覚だけども…
触覚は感じる訳で、残されてるのは口だが、これは期待できない。
そもそも口がどこにあるのかすら、わからない。
強いて言うなら今触られているのは頭だ。
指で指されたのは腹と胸…
てか、俺の身体どんな形してんだ??
考えてみれば頭と腹までの距離感がおかしい。
なんだ、この俺の身体の形…
球体ではないし、人の姿とも言えない。
四角……それも箱型のような?なんで人の形じゃないんだ??
その時、俺の脳裏にあの魔物の姿がよぎった。
RPGのダンジョンで見かけると、なりふり構わず即死魔法をぶっ放してくるアイツだ。
名前は確か、ミミック?だったか…
見た目からもわかるように、討伐時の報酬が美味い。
冒険者ご用達のレアモンスター。
あれ、でも俺の記憶じゃアイツの特徴は箱と一体化した大きな口だった気が…
《大丈夫ですか"主人"、もしかして聞こえてない??
ど、どうすれば…主人ど、どうしよう!!
突然、俺の脳内に声が響いた。
ん!?
な、何何何?!?
今確かに声が聞こえた?
主人……もしかして俺のこと?
てか、この声は何だ?
脳内に直接響いてくるような声、明らかに発声とは異なる聞こえ方だ。
目の前にいる誰かが話しかけてきたのか?
それとも念話的な何かか??
あの悪魔とも似ても似つかない声質だし、敵とは考えにくい。
そもそも俺のことを主人って言ってる訳だし…
《聞こえてるなら返事して主人!!
実は聞こえてたりしない??
やっぱり聞こえない?
もしかしたら、しなかったりしたりしない? 》
いや、どっちやねーん!
ついツッコミを入れてしまった…
確かに聞こえるこの声は、やはり俺めがけて発せられている。
この子は俺の現状をそれなりに理解しているみたいだけど、どうしたものか…
それにしても、声が聞こえただけでとても安心している俺がいる。
今まで年齢=独身だった俺が、この子の声一つでここまで落ち着くなんてな…
この子は今にも泣き出しそうだが、代わりに俺は冷静さを取り戻したようだ。
しかしな、何とかして反応してあげたいが、俺に発声能力がない以上、どうしようもないんだよなぁ。
心の中で反応はできるが、表に出せないのがこの体の困ったところである。
俺に口が付いてればなぁ…
《贈与能力『変幻自在』を使用しますか?YES/NO |》
またしても俺の脳内に別の声が響いた。
は??
今度は何だ、スキル?変幻自在?
ギフトスキルって何だよ…
さっきまでの声と違うし、それこそ機械音みたいな声だ。
目の前にいる誰かさんの声とは考えにくいし、さっきまでの声よりもっと深い所で響いてくる声だ。
一体誰なんだ…
俺の祝福がこれか?
贈与能力って言うくらいなんだ、多分俺の祝福はこれだろう。
変幻自在…確か何にでも変われるって事だよな?
もしかして…今の状況を何とか出来るかも?
俺の身体がどうなってるのかはわからんが、もしもこの力で人の姿になれれば会話ができる。
目の前にいるのが誰なのかもわかるし試してみる価値しかない!
YESだ!!
変幻自在?を使う!!
《『変幻自在』を使用します。
貴方の理想の肉体を再構築します…
過度の魔力を消費します。それでも使用しますか?YES/NO 》
魔素?
魔力的な何かか?
取り敢えず今は会話の方が優先だ。
当然YES!!
すると俺の呼びかけに答えたかのように、俺の身体が変形していくような感覚がした。
次第にその揺れは落ち着き、ようやく視界に光が見え始める。
『ア、あ、あ……
コエ、声が出せるぞ!!
よっしゃー!!! 』
あまりの喜びに雄叫びを上げる俺。
いや、でもさ?
これは流石に喜ぶだろ。
だって何も見えなかった視界が戻ったんだぞ??
身体を見回してみると、俺の身体は細く柔らかくなっていたが、それも今は気にならない。
『あ、そういやさっきまでの声の子は……』
辺りを見渡してみる。
すると俺の視界に一人の美少女が収まった。
ひらりとなびくロングの銀髪に、綺麗に整えられた顔。
宝石のような真紅の眼に、傷一つないサラッとした足…
美しいとしか言いようがない、絶世の美少女だ。
『えと、君がさっきの声の子か??
それとも人違いだった??
だとしたらすまん。』
俺が返答を待つまでもなく、彼女は俺に告げる。
「主人、声が聞こえてるなら反応してくださいよ!!!
私心配してたんですよ!?」
出会い頭に怒号を浴びせてくる彼女。
その美しさとは裏腹に、彼女の周りにはそれを掻き消す程の怒りが見える。
なんだ、俺の目おかしくなった?
何故だか彼女の後ろに赤いオーラのようなものが見える。
それにその額には涙らしかものも見える。
『すまん、俺も声出せなかったんだよ。
だから泣かないでくれよ…』
それしか言えない。
そもそも俺何か悪いことしたかな…?
というかこの子誰だよ…
俺は今見ず知らずの子に説教されてるのか??
「主人の事情は把握しましたが、私の気持ちも少しは気にしてください!
私にとって主人は神です。主人に何かあれば私はこれから何を糧に生きていけば……、、」
『いやいや、ちょっと待ってくれよ!
そもそもアンタは誰だ、というか何故俺のことを主人と呼ぶ? 』
「私は主人のメイドです!! 」
『は?
メイド?
アンタがか?? 』
「はい!!
私は主人のメイドです。」
メイド?
この美少女が俺のメイド……だと??
そもそも何でここにいるのか、誰なのか、目的は?
気になることが山積みすぎて、どれから聞いたらいいものか…
『アンタが俺のメイドなのはわかったけど、何で?
どこから来たんだ?
何のために俺のメイドになりたがる?? 』
「え、主人に私が仕える理由なんてありませんよ?
というかこの質問、本当に要るんですか?
私はメイド、主人はマスター。これ以上に何かは必要でしょうか! 」
う、うーん。
なんでこの子はこんな誇らしげなんだ。
何も状況良くなってないし、全然ダメなんだけども。
「主人のためなら何でもします!! 」
ぐっ、可愛い。
そんな可愛い目で見ないでくれ…俺の思考力が落ちる。
外見だけなら完璧を超える完璧。
さっきの話も考えてみれば、正論ちゃ、正論なんだよな。
確かにメイドだって言ってるんだしそれでいいのかな?
いや、落ち着け俺!
今の俺は可愛さのあまり冷静さを欠いている。
この子が何なのかははっきりさせなければ…
『名前!
名前教えてよ、流石にメイドって呼ばれたくないでしょ。』
「名前は主人が決めてください。前の名前は忘れます! 」
『え、そんな簡単に前の名前捨てちゃっていいのか? 』
「別に構いません!
今の主人は貴方です! 」
『う、うん。
それじゃあ…… 』
名付け…
この子に合うとっておきの名前…
まずい、かんがえれば考えるほど浮かんでくるな。
仕方ないじゃないか、この可愛さだぞ?
思考が捗るってものだ。
銀髪が綺麗だからシルバーとかか?
いや、流石にそのまま過ぎるしな……
それこそ俺の飼ってた犬と同じワッフルにするか?
うーん、でも犬と同じは怒るか…
これはどうしたものか……
その時、俺の脳裏に一つの名前が浮かんだ。
ジャンヌ・ダルク……聖女、聖乙女《ワルキューレ》なんて呼ばれる聖なる巫女。
まさにこの子のことじゃないだろうか?
メイドだから戦闘出来るのかはわかないけど、それでも似合うと思う。
『一つに絞るのが難しい、が!
決めたぞ、お前の名前は〈ジャンヌ〉だ!! 』
「ジャンヌ…
それが私の名前ですね!!
ありがとうございます"ご主人様"!! 」
こうして、俺とジャンヌの異世界生活が幕を開けるのだった。
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「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
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