やり直し令嬢は本当にやり直す

８ 私のセラスは若返った

私はハンス・ロッセン。
騎士として国を支えている。

２５歳の時、美少女と出会った。
男爵令嬢のセラスだ。
１９歳とは思えない幼顔の女性だった。
すぐに口説きおとして、婚約した。

だがセラスは十代最後の年に学園に入学していた。医師になりたかったらしい。しかし十代が規定年齢の学園をいま去れば、二度と入学する機会はなくなると、騎士科に編入し直して学園に通った。騎士科は５年もあるのだが、そこはまあ、騎士の妻となる者として夫と同じく騎士道を辿る令嬢も珍しくはないので、本当は嫌だったが仕方なく譲った。

５年後、セラスは筋肉もついて逞しくなっていた。日焼けで美しかった肌も髪も台無しになっていた。

そんな時に出会ったのが、１８歳のローズ子爵令嬢だった。セラスには劣る美少女だが、まだピチピチで張りがある。
こんな子と結婚したい！
そう思った。
そしたらセラスがエルフの血の力で十代の時の姿に戻ってくれた。
なんて素晴らしい！
出会った頃より若く、可愛く、絶世の美少女になっているではないか！
決めた！  結婚するのはやっぱりセラスだ！


「ハンス様。わたくし達夫婦に子供ができましたのよ。女の子で、名前はヨハンナよ」

……うん？
いつのまに結婚していたのか。
そしていつのまに子が出来ていたのか。
それにセラスの声がなんだか太い。男の声みたいだ。

「どうなさったの、ハンス様？」

いや、気のせいだろう。
セラスはいつまでも十代の姿で若く美しい。私の理想そのものだ。

「お父様。ヨハンナです。十歳になりました」

おおっ、ヨハンナ！  私の娘！
ん？  いつのまに十歳になっていたのか。
それに娘にしてはハスキーで少年みたいな声だな。

「どうなさったの、お父様？」

……いや、気のせいだろう。
間違いなく私とセラスの娘だ。セラスの面影もある、絶世の美少女だ。その隣にいるセラスもいつまでも美少女のままだ。私はなんて幸せなのだろう。