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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
26)君はヒーロー
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パシンッ!
イブが皇子を平手打ちする。驚いた。思い切ったこともできるのか。皇子の前髪がはらりと分けられて唖然とする顔が見える。幼い!イブよりも若いじゃないのか?クルトくらいの子供だったのか?生意気な口調は幼さゆえの強がりだったのか?
「い、痛いじゃないかっ!」
「これでわかっただろ?君はこの世界で生きてるんだ!殴られたら痛いし、ケガだってするんだ!ちゃんと前を見なよ!逃げてどうするんだ!君。自分を変えるためにここに来たんじゃないのか?」
「……どうして……それを」
「そうでもなきゃ。魔法陣の中に必死になって自分から飛び込まないだろ?」
「…………ううう……」
おやおや泣き出しちまった。お悩み相談は時と場所を考えないといけないな。
「くそっ、キリがない。皇子様!撤退しますか?」
団長が珍しく苦戦している。そりゃそうか。大暴れしちまうと俺達まで怪我するかもしれないからだな。思う存分剣がふれないのか。
「僕が手伝うよ」
「……え?」
「サポートするから。シド。チカラの使い方を。どうやるか教えて?」
イブが皇子の隣に立って肩に手を置いていた。またチカラを分け与えるつもりか?魔力切れになったらどうするんだ?やめさせるべきだが、今はイブのやる事を見守るほうがいいだろう。いつでもフォローができるように慌てて俺もイブの腰に手を回す。
「手を前にだして……気を集中させるんだ」
俺の言葉にイブが皇子の腕を持ち上げ沼に向けさせる。
「次はお腹の中にチカラを集めるんだ。そしてそのチカラを手のひらに集中して……一気に沼に向かって放つんだ」
「む、無理だよぉ……」
情けない声が皇子から聞こえた。このほうが年相応だ。
「大丈夫だよ。僕や皆が君を助ける。目を閉じて体の中にあるチカラを感じるんだ。集中して」
イブの声は人を安心させる力がある。皇子が徐々に落ち着いていくのがわかる。
「……わかった」
「チカラが集まって来ただろ?君は主人公だ!さあやるんだ!」
「はい!」
皇子の手のひらから光が沼へと放たれた。やがてそれは沼の表面に広がっていき、黒い水がどんどん薄くなっていくと透明な水へと変化していった。
「「「おおお!」」」
「さすがは皇子様」
「成功だ!浄化されたぞ!」
「皇子様バンザイ!」
「…………これ。俺がやったの?」
「そうだよ。君はすごいね」
イブが優しくほほ笑む。ほっとしたのか皇子がふらつく。すかさず神官達がその体を抱きかかえる。皇子は何かを言いたそうだったが疲れ切ったのかそのまま目を閉じてしまった。
「皇子様!早く治癒を流せ。馬車までお連れするのだ」
ドタバタと神官一行は騎士団達に慰労の言葉も告げずに去って行ってしまった。
「なんだあいつら。団長に一言礼ぐらい言うべきだろ」
団員達が不平を言い出す。まあ気持ちはわかるな。
「無事に任務を遂行できてよかったですね」
イブが騎士団員達に声をかける。
「ありがとうございます。こちらこそ貴殿に助けていただきました」
「いえ、僕は何もしてませんよ。皇子さまが浄化してくれたんです。それに騎士団の皆さんが討伐してくれたおかげで僕たちは無傷で居られるんです。ありがとうございました」
よしよしいいぞ。これには団長だけでなく団員達の目も輝いている。またイブの人気が上がりそうだ。その方が計画的にはいい。……いいのだが。イブに懸想して邪な気持ちを持つ者もあらわれるかも知れない。あまり人気が上がりすぎるのも考えものだ。
「シド。彼はまだ中学生だと思います」
「中学生とは?」
「13~15歳くらいの子供です」
「やはりクルトより少し上ぐらいだったか」
「神殿側の彼の扱いが気になります」
「わかった。探りを入れよう」
イブが皇子を平手打ちする。驚いた。思い切ったこともできるのか。皇子の前髪がはらりと分けられて唖然とする顔が見える。幼い!イブよりも若いじゃないのか?クルトくらいの子供だったのか?生意気な口調は幼さゆえの強がりだったのか?
「い、痛いじゃないかっ!」
「これでわかっただろ?君はこの世界で生きてるんだ!殴られたら痛いし、ケガだってするんだ!ちゃんと前を見なよ!逃げてどうするんだ!君。自分を変えるためにここに来たんじゃないのか?」
「……どうして……それを」
「そうでもなきゃ。魔法陣の中に必死になって自分から飛び込まないだろ?」
「…………ううう……」
おやおや泣き出しちまった。お悩み相談は時と場所を考えないといけないな。
「くそっ、キリがない。皇子様!撤退しますか?」
団長が珍しく苦戦している。そりゃそうか。大暴れしちまうと俺達まで怪我するかもしれないからだな。思う存分剣がふれないのか。
「僕が手伝うよ」
「……え?」
「サポートするから。シド。チカラの使い方を。どうやるか教えて?」
イブが皇子の隣に立って肩に手を置いていた。またチカラを分け与えるつもりか?魔力切れになったらどうするんだ?やめさせるべきだが、今はイブのやる事を見守るほうがいいだろう。いつでもフォローができるように慌てて俺もイブの腰に手を回す。
「手を前にだして……気を集中させるんだ」
俺の言葉にイブが皇子の腕を持ち上げ沼に向けさせる。
「次はお腹の中にチカラを集めるんだ。そしてそのチカラを手のひらに集中して……一気に沼に向かって放つんだ」
「む、無理だよぉ……」
情けない声が皇子から聞こえた。このほうが年相応だ。
「大丈夫だよ。僕や皆が君を助ける。目を閉じて体の中にあるチカラを感じるんだ。集中して」
イブの声は人を安心させる力がある。皇子が徐々に落ち着いていくのがわかる。
「……わかった」
「チカラが集まって来ただろ?君は主人公だ!さあやるんだ!」
「はい!」
皇子の手のひらから光が沼へと放たれた。やがてそれは沼の表面に広がっていき、黒い水がどんどん薄くなっていくと透明な水へと変化していった。
「「「おおお!」」」
「さすがは皇子様」
「成功だ!浄化されたぞ!」
「皇子様バンザイ!」
「…………これ。俺がやったの?」
「そうだよ。君はすごいね」
イブが優しくほほ笑む。ほっとしたのか皇子がふらつく。すかさず神官達がその体を抱きかかえる。皇子は何かを言いたそうだったが疲れ切ったのかそのまま目を閉じてしまった。
「皇子様!早く治癒を流せ。馬車までお連れするのだ」
ドタバタと神官一行は騎士団達に慰労の言葉も告げずに去って行ってしまった。
「なんだあいつら。団長に一言礼ぐらい言うべきだろ」
団員達が不平を言い出す。まあ気持ちはわかるな。
「無事に任務を遂行できてよかったですね」
イブが騎士団員達に声をかける。
「ありがとうございます。こちらこそ貴殿に助けていただきました」
「いえ、僕は何もしてませんよ。皇子さまが浄化してくれたんです。それに騎士団の皆さんが討伐してくれたおかげで僕たちは無傷で居られるんです。ありがとうございました」
よしよしいいぞ。これには団長だけでなく団員達の目も輝いている。またイブの人気が上がりそうだ。その方が計画的にはいい。……いいのだが。イブに懸想して邪な気持ちを持つ者もあらわれるかも知れない。あまり人気が上がりすぎるのも考えものだ。
「シド。彼はまだ中学生だと思います」
「中学生とは?」
「13~15歳くらいの子供です」
「やはりクルトより少し上ぐらいだったか」
「神殿側の彼の扱いが気になります」
「わかった。探りを入れよう」
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