転生ろうそく王子は愛に溺れるだけじゃない!

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
24 / 41

23母の思い出

しおりを挟む
 急に慌ただしくなった。イゴール様が氷の国皇帝陛下として各国にイスベルクとオレの婚儀が決まったと通達を流したのだ。そのため問い合わせやご祝儀が殺到したのである。
 肝心の式のほうはイスベルクとしてはすぐにでもあげたかったようだが、宰相のグラソンとキャンベルが待ったをかけた。グラソンはオレがまだ王族教育を終えてないこと。キャンベルは式服が間に合わないという理由からだった。

「ごめんなさいね。バタバタしちゃって。各国からお祝いが先に届いちゃって」
 にこにこと笑うネージュ様の前でオレは今お茶を飲んでいる。目の前には美味しそうなケーキもある。
「いえ。その。僕こそあまりこう言うのに慣れてなくて。……は、はは」
 イスベルクやイゴール様の忙しい時間帯にあえて一人だけ呼び出されたのだ。
「ふふふ。マリアージュの話を聞きたくって」
「ええ。僕が知っていることなら何でもお答えします」
 と言ってもルミエールの記憶の中から探し出すって感じなんだけど。いまだに自分の事だけど自分でない感じがして慣れない。今のオレは陽向ひなたとして生きてきた時の性格の方が強く出ているからかもしれない。
「私たちはここからもっと北東の小さな村にいたの。その村では女の子が生まれると「ジュ」の字をつける習わしがあってね。私がネージュ。貴方のお母さんがマリアージュ。ふふ。響きが似ているでしょ」
「ええ。似ていますね」
「だけど。村のすぐ裏山でミスリルの鉱石が見つかってね。そこから戦になり私たちは生き別れになってしまったの。村も焼かれ。生き残った者は南に連れて行かれそうになって。銀髪の白い肌って北国特有らしくて南では珍しいそうなの。そんな時イゴールが現れて助けてくれたの」
「そうだったんですね」
「ええ。助かった者たちともバラバラに別れて。いくところがないならうちにおいでと誘ってくれたの」
 う~む。それはナンパというのではないのかな?
「僕の母のマリアージュは……気の強い人でした。炎の国の側室でしたが度胸がある人で周りを言い負かして離れの屋敷に住む権利を勝ち取っていましたよ」
「まあ。ふふふ。マリアージュらしいわ」
「はは。昔からだったのですね」
「ええ。私の事もよく助けてくれたの。大好きだったわ」
「ありがとうございます。母の事をそう言ってくれて」
 そう言ってもらうとなんだか嬉しい。やっぱりオレはルミエールでもあるんだなと胸がじわっと熱くなった。オレはその頃の暮らしぶりや思い出などを語った。ネージュ様はずっと笑顔で聞いてくれた。

「ルミエールも苦労したのね」
「……もう過ぎたことなので。それよりも前に進んで行きたいのです」
「強いのね。貴方はイスベルクが怖くないの?」
「はい。どうしてですか?」
「イスベルクが12歳から戦に出ていたのはご存じ?」
「はい。本人から聞きました」
「そう。それは、私のせいなのよ」
「え? イゴール様が番を溺愛していて離れたくないからと聞きましたが」
「あ~、それも本当なのだけどね」
 しまった。相手は皇后さまだった。イゴール様は皇帝陛下だ。陛下の悪口を言ったことにならないかなあ。
「イゴールが私を溺愛してくれているのは本当だと思うわ。とても感謝しているの。でも、それだけが理由ではないのよ。私は村で戦があったときにひどいケガを負ってしまって魔力の機能が上手く働かない身体になってしまったの。だからイスベルクを産んだ時にかなりの魔力を奪い取られてしまって。特にあの子はイゴールのチカラを受け継いだチカラの強い子だったから。上手く調節ができなかったの」
 イスベルクが母親に会えなかったのは理由があったんだ。父親の溺愛だけじゃなかったんだ。

「それでもあの子が11歳頃まではなんとかイゴールがそのチカラを抑えてくれていたのだけど。フロワが出来て私の魔力が更に低下してしまって。私はイゴールから魔力を分けてもらわないと動けない身体になってしまったの」
「そうか。だから離れられないんですね」
「ええ。そうなの。逆にイスベルクは強すぎるチカラに翻弄されがちになって。ある日暴走してしまったの。城の一部を壊して……。このままではいけないとチカラを発散させることにしたの」
「それで戦に出るようになったのですか?まだ12歳なのに?」
「最初のうちはこっそりイゴールがついて行った事もあるのよ。すぐに帰って来たけど」
「でもだからと言って12歳はまだ子供ですよ!」
「ええ。でも竜人は成長が速くて見た目はもう大人だったのよ。それにあの子は初陣で敵を全滅させてきたの」
 
 竜人?そうだ竜人族!小説の中で北の国の竜人族の話があった。容姿は人と同じだけど人よりも生命力が強くて体が丈夫な種族の話。……だからか。砂漠の中を車並みに駆けずり回る事が出来る体。鍛えていたからじゃなかったのか。

「怖かったわ。イスベルクは私の子供なのに……なのに12歳で敵を全滅させたあの子を私は怖がったのよ。イゴールはそれをわかっていてあの子を私から引き離したの。我が子なのに。私は母親失格なのよ」
「失格だなんて。言わないで下さい」
「いまだに怖いと思う時があるわ。あの子は無表情で何を考えてるかわからなくて」
「それは違います。始めは僕も嫌われてるのかと思っていたのですが。最近は笑ってくれる時もあるんです。きっと感情の出し方が分からないだけだと思うんですよ」
「あの子が笑顔をみせるなんて。よほど心を許してるのね。お願いよ。何があってもルミエールだけはあの子を怖がらないで欲しいの」
「イスベルクを怖くは思ってはいません。僕はイスベルクのモノなのです。」
「ふふ。そうなのね。純愛なのね」
「僕は彼への貢ぎ物ですから」
「……え? 貢ぎ物?」
「ええ。僕は炎の国からの貢ぎ物なんです」

「え?」
「え?」

 あれ?なんかオレ間違っている??

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。 死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。 君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。

平民なのに王子の身代わりをすることになり、氷の従者に教育されることになりました

律子
BL
牢に捕まった平民のカイルが突然連れていかれた場所はなんと王宮! そこで自分と瓜二つの顔を持つ第二王子に会い、病弱な彼の「身代わり」をさせられることになった! 突然始まった王子生活でカイルを導くのは、氷のように冷たい美貌の従者・アウレリオ。 礼儀作法から言葉遣い、歩き方まで──何もかもを厳しく“教育”される日々。 でも、そうして過ごすうちにアウレリオの厳しいだけではない一面が見えてくることに。 二人は「身代わり生活」の相棒となり、試練を乗り越えていくが…。 だんだんと相手に向ける感情が『相棒』に向ける信頼だけではなくなっていく…!?

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

処理中です...