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第一章:塩対応の同室騎士は言葉が足らない
4独占欲
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「ごめん。サム。心配かけて……」
サミュエルが優しく僕の髪を撫でてくれる。
「無理をするな」
相変わらずサミュエルは無表情だが、その分行動に出てきたと思う。僕を閉じ込めた寮長に抗議をし正当性を認めてもらったと言っていたがその寮長はしばらく休暇をとっているそうだ。なんとなく何が起こったかは予想がつくから聞かないでおくことにした。
かなりひどい発作だったようでいまだに少し指先に震えがある。医者からはしばらくは一人にならないほうが良いと言われた。
サムは僕を抱き上げたまま部屋まで連れて来てくれた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。恥ずかしいから降ろしてと頼んだのだが、サムは頑として降ろしてくれなかった。
「アル……震えが止まらないのか?」
ベットに降ろしてくれた後もサムは僕の手を握り続けてくれていた。
「こわ……怖いんだ。狭いところが」
「……そうか」
暖かいサムの手が心地よくて僕は頬擦りをした。
「そばに。……いて」
「わかった」
「どこにもいかないで」
「わかった。どこにも行かない」
「うん」
その後も夜中にうなされてたようで僕が気づくとサミュエルがずっと付き添ってくれていた。背中を撫でたり汗を拭いたり僕の傍にいてくれたのだ。
「その……昨夜はありがとう」
「……嫌じゃなかったか?」
おそらく彼が聞いてるのは僕が寒がっているのを見かねて抱き込んで寝てくれた事だろう。あまり覚えてないが怖さと寂しさを思い出して甘えてしまった気がする。一晩中。僕の耳元で大丈夫だと言い聞かせてくれた。
あんな子供っぽいところを見られて呆られてないだろうか?
「え?……ぁ、ううん。安心した」
「そうか」
口の端が歪んでるから笑っているのかな。以前よりも彼の顔に表情がでてきた。
「サム、迷惑かけてごめん。本当は僕がもっと早くに皆に閉所恐怖症の事を言っておけばよかったんだ。ただ、何故そうなったかって理由を言いづらくて……」
誘拐されたなんてなかなか自分の口からは言えなかった。
「アルは悪くない」
「いや。僕が先に手を出してしまったのがいけなかった。僕って見た目が弱そうだから強くならなきゃって思っちゃってさ。ついつい自分から相手に立ち向かってしまう。今なら誘拐犯も返り討ちにしてやれるのに」
「小さい頃にアルと出会えていたら、俺がそいつらを叩きのめしていた!」
いかにもという風に声を荒げる姿に頬が緩んだ。
「ふふふ。サムありがとう。でも当時僕らはまだ五歳くらいだったよ」
「五歳でも俺は大人を相手に蹴倒していたぞ」
「あはは。それは頼もしいね」
僕が笑うとサミュエルの目じりが赤く染まった。切れ長の瞳が理知的でかっこいいや。
「次からは辛い時は俺に言え」
「うん。ありがとう。サムって優しいよね」
「っ! やさ……?」
「どうしたの?」
「なんでもない」
サミュエルが口元に手をあて天井を仰ぎ見ていた。どうしたんだろう? 天井に何かあるのかな?
体調が元に戻ってもサミュエルは僕の傍から離れなかった。
「サム、もう僕一人でも大丈夫だよ」
「だめだ」
あれからサムは同じ授業じゃないときは教室への送り迎えをしてくれるようになった。食堂にも、シャワー室にも一緒についてくる。サムは無言で仁王立ちのまま周りを牽制していた。僕は余程サミュエルに心配をかけてしまったのかもしれない。きっと彼は喧嘩の発端が自分に関わる事だったから責任を感じているのだろう。なんだか申し訳ない。気のせいかすごい過保護にされてるような気がする。
「あのさ。僕は鍛錬でも剣でも上位レベルにいるつもりなんだけど」
「アルの太刀筋は見事だ」
「ありがと。でもさ、なんでずっと守ってくれてるの? 僕ってそんなに頼りないかな? 一人じゃ戦えないように軟弱に見える?」
「いいや。アルは良い騎士になると思う」
「じゃあなんで? もちろんサムが居てくれるのは嬉しいよ。でもちょっと甘やかされすぎてる様な気がするんだ」
「約束した」
「約束? それは僕と?」
「そうだ。アルに『傍にいて。どこにも行かないで』と言われ、俺は傍に居ると約束した」
「ひぇっ。そ、それは僕が言ったの?」
「そうだ」
「いつ?」
「少し前」
「嘘……。いや、そういえば言ったような気も」
「覚えてないのか」
「うぅ。なんとなくしか覚えてない」
「そうか」
「うん。ごめん」
「いや。いい」
「ご、ごめん。はっきり覚えてなくて」
「とにかく俺は約束したのだ」
「そ、そうなんだ」
「そうだ」
ああ、詰んでしまった。僕が頼み込んだのか? サムに悪いことをした。きっと真面目なサムは約束をたがえないように僕の傍に居てくれてるのだろう。
~~~~~~~~~~~~~
サムは自分に裏表なく接してくれるアルに対して独占欲を持ち始めたのです。
でもアルは世話焼きおかん体質なので今までは自分がやってあげる立場だったから
守られることに慣れてないのです。
サミュエルが優しく僕の髪を撫でてくれる。
「無理をするな」
相変わらずサミュエルは無表情だが、その分行動に出てきたと思う。僕を閉じ込めた寮長に抗議をし正当性を認めてもらったと言っていたがその寮長はしばらく休暇をとっているそうだ。なんとなく何が起こったかは予想がつくから聞かないでおくことにした。
かなりひどい発作だったようでいまだに少し指先に震えがある。医者からはしばらくは一人にならないほうが良いと言われた。
サムは僕を抱き上げたまま部屋まで連れて来てくれた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。恥ずかしいから降ろしてと頼んだのだが、サムは頑として降ろしてくれなかった。
「アル……震えが止まらないのか?」
ベットに降ろしてくれた後もサムは僕の手を握り続けてくれていた。
「こわ……怖いんだ。狭いところが」
「……そうか」
暖かいサムの手が心地よくて僕は頬擦りをした。
「そばに。……いて」
「わかった」
「どこにもいかないで」
「わかった。どこにも行かない」
「うん」
その後も夜中にうなされてたようで僕が気づくとサミュエルがずっと付き添ってくれていた。背中を撫でたり汗を拭いたり僕の傍にいてくれたのだ。
「その……昨夜はありがとう」
「……嫌じゃなかったか?」
おそらく彼が聞いてるのは僕が寒がっているのを見かねて抱き込んで寝てくれた事だろう。あまり覚えてないが怖さと寂しさを思い出して甘えてしまった気がする。一晩中。僕の耳元で大丈夫だと言い聞かせてくれた。
あんな子供っぽいところを見られて呆られてないだろうか?
「え?……ぁ、ううん。安心した」
「そうか」
口の端が歪んでるから笑っているのかな。以前よりも彼の顔に表情がでてきた。
「サム、迷惑かけてごめん。本当は僕がもっと早くに皆に閉所恐怖症の事を言っておけばよかったんだ。ただ、何故そうなったかって理由を言いづらくて……」
誘拐されたなんてなかなか自分の口からは言えなかった。
「アルは悪くない」
「いや。僕が先に手を出してしまったのがいけなかった。僕って見た目が弱そうだから強くならなきゃって思っちゃってさ。ついつい自分から相手に立ち向かってしまう。今なら誘拐犯も返り討ちにしてやれるのに」
「小さい頃にアルと出会えていたら、俺がそいつらを叩きのめしていた!」
いかにもという風に声を荒げる姿に頬が緩んだ。
「ふふふ。サムありがとう。でも当時僕らはまだ五歳くらいだったよ」
「五歳でも俺は大人を相手に蹴倒していたぞ」
「あはは。それは頼もしいね」
僕が笑うとサミュエルの目じりが赤く染まった。切れ長の瞳が理知的でかっこいいや。
「次からは辛い時は俺に言え」
「うん。ありがとう。サムって優しいよね」
「っ! やさ……?」
「どうしたの?」
「なんでもない」
サミュエルが口元に手をあて天井を仰ぎ見ていた。どうしたんだろう? 天井に何かあるのかな?
体調が元に戻ってもサミュエルは僕の傍から離れなかった。
「サム、もう僕一人でも大丈夫だよ」
「だめだ」
あれからサムは同じ授業じゃないときは教室への送り迎えをしてくれるようになった。食堂にも、シャワー室にも一緒についてくる。サムは無言で仁王立ちのまま周りを牽制していた。僕は余程サミュエルに心配をかけてしまったのかもしれない。きっと彼は喧嘩の発端が自分に関わる事だったから責任を感じているのだろう。なんだか申し訳ない。気のせいかすごい過保護にされてるような気がする。
「あのさ。僕は鍛錬でも剣でも上位レベルにいるつもりなんだけど」
「アルの太刀筋は見事だ」
「ありがと。でもさ、なんでずっと守ってくれてるの? 僕ってそんなに頼りないかな? 一人じゃ戦えないように軟弱に見える?」
「いいや。アルは良い騎士になると思う」
「じゃあなんで? もちろんサムが居てくれるのは嬉しいよ。でもちょっと甘やかされすぎてる様な気がするんだ」
「約束した」
「約束? それは僕と?」
「そうだ。アルに『傍にいて。どこにも行かないで』と言われ、俺は傍に居ると約束した」
「ひぇっ。そ、それは僕が言ったの?」
「そうだ」
「いつ?」
「少し前」
「嘘……。いや、そういえば言ったような気も」
「覚えてないのか」
「うぅ。なんとなくしか覚えてない」
「そうか」
「うん。ごめん」
「いや。いい」
「ご、ごめん。はっきり覚えてなくて」
「とにかく俺は約束したのだ」
「そ、そうなんだ」
「そうだ」
ああ、詰んでしまった。僕が頼み込んだのか? サムに悪いことをした。きっと真面目なサムは約束をたがえないように僕の傍に居てくれてるのだろう。
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守られることに慣れてないのです。
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