【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星

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第二章:辺境伯は溺愛中

15なんだそれ

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 デセルトに収支報告を受け、実際に農家を見て回る事にした。馬を一頭借り、早駆けで駆け回る。サミュエルも心配でついて回ってきてくれている。
 行く先々での反応は微妙だった。まず、サミュエルが何故辺境伯となりこの地を治めるようになったのかという話からしないといけない。すると皆口々にアンジェリカ・ノワールとの結婚が決まったのかと聞いてくる。そうか。それだけノワール伯爵家はこの地への影響が大きいのだな。領主不在で実権を握りつつあった勢力とでも言おうか。
「本当ならその伯爵家と仲良くしたほうがいいんだろうけどね」
「嫌なものは嫌だ」
「だけど、農作物の収穫などはすべてノワール家が引き受けているようだよ」
「…………」
 ん?待てよ。すべて引き受けてる?
「すみませんがこちらでの帳簿や出来高の記録を見せてもらえませんか?」
「え?そんなものどうなさるんっすか?」
「今後の勉強にさせていただきたいのです。一年にどれだけ収穫があるかわかっていれば足らない農具とかも早めに注文できたりしますしね」
「おお!そうなんっすね。わかりやした!」
 僕の言葉に農家の皆さんが協力的になった。あながち嘘ではない。経済的に余裕ができれば各農家の補助も手厚くしていくつもりだからだ。
「協力ありがとうございます」
「アルベルト様はお貴族様なのに偉ぶったところがないっすね」
「ふふ。僕たちがこうしていられるのはここにいる農家の方々や領地の皆さんが頑張ってくれてるからなんだよ」
「……!なんてお優しい方なんだ」
「んだ。別嬪べっぴんなだけじゃねえ。巻き毛姫とえらい違いだわ」
「巻き毛姫?」
「ノワール様とこの早口のお嬢様のことですわ」
 ああ。そういえばくりくりの巻き毛だったような。朝からあの髪形をするのは大変だろうな。それより皆に見せてもらった帳簿とデセルトに聞いていた収支報告にズレがあるような気がする。やはりな……。


「しかしサミュエル様も隅には置けませんだ、こんなに綺麗な方を連れて帰るなんて」
「んだんだ。おいらたちにも優しいし、それに見た目と違ってはっきりと物をおっしゃる」
「そうだ。アルは素晴らしい」
「え?……おいら初めてサミュエル様の笑顔をみましたよ」
「サミュエル様は今までおっかないかただとばかり思ってましただ」
「ふふふ。今後はサムがこの地を守って行くからね。みんな安心してね」
「アルベルト様は天使みたいなかただ……」
「それ以上近づくな」
「ひぇっ……す、すみません。」
「あ、あの。サムは真面目なんだ。少し言葉がたりないけど本当は凄く優しいんだ……くしゃんっ」
「大丈夫か?」
 サミュエルが自分の上着を脱いで僕の肩にさっとにかけてくれた。
「ありがとう。ちょっとくしゃみが出ただけだよ」
 農家の方たちが唖然として見ている。わあなんか恥ずかしい。
「次に行くぞ」
「うん。また来ますね」
 サミュエルが僕の腰を引き寄せる様に抱き寄せた。
「あのサミュエル様が?本当は優しい方だったのか……?」
「はい。僕はとても幸せ者です」
 サミュエルの口の端がさきほどからぷるぷるしてる。喜んでいる?
「サム、どうかしたの?」
「…………なんでもない」
「次は果樹園を見に行くのでしょ?僕果物が好きだから嬉しいよ」
「好きなだけ食べていいぞ」
「ほんと?じゃあ城の皆にも持って帰ろう」


 果樹園には見事な果物が育っていた。豊作なんじゃないだろうか?凄いな。
「はあ。そうだったんすね。ここらは噂のほうが早く耳に入るので皆信じちまったんでしょう」
 果樹園の管理者はライナスといった。サミュエルと同じ褐色の肌で黒髪だ。なんとなく親近感がわいてしまう。
「ライナスのところの果樹園はすごいね。おいしそうな果物がいっぱいで目移りしちゃうよ」
「ありがとうございます!でも、今年は豊作すぎて半分は捨てなきゃいけねえんですわ」
「え?どうして?」
「価格が下がっちまうんで。ノワール様に捨てろと言われてまして」
「「はあ?」」
 僕とサミュエルは同時に声をそろえた。最近二人で声をそろえることが多い。
「確かに価格調整に間引いたりすることはあると聞くが。それは領主に伝えていることなのか?」
「ええ。ノワール様がおっしゃる言葉はご領主様の言葉と同じだそうですだ」
「そんなわけあるか!」
「ひぇえっ。すみません。すみません」
「サム!驚かせちゃだめだよ!ごめんね。ライナス、詳しく聞かせてくれる?」
 ライナスの話だとここでの生産や収穫についてはノワールが取り仕切っているらしい。なぜなら『ノワールの言葉は領主様の言葉』だと伝わっているからだと。
「こちらで取れた初物はつものはすべてノワール様の元へまず送られますだ。そこでノワール様用と王都へ送られる分と分けられて……」
「ちょっと待って。何そのノワール様用って?」
「えっと一番美味しい時期のものはノワール様のところへ送られその後出荷先が決められますだ。大抵はお貴族様のところへ」
「サム知ってた?」
「…………いや。初耳だ」
 わわわ。サミュエルの眉間にもの凄いしわが寄っている。周りの皆が青い顔になってるじゃないか。初日からこれじゃあまた怖い領主さまって噂になっちゃうよ!イメージアップをしなきゃ!
「あの。皆にはいろいろと迷惑をかけちゃってるみたいだけど、サムが来たから今後はもっとみんなの意見も取り入れてここを良い領地にして行けるようにするからね」
「おいら達の意見も聞いてくださるんですか?」
「当たり前じゃない……ってノワールは聞いてくれてなかったの?」
「へい。栽培自体は口だされないのですが……、年々畑を縮小されちまって」
「なんだと!」
「ひぇええ」
「サム。おちついて。深呼吸しようか。ほら、お水でも飲んでね。僕を見て」
 ふーふーとサミュエルが息を整えると僕を抱きしめる。皆が居る前でめっちゃ恥ずかしいけど。これで落ち着いてくれるならと背中に腕を回してさすってあげた。
「ごめんね。皆。サムも初めて聞いて驚いたみたい。あまり表情がでないだけで怒ってるんじゃないからね」
「……そうだ。皆に怒ってはいない」
「ね?こわくないでしょ?」
「は、はい。アルベルト様はすげえ」
「んだんだ。アルベルト様はすげえな」
 え?なんで僕が凄いの?凄いのはサミュエルなんだよ?
「それより皆に頼みがあるんだ」
「へ?おいら達にですかい?なんでしょう?」
「うん。僕らがここに立ち寄ったことは内緒にしてくれるかな?」
「内緒ですか?」
「うん。特にライナスにはちょっと手伝ってもらいたいんだ」
 

◇◆◇

 サミュエル様が領主になられたと噂に聞いていた。マイラ様にまたイジメられて貴族の男を婚約者にされたとも聞かされていたが来られたのは聖女のような方だった。それもあのおっかねえサミュエル様を一瞬にして穏やかにされるなんて!すげえ!あの方はすげえ。あっという間に「猛獣使いのアル様」とあだ名もついてしまった。

 それにおいらはアル様からノワール様が何かを言ってきたらまずはアル様のところに伝えに行くという役目をもらえた。アル様のお願いには応えなきゃいけない。だってあんなに領民思いの腰の低い方見たことねえもん。あの方ならおいらたちの話しは聞いてもらえると感じた。今までのお貴族様じゃねえ。
 正直、サミュエル様だと護りは強くなるだろうが、おいら達一人ひとりに声をかけるなんてしなかったと思う。あのお二人なら、おいらついていってもいい。いや、ついていきたい。そう思わせる何かがある。

「へへへ。なんだか楽しみになってきたっす」

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