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第二章:辺境伯は溺愛中
24傭兵
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翌日から自警団の団員が順番に僕の警護についてくれるようになった。
「ごめんね。貴重な時間を使わせてしまって」
「いいえ。警護も仕事なんです。気を使わないで下さい」
そっか。知らなかった。でもそうだよね。日頃は各地域の巡回や警備にも携わってるもんね。それに僕は子爵出身だから忘れがちになるけどサミュエルは領主であり辺境伯なんだから警護がついて当たり前なんだな。それだけ高い爵位でこの境界地を守る要とも言われる存在になるんだ。
「もっと気をつけないといけないな」
「あの、差し出がましいようですが、無理をせず徐々に慣れて行けばよろしいのかと」
「そうだね。ありがとう」
そうだ、母さまにも言われていた。今更ながら僕の人生の師匠はやっぱり母さまなんだな。ちゃんと自分の意見の言える大人で茶目っ気も忘れない人。自分らしく生きて行こうって思わせてくれる人だ。
母さま達には近いうちにこちらに遊びに来て欲しいと連絡を入れた。節約もかねて僕らのおやつがわりに作ってくれていた余り野菜の加工の仕方を伝授してもらおうと思ってる。野菜チップスやお芋のスティックは美味しかったなあ。保存の効く方法をおしえてもらって農家の方たちに役立てたい。
団員の方々の巡回にも連れて行ってもらうようにしている。と言っても本当に危ないような場所には連れて行かれてないような気がする。境界線ぎりぎりの関門がある場所などには近寄らせてもらえない。
「アル様!」
「ライナスどうしたの?」
「ノワール家の動きがなんだかおかしいっす」
「え?どんなふうに?」
「なんだか傭兵を何人か雇いだしてる様子っすよ」
「傭兵?兵力がいるの?どうして?どこかと戦うつもりなの?」
「そこまではわかりませんが週末においらにまた王都まで行くようにと言われましたっす」
「週末に?」
「もうおいら行きたくないっす。聞かされた時も思わず嫌だって言いそうになったすよ。でも、サミュエル様にとりあえずいつも通りに話を聞けと言われてたんで……」
「サムが?」
どういうことなんだろう?僕は何も聞かされてない。何か僕の知らないところで起きてるの?まさかまた僕の意見を聞かずに決めてしまうつもりじゃないだろうな。
「ライナス。今からサムのところに行くよ!」
◇◆◇
「ノワール様!勝手に傭兵を増やされては困ります!」
「何を言うブルーノ!お前が集めるのが遅いからではないか!」
ふん。使えない執事だ。王都の何でも屋に声をかけといて良かったわい。続々と吾輩の領地に強者が集まってるようじゃ。がははは。これで万全だろう。さて、どうやって隣国へ話を持っていこうか。ぐふふふ。面白くなってきたわい。
「しかし。汚らしい奴らが多いな」
「なんだと!てめえ喧嘩を売る気か!」
ドカッと吾輩に蹴りを入れて来た。数人が吾輩を取り囲む。な、なんだ?伯爵相手に乱暴をするのか?
「こ、こやつらめ吾輩を誰だと思っておる!」
「けっ。雇い主だって言うから黙ってたが金払いも悪いし文句ばっかり言いやがってふざけんなよ!」
「なんじゃと!まだ戦も始まってないのに金なぞ出せるわけなかろう」
「はあ?王都からこんなド田舎迄来てやったんだぜ。移動費ぐらい出しやがれ!」
「お、おい!ブルーノ。こ奴らに金をめぐんでやれ!」
「なんだとぉ!めぐんでやれとはどういう意味だ!」
「……ノワール様。この資金は当てがあると言われてましたよね?」
「ぐっ。そうじゃったな。しかしあれは軍資金。荒くれ共にやる金では……」
「誰が荒くれものだってぇ?強い者が欲しいって招集かけてたんだろ?」
「そうだそうだ!来てやったんだから金はもらわなきゃな!おう!どうした!早く払えっ!」
「やめとけっ!お前らこそ。強くもないくせに金目当てで押しかけてきたんじゃねえのか?」
奥に座っていた熊のような大男がのっそりと立ち上がった。ぼろぼろの服を着た男は眼光だけは鋭い。
「な、なんだてめえ!」
数人が一斉に飛びかかったが男は素手でやつらを投げ飛ばした。
「おお!凄いな!」
コイツは使えるかもしれない。そうだ、吾輩を守るのはこれぐらい強くなければ。
「くそっ叩き切ってやる!」
飛ばされた一人が逆上し剣を抜き突っ込んできた。それを傍にいたマントを頭からかぶった男が素早く自分の剣で止める。二度三度と打ち合いになって荒くれ者たちは皆倒されてしまった。
「おお。こいつも凄いな!よし!お前達二人を雇おう。集まったほとんどが口先だけの奴らじゃったのか!」
「だから私が申し上げたではありませんか」
「ぐぬぬ。……まあ良いわ。今回はブルーノのいう事が正しかったという事か」
ほかにも数人強そうなものがいた。まあこのくらいでいいだろう。金が減るのももったいないし。そうだ!
「よし!お前達には良いものをやろう!この先戦争になった時に吾輩を守り切った奴には吾輩の娘を褒美にやることにしようぞ!」
「っ!何をっ……!それはお嬢様も承知されてるのですか?」
マントの男が口を出してきた。ふん。口約束に承知も何も必要ないわ。
「吾輩の娘だ。父親のいう事を聞くのがあたりまえだろう」
「……お前というやつは……」
「……よせ」
マントの男を熊のような男が制した。なんだ?何を怒っておるのだ?褒美が足らないというのか?
「ほ、褒美が足りぬというなら金貨も用意しよう!どうじゃ!」
「はっ。ありがたき幸せ。その時は伯爵様をお守りいたします!」
熊のような大男が頭を下げる。ふむふむ。これでいいぞ。
「…………はい。」
マントの男も頭を下げる。どうやらこいつは娘より金貨のほうがいいらしいな。まあ仕方あるまい。
「ところでノワール様。戦になるというなら武器も用意しないといけないのでは?」
ブルーノめ。この吾輩がこの期に及んで用意してないわけないだろうが。
「ふっふっふ。問題ないわ。数年かけてちゃんと用意はしてあるわい」
「それはすごいですね。さすがはノワール様。やはりこの屋敷のどこかに隠されてるのでしょうか?」
「なっ何故知っておるのじゃ!」
「そりゃ、月に一度。こそこそされていたら誰だって何かあるんだろうなと思うでしょうよ」
「ふん。めざといな、お前は。そうじゃ、吾輩だけが知っている隠し場所があるのじゃ」
「なるほど……」
「良ければ俺たちにその武器を見せてもらいたい。ほら、使い方が分からないといざと云う時に困るだろう?」
熊男のいうことももっともだが。
「いや。それには及ばん。戦になるまでは誰にも教えるわけにはいかん」
「さようでございますか。了解しました。それで、次のご指示は?」
「そうじゃな。まずは……」
「ごめんね。貴重な時間を使わせてしまって」
「いいえ。警護も仕事なんです。気を使わないで下さい」
そっか。知らなかった。でもそうだよね。日頃は各地域の巡回や警備にも携わってるもんね。それに僕は子爵出身だから忘れがちになるけどサミュエルは領主であり辺境伯なんだから警護がついて当たり前なんだな。それだけ高い爵位でこの境界地を守る要とも言われる存在になるんだ。
「もっと気をつけないといけないな」
「あの、差し出がましいようですが、無理をせず徐々に慣れて行けばよろしいのかと」
「そうだね。ありがとう」
そうだ、母さまにも言われていた。今更ながら僕の人生の師匠はやっぱり母さまなんだな。ちゃんと自分の意見の言える大人で茶目っ気も忘れない人。自分らしく生きて行こうって思わせてくれる人だ。
母さま達には近いうちにこちらに遊びに来て欲しいと連絡を入れた。節約もかねて僕らのおやつがわりに作ってくれていた余り野菜の加工の仕方を伝授してもらおうと思ってる。野菜チップスやお芋のスティックは美味しかったなあ。保存の効く方法をおしえてもらって農家の方たちに役立てたい。
団員の方々の巡回にも連れて行ってもらうようにしている。と言っても本当に危ないような場所には連れて行かれてないような気がする。境界線ぎりぎりの関門がある場所などには近寄らせてもらえない。
「アル様!」
「ライナスどうしたの?」
「ノワール家の動きがなんだかおかしいっす」
「え?どんなふうに?」
「なんだか傭兵を何人か雇いだしてる様子っすよ」
「傭兵?兵力がいるの?どうして?どこかと戦うつもりなの?」
「そこまではわかりませんが週末においらにまた王都まで行くようにと言われましたっす」
「週末に?」
「もうおいら行きたくないっす。聞かされた時も思わず嫌だって言いそうになったすよ。でも、サミュエル様にとりあえずいつも通りに話を聞けと言われてたんで……」
「サムが?」
どういうことなんだろう?僕は何も聞かされてない。何か僕の知らないところで起きてるの?まさかまた僕の意見を聞かずに決めてしまうつもりじゃないだろうな。
「ライナス。今からサムのところに行くよ!」
◇◆◇
「ノワール様!勝手に傭兵を増やされては困ります!」
「何を言うブルーノ!お前が集めるのが遅いからではないか!」
ふん。使えない執事だ。王都の何でも屋に声をかけといて良かったわい。続々と吾輩の領地に強者が集まってるようじゃ。がははは。これで万全だろう。さて、どうやって隣国へ話を持っていこうか。ぐふふふ。面白くなってきたわい。
「しかし。汚らしい奴らが多いな」
「なんだと!てめえ喧嘩を売る気か!」
ドカッと吾輩に蹴りを入れて来た。数人が吾輩を取り囲む。な、なんだ?伯爵相手に乱暴をするのか?
「こ、こやつらめ吾輩を誰だと思っておる!」
「けっ。雇い主だって言うから黙ってたが金払いも悪いし文句ばっかり言いやがってふざけんなよ!」
「なんじゃと!まだ戦も始まってないのに金なぞ出せるわけなかろう」
「はあ?王都からこんなド田舎迄来てやったんだぜ。移動費ぐらい出しやがれ!」
「お、おい!ブルーノ。こ奴らに金をめぐんでやれ!」
「なんだとぉ!めぐんでやれとはどういう意味だ!」
「……ノワール様。この資金は当てがあると言われてましたよね?」
「ぐっ。そうじゃったな。しかしあれは軍資金。荒くれ共にやる金では……」
「誰が荒くれものだってぇ?強い者が欲しいって招集かけてたんだろ?」
「そうだそうだ!来てやったんだから金はもらわなきゃな!おう!どうした!早く払えっ!」
「やめとけっ!お前らこそ。強くもないくせに金目当てで押しかけてきたんじゃねえのか?」
奥に座っていた熊のような大男がのっそりと立ち上がった。ぼろぼろの服を着た男は眼光だけは鋭い。
「な、なんだてめえ!」
数人が一斉に飛びかかったが男は素手でやつらを投げ飛ばした。
「おお!凄いな!」
コイツは使えるかもしれない。そうだ、吾輩を守るのはこれぐらい強くなければ。
「くそっ叩き切ってやる!」
飛ばされた一人が逆上し剣を抜き突っ込んできた。それを傍にいたマントを頭からかぶった男が素早く自分の剣で止める。二度三度と打ち合いになって荒くれ者たちは皆倒されてしまった。
「おお。こいつも凄いな!よし!お前達二人を雇おう。集まったほとんどが口先だけの奴らじゃったのか!」
「だから私が申し上げたではありませんか」
「ぐぬぬ。……まあ良いわ。今回はブルーノのいう事が正しかったという事か」
ほかにも数人強そうなものがいた。まあこのくらいでいいだろう。金が減るのももったいないし。そうだ!
「よし!お前達には良いものをやろう!この先戦争になった時に吾輩を守り切った奴には吾輩の娘を褒美にやることにしようぞ!」
「っ!何をっ……!それはお嬢様も承知されてるのですか?」
マントの男が口を出してきた。ふん。口約束に承知も何も必要ないわ。
「吾輩の娘だ。父親のいう事を聞くのがあたりまえだろう」
「……お前というやつは……」
「……よせ」
マントの男を熊のような男が制した。なんだ?何を怒っておるのだ?褒美が足らないというのか?
「ほ、褒美が足りぬというなら金貨も用意しよう!どうじゃ!」
「はっ。ありがたき幸せ。その時は伯爵様をお守りいたします!」
熊のような大男が頭を下げる。ふむふむ。これでいいぞ。
「…………はい。」
マントの男も頭を下げる。どうやらこいつは娘より金貨のほうがいいらしいな。まあ仕方あるまい。
「ところでノワール様。戦になるというなら武器も用意しないといけないのでは?」
ブルーノめ。この吾輩がこの期に及んで用意してないわけないだろうが。
「ふっふっふ。問題ないわ。数年かけてちゃんと用意はしてあるわい」
「それはすごいですね。さすがはノワール様。やはりこの屋敷のどこかに隠されてるのでしょうか?」
「なっ何故知っておるのじゃ!」
「そりゃ、月に一度。こそこそされていたら誰だって何かあるんだろうなと思うでしょうよ」
「ふん。めざといな、お前は。そうじゃ、吾輩だけが知っている隠し場所があるのじゃ」
「なるほど……」
「良ければ俺たちにその武器を見せてもらいたい。ほら、使い方が分からないといざと云う時に困るだろう?」
熊男のいうことももっともだが。
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