2 / 12
一章バディになるまで
1出会いは濃霧の中
しおりを挟む
この世界には獣人、人族、半獣人、そしてエルフが存在している。
中でもエルフは希少な存在とされていた。端麗な容姿から性的な対象とみられ狩られすぎたのが原因である。エルフは気まぐれだが心根が優しいものが多くむやみに戦闘を起こす種族ではなかったからだった。
力が強い獣人。知能がすぐれている人族。そのどちらの要素も受け持つのが半獣人。表面上は共存しているが未だに種族間の争いは絶えないでいる。
俺はエルフとして産まれたが、特殊能力を兼ね備えていた為にこうして警備隊としてこの身を闘いに投じることができた。だが、未だにこの外見だけをみて差別する者もいる。か弱い愛でられるだけの存在と勘違いしている奴らも多い。雄雌に関係なくエルフと身体を繋げたいと性的に迫られることもある。そのため認識阻害魔法がかかっているサイバーサングラスは常用アイテムだ。このアイテムのおかげでサイボーグのような外見となっている。仕事柄、厄介ごとに巻き込まれないためにも、エルフだという事は隠し通したい。
雨上がりのメモリアルシティは濃霧が漂っていた。湿った風が腰まで伸びた俺の銀髪を揺らす。
「ヤバいな。ポルフィードックを使われると厄介だ」
ポルフィードックとは残像現象のことである。濃霧に自分の影を投影し敵をかく乱させる技だ。先週もこれで小隊がひとつ全滅させられた。
「はい隊長。しかもこの場所を選ぶなんて、敵も策略家ですね。自分の目でも見つけにくいです」
隣で目を凝らしているのは鷹族のホークスだ。まだ二年目の新人だが、鳥人の中でもずば抜けて視力が優れている。背中にある大きな羽を羽ばたかせるために胸筋がかなり発達した筋肉質な体形だ。筋肉がつきにくい俺とは大違いである。よって戦闘が起きやすい場面には同行してもらっている。
今俺たちがいるメモリアルシティは旧人間市街地に作られたアトラクションで、ホログラムで過去の人間達の生活や風景が浮かびあがり、疑似体験が出来るテーマパークであった。数日前から各種イベントやテーマパークが爆撃にあう事件が増えている。ここも例外にならず狙われたらしい。
普段なら執事型ホログラムが出迎えてくれてパーク内を案内してくれるのだが、襲撃にあい入口の魔道具は残骸と化していた。 案内係と連携が取れなくなれば、諸所に残った魔道具が人影に反応してホログラムが投影され敵なのか判断しづらくなってしまう。
「雨上がりは霧が出て厄介ですね」
「今は雨季だからな。わざとこの時期を狙ったんだろう」
この北の地域では雨季の後に冬が来る。だから霧が発生しやすいのだ。
「となると、やはり犯人は少数なんでしょうかね?」
「その可能性は高いな。ポルフィードックを使えばいろんな角度に自分の姿を投影できる。一人が三人、四人に見えてもおかしくはない」
突然、パーク内から爆発音が聞こえた。
「行きます!」
ホークスが羽を広げ飛び立つ。俺もすぐに目的地に向かった。俺の特殊能力のひとつは瞬間移動だ。一度でも行った事がある場所なら瞬時にその場所に飛べる。
建物の残骸が燃えさかっている中、人影が見える。
「出てこい! そこにいるのはわかってるんだぞ!」
「うるさいなっ! まずは濃霧を消さなきゃ相手の思うつぼだろうが!」
霧を蒸発させるために火をつけたというのか? いったい誰が?
「出てこないのならこちらから攻撃する」
「待てっ! 俺は敵じゃねえ」
現れたのはボサボサ頭の男。三角耳に尻尾があるところを見るとイヌ科の獣人か? 褐色系の肌に鍛えられた肉体には傷跡が沢山ある。かなりの修羅場をかいくぐってきたのだろう。
「そのままこちらに降りてこい! 抵抗するなら容赦なく撃つ」
手元のリボルバーに照準を合わせようとした時……。
「危ないっ」
声がするのと同時に俺は男に抱きかかえられ、その場を転げ落ちる。すぐ傍で爆風が聞こえた。背後から風圧が押しかかってきた。この男に助けられたのか?
「おいっ大丈夫か?」
「お前……味方なのか?」
「わおっ。めっちゃ美人じゃん」
「はあ? 何を」
サングラスは外れてないはず。こいつ俺の何を見て美人だと。
「口元だよ。色っぽい口元は美人だっていうじゃん」
俺の疑問に答えるように男がへへっと笑った。なんだ笑うと可愛いじゃないか。俺よりも年下なのか?
「残念ながら俺は男だ」
「男でも美人は大歓迎だぜ」
「隊長っ!けがはありませんか!」
ホークスが近づこうとしたとき、敵の影が数体現れた。
「ホークスっ危ない!」
「羽ばたけ! 炎を煽るんだ! 濃霧を消せ!」
男の声に反応しホークスが炎を煽ると霧が去り影が消える。
「あそこだ!」
影の後ろを走り去る人影が見えた。
「逃すか!」
男が突進し炎で容疑者を確保した。どうやら炎属性の魔法が使えるらしい。無駄な動きがない。見かけに反し華麗な動きでかなりの訓練を受けたものだと知ることが出来る。何者なのだ?
「お前もそのまま動くな!」
「へ? いやいやいや、オレはあんたらを手伝ったじゃねえか」
「だからこそ信用できないんだ」
「ふっ、ははははっ! そりゃそうか!」
その後応援が駆けつけたどさくさに紛れて男はいなくなっていた。
結局、今回捕まった容疑者はひとりだった。それも半獣人だ。一般的に半獣人は魔力が少なく身体能力も獣人より劣っていると言われる。だがその分知能指数が高い。犯罪も計画的かつ、知能犯なものが多い。容疑者は濃霧を使い一人で計画していると言い張ったのだった。
中でもエルフは希少な存在とされていた。端麗な容姿から性的な対象とみられ狩られすぎたのが原因である。エルフは気まぐれだが心根が優しいものが多くむやみに戦闘を起こす種族ではなかったからだった。
力が強い獣人。知能がすぐれている人族。そのどちらの要素も受け持つのが半獣人。表面上は共存しているが未だに種族間の争いは絶えないでいる。
俺はエルフとして産まれたが、特殊能力を兼ね備えていた為にこうして警備隊としてこの身を闘いに投じることができた。だが、未だにこの外見だけをみて差別する者もいる。か弱い愛でられるだけの存在と勘違いしている奴らも多い。雄雌に関係なくエルフと身体を繋げたいと性的に迫られることもある。そのため認識阻害魔法がかかっているサイバーサングラスは常用アイテムだ。このアイテムのおかげでサイボーグのような外見となっている。仕事柄、厄介ごとに巻き込まれないためにも、エルフだという事は隠し通したい。
雨上がりのメモリアルシティは濃霧が漂っていた。湿った風が腰まで伸びた俺の銀髪を揺らす。
「ヤバいな。ポルフィードックを使われると厄介だ」
ポルフィードックとは残像現象のことである。濃霧に自分の影を投影し敵をかく乱させる技だ。先週もこれで小隊がひとつ全滅させられた。
「はい隊長。しかもこの場所を選ぶなんて、敵も策略家ですね。自分の目でも見つけにくいです」
隣で目を凝らしているのは鷹族のホークスだ。まだ二年目の新人だが、鳥人の中でもずば抜けて視力が優れている。背中にある大きな羽を羽ばたかせるために胸筋がかなり発達した筋肉質な体形だ。筋肉がつきにくい俺とは大違いである。よって戦闘が起きやすい場面には同行してもらっている。
今俺たちがいるメモリアルシティは旧人間市街地に作られたアトラクションで、ホログラムで過去の人間達の生活や風景が浮かびあがり、疑似体験が出来るテーマパークであった。数日前から各種イベントやテーマパークが爆撃にあう事件が増えている。ここも例外にならず狙われたらしい。
普段なら執事型ホログラムが出迎えてくれてパーク内を案内してくれるのだが、襲撃にあい入口の魔道具は残骸と化していた。 案内係と連携が取れなくなれば、諸所に残った魔道具が人影に反応してホログラムが投影され敵なのか判断しづらくなってしまう。
「雨上がりは霧が出て厄介ですね」
「今は雨季だからな。わざとこの時期を狙ったんだろう」
この北の地域では雨季の後に冬が来る。だから霧が発生しやすいのだ。
「となると、やはり犯人は少数なんでしょうかね?」
「その可能性は高いな。ポルフィードックを使えばいろんな角度に自分の姿を投影できる。一人が三人、四人に見えてもおかしくはない」
突然、パーク内から爆発音が聞こえた。
「行きます!」
ホークスが羽を広げ飛び立つ。俺もすぐに目的地に向かった。俺の特殊能力のひとつは瞬間移動だ。一度でも行った事がある場所なら瞬時にその場所に飛べる。
建物の残骸が燃えさかっている中、人影が見える。
「出てこい! そこにいるのはわかってるんだぞ!」
「うるさいなっ! まずは濃霧を消さなきゃ相手の思うつぼだろうが!」
霧を蒸発させるために火をつけたというのか? いったい誰が?
「出てこないのならこちらから攻撃する」
「待てっ! 俺は敵じゃねえ」
現れたのはボサボサ頭の男。三角耳に尻尾があるところを見るとイヌ科の獣人か? 褐色系の肌に鍛えられた肉体には傷跡が沢山ある。かなりの修羅場をかいくぐってきたのだろう。
「そのままこちらに降りてこい! 抵抗するなら容赦なく撃つ」
手元のリボルバーに照準を合わせようとした時……。
「危ないっ」
声がするのと同時に俺は男に抱きかかえられ、その場を転げ落ちる。すぐ傍で爆風が聞こえた。背後から風圧が押しかかってきた。この男に助けられたのか?
「おいっ大丈夫か?」
「お前……味方なのか?」
「わおっ。めっちゃ美人じゃん」
「はあ? 何を」
サングラスは外れてないはず。こいつ俺の何を見て美人だと。
「口元だよ。色っぽい口元は美人だっていうじゃん」
俺の疑問に答えるように男がへへっと笑った。なんだ笑うと可愛いじゃないか。俺よりも年下なのか?
「残念ながら俺は男だ」
「男でも美人は大歓迎だぜ」
「隊長っ!けがはありませんか!」
ホークスが近づこうとしたとき、敵の影が数体現れた。
「ホークスっ危ない!」
「羽ばたけ! 炎を煽るんだ! 濃霧を消せ!」
男の声に反応しホークスが炎を煽ると霧が去り影が消える。
「あそこだ!」
影の後ろを走り去る人影が見えた。
「逃すか!」
男が突進し炎で容疑者を確保した。どうやら炎属性の魔法が使えるらしい。無駄な動きがない。見かけに反し華麗な動きでかなりの訓練を受けたものだと知ることが出来る。何者なのだ?
「お前もそのまま動くな!」
「へ? いやいやいや、オレはあんたらを手伝ったじゃねえか」
「だからこそ信用できないんだ」
「ふっ、ははははっ! そりゃそうか!」
その後応援が駆けつけたどさくさに紛れて男はいなくなっていた。
結局、今回捕まった容疑者はひとりだった。それも半獣人だ。一般的に半獣人は魔力が少なく身体能力も獣人より劣っていると言われる。だがその分知能指数が高い。犯罪も計画的かつ、知能犯なものが多い。容疑者は濃霧を使い一人で計画していると言い張ったのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界のオークションで落札された俺は男娼となる
mamaマリナ
BL
親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。
異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。
俺の異世界での男娼としてのお話。
※Rは18です
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす
水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。
死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。
贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。
「お前は、俺だけのものだ」
孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。
大好きな獅子様の番になりたい
あまさき
BL
獣人騎士×魔術学院生
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
カナリエ=リュードリアには夢があった。
それは〝王家の獅子〟レオス=シェルリオンの番になること。しかし臆病なカナリエは、自身がレオスの番でないことを知るのが怖くて距離を置いてきた。
そして特別な血を持つリュードリア家の人間であるカナリエは、レオスに番が見つからなかった場合彼の婚約者になることが決まっている。
望まれない婚姻への苦しみ、捨てきれない運命への期待。
「____僕は、貴方の番になれますか?」
臆病な魔術師と番を手に入れたい騎士の、すれ違いラブコメディ
※第1章完結しました
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
長編です。お付き合いくださると嬉しいです。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる