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一章バディになるまで
3朝から電撃
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「これは!予告状が届いたのですか?」
再び団長室へ行くと眉間にしわを寄せた団長から封筒を手渡された。俺たちが退室したのと入れ替わりにメールボーイが配達してきたのだという。
「そうだ。それも王国からの任命で私が主催するフェスティバルを狙うというのだ。この私の警備隊に挑戦する気らしい」
団長のたてがみが大きく揺れる。機嫌が悪い証拠だ。獅子族の獣圧感から周りにいた力の弱い獣人達は気分が悪くなりバタバタと倒れていく。
「団長、お気持ちはわかります。ですがもう少し気を静めていただけませんか?」
「おっといけない。すまないね。感情が高ぶると無意識に力が出てしまう。」
一週間後に行われるフェスティバルは収穫祭といって、冬眠に入る前の獣人達が多く集まるイベントだ。ここでそれぞれに冬眠用の食料などを買い集めるのだという。毎年各部隊が主催して開催されている各地域の名物でもある。予告状はそのフェスティバル会場を襲撃するというものだった。
「団長、念の為当日のスピーチはお止めになられた方がいいのでは?」
「いや、こういう時だからこそ私の姿は見せて置かないと」
「オレは予告状なんて、なぁんか裏がある気がします!」
「そうですね。俺も陽動されてる気もします」
「ふふふ。やっぱり魔法省の目利きはさすがだね。君たちは良い感じに意見も会うみたいだ」
「へへへ。ありがとうございます!」
「…………そういうわけでは」
団長室を後にして俺はウォルフに向き合った。
「とにかく会ったばかりで俺はバディなんて受け入れられない!」
「オレはここに移動になる時に言われてたから心づもりはしてきたんだが、エアは前もって知らされてなかったんだな?」
「そうだ。俺は一人でも戦える。今更バディなど……」
「よし! じゃあオレは相棒にしてもらえるよう毎日あんたを口説くことにしたぜ!」
「は……はぁあ? おまえな、何をいって」
「だって、こんなに別嬪でウブなあんたを手放すほどオレは枯れちゃいねえもん。今日から同室だし、朝から晩まで口説き倒すよ」
「ど、同室だと? 部屋も同じだというのか!」
「ああ。部隊に来る前に寮に荷物を運んどいた」
「聞いてないぞっ。だいたいどうやって部屋にはいったんだ!」
「バディとして組むなら、最初は信頼関係を築かないといけないからって団長が開錠キーをくれたぜ」
「……嘘だろ?」
俺はその場に突っ伏した。団長は以前から優先順位を考えて行動するタイプだ。俺に何も知らされず鍵を渡すくらいコイツは信頼されているということなのか? それほど期待されているということか。長年ここで働いている俺よりもコイツはスゴイ奴なのか?
「お前っ。ムカつく!」
「へ? オレまだ何も手を出してねえぜ?」
「うるさいっ。今日は残業だ!」
「ええ~。オレ初日なんだぜ。手加減してよぉ」
◇◆◇
「イダダッ! ギブッ! ギブアップ! 悪いっ俺が悪かった~!」
眩しい光と共にビリバリバリッという衝撃音が部屋中に響く。
「ばっ! ばかかお前! 寝起きを襲うなどとっ!」
「ち、違う、起こそうとしただけだ! 本当だって!」
朝からウォルフが大声で騒いだのには訳がある。いきなり雷撃を浴びたからであった。俺の特殊能力の二つ目。雷属性の技をまともにくらったのだ。
あの後、見回りや報告書などをまとめて帰宅したのは深夜だった。俺の部屋はもともとバディ用で充分なスペースはある。獣人でも対応できるように天井も高く、部屋の両脇に備え付けのベットが二つあった。しかししばらく独り住まいだったために一方のベットは物置になっていた。
「へへ。これってひとつのベットに二人で寝るってことかな?」
「直ぐに片付ける! お前はそっち側を使え!」
「はいはい。わかってるって。こう見えてもオレは紳士なんだぜ。口説くって決めたんだ。夜這いはしねえ。強姦もしねえ。それだけはわかってくれ」
「よ、よよよ、夜這いに……ご、強姦だとっ?」
「いや、だからしねぇって」
そこからウォルフのベットからはすぐに寝息が聞こえてきたが、俺は眼が冴えてなかなか眠れなかった。もとより、エルフはそれほど精力が強くない。特に俺は見た目にコンプレックスがあったために身体を鍛える事や技を磨くことに重点を置いていて閨事の経験はない。
だから目覚めてすぐ至近距離にあったウォルフの顔を見て咄嗟に反撃してしまった。
「凄いなあ。エアは電撃も使えるのか」
「そうだ。だから寝起きは近づくな。寝ぼけて黒焦げにしてしまうかもしれない」
「それを早く言ってくれよ。まあオレはエアに身も心もシビレちまってるけどな」
「はん。つまらない冗談はよせ」
「冗談じゃねえぜ」
まともに正面からウォルフの顔を見たのは初めてだった。野性的な顔立ちに長すぎる前髪から見える瞳は金色だ。その目はじっと俺を見つめている。無駄に心臓の音が大きくなる。なんでこんなにドキドキするのだろう。
「ふいに真顔になるな! 心臓に悪いだろ! 俺は恋愛経験が少ないんだ。からかうなんて悪趣味すぎるぞ」
「……マジか。誰かとつきあったことはあるのか?」
「うるさい。他にやることがありすぎて、そんな暇などなかった」
もちろん、性的な意味で誘われたこともあるが嫌悪感をめいっぱい表すと皆、自ずと俺から離れて行った。いやきっと放電していたのだと思う。
「……てことは、身体の関係とかも……」
「……ない。……悪いか!」
「悪くないっ! 最高だぜ! 堪んねえ。こんなに綺麗で純情なのに処女童貞なのか? 朝から晩まで一緒に居てぐっちゃぐっちゃにしてやりてぇ!」
「なっな、な、なにを言うか~っ!」
バリバリバリッ!
再び団長室へ行くと眉間にしわを寄せた団長から封筒を手渡された。俺たちが退室したのと入れ替わりにメールボーイが配達してきたのだという。
「そうだ。それも王国からの任命で私が主催するフェスティバルを狙うというのだ。この私の警備隊に挑戦する気らしい」
団長のたてがみが大きく揺れる。機嫌が悪い証拠だ。獅子族の獣圧感から周りにいた力の弱い獣人達は気分が悪くなりバタバタと倒れていく。
「団長、お気持ちはわかります。ですがもう少し気を静めていただけませんか?」
「おっといけない。すまないね。感情が高ぶると無意識に力が出てしまう。」
一週間後に行われるフェスティバルは収穫祭といって、冬眠に入る前の獣人達が多く集まるイベントだ。ここでそれぞれに冬眠用の食料などを買い集めるのだという。毎年各部隊が主催して開催されている各地域の名物でもある。予告状はそのフェスティバル会場を襲撃するというものだった。
「団長、念の為当日のスピーチはお止めになられた方がいいのでは?」
「いや、こういう時だからこそ私の姿は見せて置かないと」
「オレは予告状なんて、なぁんか裏がある気がします!」
「そうですね。俺も陽動されてる気もします」
「ふふふ。やっぱり魔法省の目利きはさすがだね。君たちは良い感じに意見も会うみたいだ」
「へへへ。ありがとうございます!」
「…………そういうわけでは」
団長室を後にして俺はウォルフに向き合った。
「とにかく会ったばかりで俺はバディなんて受け入れられない!」
「オレはここに移動になる時に言われてたから心づもりはしてきたんだが、エアは前もって知らされてなかったんだな?」
「そうだ。俺は一人でも戦える。今更バディなど……」
「よし! じゃあオレは相棒にしてもらえるよう毎日あんたを口説くことにしたぜ!」
「は……はぁあ? おまえな、何をいって」
「だって、こんなに別嬪でウブなあんたを手放すほどオレは枯れちゃいねえもん。今日から同室だし、朝から晩まで口説き倒すよ」
「ど、同室だと? 部屋も同じだというのか!」
「ああ。部隊に来る前に寮に荷物を運んどいた」
「聞いてないぞっ。だいたいどうやって部屋にはいったんだ!」
「バディとして組むなら、最初は信頼関係を築かないといけないからって団長が開錠キーをくれたぜ」
「……嘘だろ?」
俺はその場に突っ伏した。団長は以前から優先順位を考えて行動するタイプだ。俺に何も知らされず鍵を渡すくらいコイツは信頼されているということなのか? それほど期待されているということか。長年ここで働いている俺よりもコイツはスゴイ奴なのか?
「お前っ。ムカつく!」
「へ? オレまだ何も手を出してねえぜ?」
「うるさいっ。今日は残業だ!」
「ええ~。オレ初日なんだぜ。手加減してよぉ」
◇◆◇
「イダダッ! ギブッ! ギブアップ! 悪いっ俺が悪かった~!」
眩しい光と共にビリバリバリッという衝撃音が部屋中に響く。
「ばっ! ばかかお前! 寝起きを襲うなどとっ!」
「ち、違う、起こそうとしただけだ! 本当だって!」
朝からウォルフが大声で騒いだのには訳がある。いきなり雷撃を浴びたからであった。俺の特殊能力の二つ目。雷属性の技をまともにくらったのだ。
あの後、見回りや報告書などをまとめて帰宅したのは深夜だった。俺の部屋はもともとバディ用で充分なスペースはある。獣人でも対応できるように天井も高く、部屋の両脇に備え付けのベットが二つあった。しかししばらく独り住まいだったために一方のベットは物置になっていた。
「へへ。これってひとつのベットに二人で寝るってことかな?」
「直ぐに片付ける! お前はそっち側を使え!」
「はいはい。わかってるって。こう見えてもオレは紳士なんだぜ。口説くって決めたんだ。夜這いはしねえ。強姦もしねえ。それだけはわかってくれ」
「よ、よよよ、夜這いに……ご、強姦だとっ?」
「いや、だからしねぇって」
そこからウォルフのベットからはすぐに寝息が聞こえてきたが、俺は眼が冴えてなかなか眠れなかった。もとより、エルフはそれほど精力が強くない。特に俺は見た目にコンプレックスがあったために身体を鍛える事や技を磨くことに重点を置いていて閨事の経験はない。
だから目覚めてすぐ至近距離にあったウォルフの顔を見て咄嗟に反撃してしまった。
「凄いなあ。エアは電撃も使えるのか」
「そうだ。だから寝起きは近づくな。寝ぼけて黒焦げにしてしまうかもしれない」
「それを早く言ってくれよ。まあオレはエアに身も心もシビレちまってるけどな」
「はん。つまらない冗談はよせ」
「冗談じゃねえぜ」
まともに正面からウォルフの顔を見たのは初めてだった。野性的な顔立ちに長すぎる前髪から見える瞳は金色だ。その目はじっと俺を見つめている。無駄に心臓の音が大きくなる。なんでこんなにドキドキするのだろう。
「ふいに真顔になるな! 心臓に悪いだろ! 俺は恋愛経験が少ないんだ。からかうなんて悪趣味すぎるぞ」
「……マジか。誰かとつきあったことはあるのか?」
「うるさい。他にやることがありすぎて、そんな暇などなかった」
もちろん、性的な意味で誘われたこともあるが嫌悪感をめいっぱい表すと皆、自ずと俺から離れて行った。いやきっと放電していたのだと思う。
「……てことは、身体の関係とかも……」
「……ない。……悪いか!」
「悪くないっ! 最高だぜ! 堪んねえ。こんなに綺麗で純情なのに処女童貞なのか? 朝から晩まで一緒に居てぐっちゃぐっちゃにしてやりてぇ!」
「なっな、な、なにを言うか~っ!」
バリバリバリッ!
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