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君に逢いたくて2
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「まさか。護衛が新しくなったのは……」
「そうです。よくおわかりですね。奴を護衛に引き込んだのはこの私です、騎士団長が推薦したい人員がいると聞き、もしやと思い調べさせていただきました」
「お前という奴は……今度はアッシュを利用しようというのか」
闇の力があふれそうになる。アッシュだけは自由でいて欲しいと願っていたのに。
「おっと。だめですよ。すぐそばまで護衛が来ているのです。今のその姿を見せられないでしょう?」
怒りで握った拳が震えだした。
「そろそろ限界ですね。では地下牢にお連れしましょう。始末して欲しい人物がおりますのでね」
「始末して……欲しい人物とは?」
「騎士団長ですよ。ここに来る前に地下に呼び出しておきました。ガブリエラの様子からきっと貴方が怒りだしたと思いましたのでね」
なんてことだ。団長はアッシュが師匠と慕っている人物ではないか。それにこのまま続けていてはアッシュまで宰相の毒牙にかかる事になる。そんなことは絶対に許せない!
「団長は日頃から口うるさくてね。そろそろいなくなってもらおうかと……」
いつものように饒舌に話す宰相を一瞬で引き裂いた。こいつは決してしてはいけない事をしたのだ。私の唯一の安らぎを。唯一の人物を。この権力と欲望に満ちた蟻地獄に引きずり込もうとした。絶対に許してたまるものか!
……ああ。なんだ簡単な事だったのか。私がこのまま人に戻らなければよいのだ。戻ってしまうから他人を不幸にしてしまうのだ。抗うことなくこの闇の力に飲み込まれればいい。
「宰相殿? 何か大きな物音がしましたが。皇太子殿下はご無事ですか? 扉を開けてもよろしいでしょうか?」
扉の向こうで心配げなアッシュの声が聞こえた。
◇◆◇◇◆◇
「魔王が復活したぞ!」
「皇太子殿下と宰相が魔王にやられたそうだよ」
「勇者様に討伐に出てもらおう!」
「そうだ! 勇者様バンザイ!」
あの夜、俺が扉をあけると部屋中血の海で宰相と切り裂かれたベルの衣装のみが残されていた。驚愕のあまり俺は声もだせなかった。やがて皇太子妃が半狂乱でやってきて魔王の仕業だと言い出した。代々この国には魔王の血を受け継ぐものが現れるという言い伝えがある。確かにあの夜。窓辺から城の外へと血の跡が続いていた。
だが俺をベルの部屋の前に控えさせた宰相のニヤついた顔が忘れられない。宰相が何かしたのではないのか? 本当に魔王が現れたのか? 何故ベルを狙ったのだ? 王族を狙うなら何故国王は無事なのか? 何故宰相も狙われた? 宰相は反撃にあったのではないか? 混乱する俺に皇太子妃から命令が下った。
「アッシュ護衛騎士。貴方には勇者となって魔王の討伐に出てもらいます。我が最愛のヴェルメリオの弔いのために。貴方は彼のお気に入りだったはず、嫌とは言わせませんよ」
何をこいつは言っているのだ? 勇者ってなんだ?
「お待ちください。皇太子妃にそのような権限がおありなのですか」
師匠が俺の前に立ち皇太子妃を睨みつけた。
「それがあるのよ! だって私のお腹にはヴェルメリオの子がいるんですもの!」
勝ち誇ったように見下す皇太子妃に誰もが唖然とした。なぜなら毎夜ベルの部屋から追い出されるガブリエラの姿を城中の者が見知っていたからだ。どう考えても腹の子がベルの子だとは考えにくい。だが、誰にも反論するすべはなかった。相手は皇太子妃だからだ。
ほどなく心労がたたったのか国王が崩御した。皇太子妃であるガブリエラはほくそ笑む。
「私の子は次期国王よ! つまり私が実質この国の頂点となるのよ!」
嘘で塗り固めた地位や権力に固執する人間のなんと醜い事か。切り刻んでやろうかと剣に手をかけたが師匠に止められてしまう。くそっ。やっとベルをこの手で抱きしめられたのに。もう二度と会えないなんて耐えられない。うそだ。そんな事があるものか!
荒れ狂う俺に師匠が魔王討伐を引き受けろと言う。師匠も団長を続ける気はないと城を出て行くらしい。そうだ、もうこんな国に興味はない。俺のすべてはベルだった。そのベルを失った今。ベルの仇だという魔王を倒す。それだけが自分の使命のように思えた。
難航すると思っていた魔王の手掛かりは案外すぐに手に入った。あちこちで魔物を見たという話しをきくようになったからだ。それはまるで俺のために軌跡を残してるのではないかと思う程に。
どうやら魔王復活に伴って魔物の数も増えてきているようだ。俺の噂を聞いた強者や聖者達が仲間になるとついてきた。俺達はダンジョンの中の魔物討伐をしながらやっとの思いで最下層の魔王の元へとたどり着いた。魔王は仮面をつけ、禍々しい空気を纏っている。
「魔王め! ベルの仇だ!」
俺が剣を向けると魔王が攻撃を繰り出してきた。だがどれも俺には当たらない。なんだ? 攻撃が下手なのか? いや、他の仲間達には当たっている。次々と仲間たちが倒れる中、とうとう俺と魔王だけになってしまった。
「…………」
「…………」
「なあ。お前ベルだろ?」
「っ! ……」
魔王が動揺した隙に間合いをつめて仮面を剣で割る。思った通り仮面の下には会いたかったベルがいた。しかも真っ赤な瞳で俺を見つめている。
「やっぱり!」
「何故わかったのだ?」
「俺がお前をわからないわけねえじゃねえか!」
ベルは困ったような泣き笑いの顔をする。違う、俺が見たいのはそんな顔じゃねえ。
「アッシュは勇者になったのだろ? ならば早く討伐してくれ」
「イヤだ! 俺に出来るわけがねえだろ!」
「そんなっ。私はお前に倒されたいのに」
「何言ってんだよ!」
「バカアッシュ!」
「おいっ! こら待て!」
魔王は逃げるように闇に消えてしまった。
「くそ。……はっ。はは。生きてた。よかった。生きててくれていた」
体中の力が抜けた。幻じゃねえ! よし、こうなったら追いかけっこだ。あいつが他の誰かに討伐される前に俺がこの手で捕まえてやる!
仲間達を安全な場所に運ぶと、やはりひとりの方が動きやすいからと共に行動するのを断った。ベルは俺以外には手加減をしないのがわかったからだ。
それから俺とベルの鬼ごっこが始まった。ベルが通った場所には魔物が湧く。おそらく強すぎる魔力が関係しているのだろう。それを目印に魔物が現れた場所を特定し距離をつめていく。コツが掴めるとダンジョンが出来上がる前に見つけられるようになってきた。だが、あと少しのところでいつも逃げられてしまう。
そんなある日のこと。見覚えのある街にたどり着いた。そうだ、ここは孤児院があった街だ。懐かしさでいっぱいになる。今もあの場所に孤児院はあるのだろうか。自然と足が向かった先に人影が見えた。
「見つけたぞ! 魔王め!」
「くっ。また見つかったか!」
するりと俺の剣をかわし闇に逃げ込もうとする瞬間、逃がさずマントの端を掴んだ。
「なんで逃げまくるんだよ!」
「……だってお前は勇者じゃないか!」
別に俺は好きで勇者になったわけではない。
「魔王と勇者は敵じゃないか」
「……勇者って呼ばれてるだけだ。俺の名前は知っているだろう?」
「知っている。アッシュ……」
「ベル。逃げないでくれ。俺はお前と一緒に居たいんだ」
「何を言ってるんだ。お前は勇者なのだから早く魔王を退治して英雄になってくれ」
「嫌だ! 今日限り勇者はやめだ。俺にベルは倒せない」
「そんな……どうして?」
「俺はお前が好きなんだよ」
あ~こんなタイミングでいうつもりじゃなかったんだけどな。ベルが固まっている。よし、今だ! 俺はマントをたぐり寄せベルの身体を抱きしめた。
「やっと捕まえた!」
「……アッシュ。私は魔王と呼ばれてるんだぞ」
ベルの声が震えている。俺の腕の中で震えるベル。ちっとも昔と変わっちゃいねえ。
「魔王だろうがなんだろうが好きなんだから仕方ないだろ」
「この瞳は血の色で怖いだろう?」
「涙でうるうるしてる瞳のどこが怖いんだよ」
「み、耳も尖ってるし」
「可愛いじゃねえか」
「髪も黒くて闇色だし」
「前からじゃねえか」
「そ、そうだけど……私の手は血で……」
「あのさ。俺が戦争で武勲を手に入れたのを知っているんだろ? お前よりも俺の手の方が血で汚れているんだぜ」
「そうだったのか。いやそうだとしても……」
「ああもう。ちょっと黙ろうか」
俺はその艶のある紅い唇に口づけをした。
「ん……ふ……」
色っぽい声。可愛いぜ。このまま離れたくない。どうしたらベルと一緒に居られるだろうか。
「そうだ! 俺をお前の仲間にしてくれ」
「へ……? 私の仲間?」
「ああ。俺を魔王の仲間にしろ!そうしたらずっと一緒に居られるだろ?」
「アッシュ……お前本気で言っているのか?」
「ああ。どんなに苦しくても俺は耐えて見せるから」
「本当に? もう人間に戻れなくてもいいのか?」
「別に人に未練なんてないよ。俺にはベルしか必要じゃねえし」
ベルの目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「アッシュ。お前ってやつは」
「仲間にする方法があるんだろ?」
「うん。ある。せっかく私の手から逃がしてあげようと思ったのに。自分からこの手に飛び込んでくるなんて……もう離せなくなるじゃないか」
「ベルこそもう逃げないでくれ。俺はもうお前を離したくはないんだ」
「本当はずっとアッシュの事を想っていたんだ」
「俺も……ベルの事だけ想い続けていた」
ベルががっしりと俺を抱きしめ返してきた。思ったよりも力が強い。ベルが何かを唱えると目の前の景色が暗転する。真っ暗な闇の中に入ったかと思うと次の瞬間には大きなベットのある部屋へと移動していた。瞬間移動か?
「ここは私の避難場所だ。邪魔が入る事はない」
「ベルの隠れ家なのか? お前こんなことが出来るなんて凄いんだな」
「すぐにアッシュも使えるようになるさ」
ベルの手がせわしなく俺の服を脱がせにかかる。
「服を脱がないといけないのか?」
「ああ。私の魔力を分け与えるには私と交わらなくてはいけないから」
「そうなんだ。……え? 交わるって?」
それってつまり。俺とベルで? ドキドキして興奮してきた。夢の中で何度ベルと繋がったかわかりゃしねえが。それはあくまで妄想のなかでだ。嬉しい。だが緊張する。俺がベルを抱けるなんて……。
一糸まとわぬ姿になったベルは均整のとれた身体だった。俺よりも筋肉質かもしれねえ。
「アッシュ……」
耳元で囁かれズクンと下半身が反応するが、あっという間にベットの上に押し倒される。
「は?」
あれ? 俺が押し倒されちまった? ベルが愛おしそうな目で見下ろしてくる。ベルの手が俺の股間を弄りだした。
「ベル……やけに手慣れてないか?」
「王族だった故に閨事は学んでいる」
そうなのか? ちくしょう。俺は童貞なのに。
「じゃあ、お前は俺以外とこういう事をしたことがあるのか!」
「アッシュ。妬いてくれてるのか? 大丈夫だよ。座学だったから。実戦は気持ち悪くてヤッてないよ」
「そうか。ならいい」
「ああ、アッシュが可愛すぎてどうしよう」
ベルが嬉しそうに俺の身体を撫でまわす。紅い目がギラギラして食べられそうな感覚になる。
「へ? あれ? いや、待て待てまて」
「もう待てないし、持つつもりもない」
うう。髪をかきあげながら言う台詞が似合ってるじゃねえか。悔しいが俺よりかっこいいぜ。ベルめ、イケメンオーラ出しまくりやがって。
「アッシュ。愛してる」
ベルの手が俺の形を確かめる様に触りだす。
「んぁ。ちょっと……まっ」
すでに俺のムスコはビンビンになっちまってる。だが、主導権を取られてばかりは性に合わない。ベルの手を掴むと指を絡めなだめる様に囁く。
「俺がお前にしてやりたいんだ」
紅い瞳が揺れている。ゆっくりと俺は起き上がって身体を反転させた。
「綺麗な肌だな。絶対に傷つけたりはしないから俺に身をゆだねてくれるか?」
「アッシュ……」
「ベル。お前の全部が欲しい」
ベルの瞳が弧を描いた。口づけを交わすとベルの身体が反応しだす。
「……甘い」
「ああ。甘いな」
「私にとってアッシュの体液は媚薬になるのか……」
「俺も甘く感じるぞ。媚薬なんかなくても俺はずっとお前に発情しまくってるからな」
心が通じてるからだと思う。互いに触れるだけで胸が高まる。
「アッシュ。もっと触ってくれ」
「煽らないでくれ」
充分に慣らさないといけないと慎重に後蕾へ指を進める。
「ぁ……」
入り口はまだ狭い。俺はベルの雄も愛撫することにした。
「んっ……アッシュ……っ」
舌で転がすように舐め上げながら指も同時に動かしていく。
「ぁっ……っ……んっ」
ベルの喘ぎ声に気をよくした俺は挿入する指の数を増やし舐め上げる速度も早める。
「ぁあっ……アッシュ……も……出るっ」
「んっ……」
喉の奥に熱いものが注がれた。ねっとりと流れ込んでくる。濃厚で苦いような甘いような熱くて重くて凄く気持ちのイイものに身体が侵されていく。
「……飲んだよね? ふふ」
ベルが妖艶に笑う。艶っぽくて更に欲情する。
「もぉ……挿れて……」
かすれた声。赤い舌が唇を舐める仕草にくらくらする。もう限界だ。
「ベル!」
ズン! と突き入れると同時に放ってしまった。脳天まで快感が突き抜ける。
「っ! 嬉しい……私の中でイッてくれて」
「すまねえ。俺、初めてで……早すぎたよな?」
「大丈夫さ。これで終わりではないのだろう?」
「だからっ。煽るなってば」
「もっとどろどろになるまで抱いてくれ」
なんだそれ! めっちゃエロい。ベルってベットの中ではどエロになるのか?
「やめろって言ってもとまらねえぞ!」
ちろちろと見える赤い舌に吸い付き甘噛みし歯列をなぞるとベルも舌を絡め応戦してきた。互いにくちづけに夢中になるころには俺のムスコは復活していた。
「ベル。動くぞ」
「……ん……」
ベルの中はあたたかくて吸い付くように俺を包み込み締めつける。ぞくぞくと腰から這い上がってくる快感に俺の腰の動きが速くなっていく。
「んぁ……アッシュ。私の……離さない……ぁあ! あいして……る……ぁんっ」
ズルい。それは俺が言おうと思ってたのに。快感が体中を駆け巡って言葉に出来ない。
「……んぁっ! っ...ぁあ……イイっ」
「イイ? ココか?」
俺は大きく腰をグラインドし浅く同じ場所を突き始めた。
「ひっ! んぁあ! イイっ! ぁあそこ!」
「ここだな! ん! どうだ? ほら……」
ぐちょぐちょと濡れた音と快感で我を忘れて突きまくった。
「っ! んっ……ぁっ……もっと……」
「ベルっ……愛してるっ……くっ」
二度目の絶頂は快感と一緒に甘く苦しいような切ないような感情の渦が細胞の中に浸み込んできた。身体が浸食されていく。
「はっ……べ……ル……うぐっ」
ベルが何かをずっと唱えている。呪文のようだ。その間も俺たちは繋がったままだ。
「耐えてくれ……愛している」
「気に……するな……これぐら……い」
気付けば魔法陣の中にいた。心配げなベルに笑いかけてやるとまた泣きそうな顔をする。
「もっと交われば……楽になるから」
「はっはは……俺が絶倫だってバレちまうかな?」
「……何度でも抱いて」
「ベル。俺たちはずっと一緒だ」
◇◆◇
アッシュが自分から仲間になると言い出すとは思ってもみなかった。本当は機会があれば眷属にしてしまおうかと思ったことはあった。だが、それでは同等の立場ではない。主従になってしまう。人間から魔族になるためには無理やりではなく自分から望まないといけなかった。そして我が血と体液で交わり、快楽に溺れないといけない。リスクが高すぎると思い自分からは言えなかった。それなのにアッシュ自身が言い出してくれるとは。
「さすがだなアッシュは」
追いかけっこは楽しかった。昔アッシュと一緒にした鬼ごっこのような感覚で私はアッシュが追いかけてくれば姿をくらまし、捕まえようとすれば風のように逃げた。
いい加減もう諦めてくれてもいいのに。私の事なぞ忘れてくれてもいいのにと思いながらも私の事を想い追いかけてくれるのを待ち望んでいた。
側で眠るアッシュに口付けをすると眉間に皺を寄せてみじろぐ。目覚めが近いらしい。
「ん……」
「アッシュ。目が覚めたか? 気分はどうだ」
「少し頭痛がする」
「そうか、まだ体が馴染んでないせいだろう」
アッシュは灰色の髪が腰まで伸びてしまった。少しチカラを注ぎすぎたかもしれない。
「成功したのか?」
私と同じ尖った耳に紅くなった瞳。
「ああ。これで私達は同じ家族になれる」
「そうか! 良かった。ベル!」
アッシュに抱きしめられ嬉しさが込み上げる。
「愛してる」
「これからどうしたい?」
「そうだな。しばらくは二人だけで暮らしたい」
「ふむ。人に邪魔されない場所にでも城を建てようか」
「ははは。城か。ベルと二人なら小さな家でもかまわないぜ」
「そういえば元団長殿が隣国で孤児院を開いたそうだぞ」
「え?師匠が?」
「ああ。陰ながらだが援助していこうかと思う」
「本当なのか? ありがとうベル! くくく。魔王が孤児院の後ろ盾だなんてお前は本当に優しいやつだなぁ」
「あの人間はアッシュに会わせてくれた恩人だ。これくらい当たり前だろう」
アッシュの気を引きそうな話題の一つや二つ。作っておかないとな。
私は優しくなんかない。儀式には行為だけでなく多くの魂も必要だった。女を抱いたこともない私が子供などつくれるはずもないだろうに。私の子だと虚言を吐く妃や腐った高官ども、その他もろもろすべてを供物にした。この国はほぼ全滅したと言っても過言ではない。ここには懐かしさからではない、滅ぼすために立ち寄ったのだ。
「ふふふ。では二人の棲み処を見つけに行こうか?」
「ああ。お前と一緒ならどこでもいいぜ」
「ふふふ」
「ははは」
笑い声だけを残して闇に溶けるように二人の姿は消えて行った。
「そうです。よくおわかりですね。奴を護衛に引き込んだのはこの私です、騎士団長が推薦したい人員がいると聞き、もしやと思い調べさせていただきました」
「お前という奴は……今度はアッシュを利用しようというのか」
闇の力があふれそうになる。アッシュだけは自由でいて欲しいと願っていたのに。
「おっと。だめですよ。すぐそばまで護衛が来ているのです。今のその姿を見せられないでしょう?」
怒りで握った拳が震えだした。
「そろそろ限界ですね。では地下牢にお連れしましょう。始末して欲しい人物がおりますのでね」
「始末して……欲しい人物とは?」
「騎士団長ですよ。ここに来る前に地下に呼び出しておきました。ガブリエラの様子からきっと貴方が怒りだしたと思いましたのでね」
なんてことだ。団長はアッシュが師匠と慕っている人物ではないか。それにこのまま続けていてはアッシュまで宰相の毒牙にかかる事になる。そんなことは絶対に許せない!
「団長は日頃から口うるさくてね。そろそろいなくなってもらおうかと……」
いつものように饒舌に話す宰相を一瞬で引き裂いた。こいつは決してしてはいけない事をしたのだ。私の唯一の安らぎを。唯一の人物を。この権力と欲望に満ちた蟻地獄に引きずり込もうとした。絶対に許してたまるものか!
……ああ。なんだ簡単な事だったのか。私がこのまま人に戻らなければよいのだ。戻ってしまうから他人を不幸にしてしまうのだ。抗うことなくこの闇の力に飲み込まれればいい。
「宰相殿? 何か大きな物音がしましたが。皇太子殿下はご無事ですか? 扉を開けてもよろしいでしょうか?」
扉の向こうで心配げなアッシュの声が聞こえた。
◇◆◇◇◆◇
「魔王が復活したぞ!」
「皇太子殿下と宰相が魔王にやられたそうだよ」
「勇者様に討伐に出てもらおう!」
「そうだ! 勇者様バンザイ!」
あの夜、俺が扉をあけると部屋中血の海で宰相と切り裂かれたベルの衣装のみが残されていた。驚愕のあまり俺は声もだせなかった。やがて皇太子妃が半狂乱でやってきて魔王の仕業だと言い出した。代々この国には魔王の血を受け継ぐものが現れるという言い伝えがある。確かにあの夜。窓辺から城の外へと血の跡が続いていた。
だが俺をベルの部屋の前に控えさせた宰相のニヤついた顔が忘れられない。宰相が何かしたのではないのか? 本当に魔王が現れたのか? 何故ベルを狙ったのだ? 王族を狙うなら何故国王は無事なのか? 何故宰相も狙われた? 宰相は反撃にあったのではないか? 混乱する俺に皇太子妃から命令が下った。
「アッシュ護衛騎士。貴方には勇者となって魔王の討伐に出てもらいます。我が最愛のヴェルメリオの弔いのために。貴方は彼のお気に入りだったはず、嫌とは言わせませんよ」
何をこいつは言っているのだ? 勇者ってなんだ?
「お待ちください。皇太子妃にそのような権限がおありなのですか」
師匠が俺の前に立ち皇太子妃を睨みつけた。
「それがあるのよ! だって私のお腹にはヴェルメリオの子がいるんですもの!」
勝ち誇ったように見下す皇太子妃に誰もが唖然とした。なぜなら毎夜ベルの部屋から追い出されるガブリエラの姿を城中の者が見知っていたからだ。どう考えても腹の子がベルの子だとは考えにくい。だが、誰にも反論するすべはなかった。相手は皇太子妃だからだ。
ほどなく心労がたたったのか国王が崩御した。皇太子妃であるガブリエラはほくそ笑む。
「私の子は次期国王よ! つまり私が実質この国の頂点となるのよ!」
嘘で塗り固めた地位や権力に固執する人間のなんと醜い事か。切り刻んでやろうかと剣に手をかけたが師匠に止められてしまう。くそっ。やっとベルをこの手で抱きしめられたのに。もう二度と会えないなんて耐えられない。うそだ。そんな事があるものか!
荒れ狂う俺に師匠が魔王討伐を引き受けろと言う。師匠も団長を続ける気はないと城を出て行くらしい。そうだ、もうこんな国に興味はない。俺のすべてはベルだった。そのベルを失った今。ベルの仇だという魔王を倒す。それだけが自分の使命のように思えた。
難航すると思っていた魔王の手掛かりは案外すぐに手に入った。あちこちで魔物を見たという話しをきくようになったからだ。それはまるで俺のために軌跡を残してるのではないかと思う程に。
どうやら魔王復活に伴って魔物の数も増えてきているようだ。俺の噂を聞いた強者や聖者達が仲間になるとついてきた。俺達はダンジョンの中の魔物討伐をしながらやっとの思いで最下層の魔王の元へとたどり着いた。魔王は仮面をつけ、禍々しい空気を纏っている。
「魔王め! ベルの仇だ!」
俺が剣を向けると魔王が攻撃を繰り出してきた。だがどれも俺には当たらない。なんだ? 攻撃が下手なのか? いや、他の仲間達には当たっている。次々と仲間たちが倒れる中、とうとう俺と魔王だけになってしまった。
「…………」
「…………」
「なあ。お前ベルだろ?」
「っ! ……」
魔王が動揺した隙に間合いをつめて仮面を剣で割る。思った通り仮面の下には会いたかったベルがいた。しかも真っ赤な瞳で俺を見つめている。
「やっぱり!」
「何故わかったのだ?」
「俺がお前をわからないわけねえじゃねえか!」
ベルは困ったような泣き笑いの顔をする。違う、俺が見たいのはそんな顔じゃねえ。
「アッシュは勇者になったのだろ? ならば早く討伐してくれ」
「イヤだ! 俺に出来るわけがねえだろ!」
「そんなっ。私はお前に倒されたいのに」
「何言ってんだよ!」
「バカアッシュ!」
「おいっ! こら待て!」
魔王は逃げるように闇に消えてしまった。
「くそ。……はっ。はは。生きてた。よかった。生きててくれていた」
体中の力が抜けた。幻じゃねえ! よし、こうなったら追いかけっこだ。あいつが他の誰かに討伐される前に俺がこの手で捕まえてやる!
仲間達を安全な場所に運ぶと、やはりひとりの方が動きやすいからと共に行動するのを断った。ベルは俺以外には手加減をしないのがわかったからだ。
それから俺とベルの鬼ごっこが始まった。ベルが通った場所には魔物が湧く。おそらく強すぎる魔力が関係しているのだろう。それを目印に魔物が現れた場所を特定し距離をつめていく。コツが掴めるとダンジョンが出来上がる前に見つけられるようになってきた。だが、あと少しのところでいつも逃げられてしまう。
そんなある日のこと。見覚えのある街にたどり着いた。そうだ、ここは孤児院があった街だ。懐かしさでいっぱいになる。今もあの場所に孤児院はあるのだろうか。自然と足が向かった先に人影が見えた。
「見つけたぞ! 魔王め!」
「くっ。また見つかったか!」
するりと俺の剣をかわし闇に逃げ込もうとする瞬間、逃がさずマントの端を掴んだ。
「なんで逃げまくるんだよ!」
「……だってお前は勇者じゃないか!」
別に俺は好きで勇者になったわけではない。
「魔王と勇者は敵じゃないか」
「……勇者って呼ばれてるだけだ。俺の名前は知っているだろう?」
「知っている。アッシュ……」
「ベル。逃げないでくれ。俺はお前と一緒に居たいんだ」
「何を言ってるんだ。お前は勇者なのだから早く魔王を退治して英雄になってくれ」
「嫌だ! 今日限り勇者はやめだ。俺にベルは倒せない」
「そんな……どうして?」
「俺はお前が好きなんだよ」
あ~こんなタイミングでいうつもりじゃなかったんだけどな。ベルが固まっている。よし、今だ! 俺はマントをたぐり寄せベルの身体を抱きしめた。
「やっと捕まえた!」
「……アッシュ。私は魔王と呼ばれてるんだぞ」
ベルの声が震えている。俺の腕の中で震えるベル。ちっとも昔と変わっちゃいねえ。
「魔王だろうがなんだろうが好きなんだから仕方ないだろ」
「この瞳は血の色で怖いだろう?」
「涙でうるうるしてる瞳のどこが怖いんだよ」
「み、耳も尖ってるし」
「可愛いじゃねえか」
「髪も黒くて闇色だし」
「前からじゃねえか」
「そ、そうだけど……私の手は血で……」
「あのさ。俺が戦争で武勲を手に入れたのを知っているんだろ? お前よりも俺の手の方が血で汚れているんだぜ」
「そうだったのか。いやそうだとしても……」
「ああもう。ちょっと黙ろうか」
俺はその艶のある紅い唇に口づけをした。
「ん……ふ……」
色っぽい声。可愛いぜ。このまま離れたくない。どうしたらベルと一緒に居られるだろうか。
「そうだ! 俺をお前の仲間にしてくれ」
「へ……? 私の仲間?」
「ああ。俺を魔王の仲間にしろ!そうしたらずっと一緒に居られるだろ?」
「アッシュ……お前本気で言っているのか?」
「ああ。どんなに苦しくても俺は耐えて見せるから」
「本当に? もう人間に戻れなくてもいいのか?」
「別に人に未練なんてないよ。俺にはベルしか必要じゃねえし」
ベルの目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「アッシュ。お前ってやつは」
「仲間にする方法があるんだろ?」
「うん。ある。せっかく私の手から逃がしてあげようと思ったのに。自分からこの手に飛び込んでくるなんて……もう離せなくなるじゃないか」
「ベルこそもう逃げないでくれ。俺はもうお前を離したくはないんだ」
「本当はずっとアッシュの事を想っていたんだ」
「俺も……ベルの事だけ想い続けていた」
ベルががっしりと俺を抱きしめ返してきた。思ったよりも力が強い。ベルが何かを唱えると目の前の景色が暗転する。真っ暗な闇の中に入ったかと思うと次の瞬間には大きなベットのある部屋へと移動していた。瞬間移動か?
「ここは私の避難場所だ。邪魔が入る事はない」
「ベルの隠れ家なのか? お前こんなことが出来るなんて凄いんだな」
「すぐにアッシュも使えるようになるさ」
ベルの手がせわしなく俺の服を脱がせにかかる。
「服を脱がないといけないのか?」
「ああ。私の魔力を分け与えるには私と交わらなくてはいけないから」
「そうなんだ。……え? 交わるって?」
それってつまり。俺とベルで? ドキドキして興奮してきた。夢の中で何度ベルと繋がったかわかりゃしねえが。それはあくまで妄想のなかでだ。嬉しい。だが緊張する。俺がベルを抱けるなんて……。
一糸まとわぬ姿になったベルは均整のとれた身体だった。俺よりも筋肉質かもしれねえ。
「アッシュ……」
耳元で囁かれズクンと下半身が反応するが、あっという間にベットの上に押し倒される。
「は?」
あれ? 俺が押し倒されちまった? ベルが愛おしそうな目で見下ろしてくる。ベルの手が俺の股間を弄りだした。
「ベル……やけに手慣れてないか?」
「王族だった故に閨事は学んでいる」
そうなのか? ちくしょう。俺は童貞なのに。
「じゃあ、お前は俺以外とこういう事をしたことがあるのか!」
「アッシュ。妬いてくれてるのか? 大丈夫だよ。座学だったから。実戦は気持ち悪くてヤッてないよ」
「そうか。ならいい」
「ああ、アッシュが可愛すぎてどうしよう」
ベルが嬉しそうに俺の身体を撫でまわす。紅い目がギラギラして食べられそうな感覚になる。
「へ? あれ? いや、待て待てまて」
「もう待てないし、持つつもりもない」
うう。髪をかきあげながら言う台詞が似合ってるじゃねえか。悔しいが俺よりかっこいいぜ。ベルめ、イケメンオーラ出しまくりやがって。
「アッシュ。愛してる」
ベルの手が俺の形を確かめる様に触りだす。
「んぁ。ちょっと……まっ」
すでに俺のムスコはビンビンになっちまってる。だが、主導権を取られてばかりは性に合わない。ベルの手を掴むと指を絡めなだめる様に囁く。
「俺がお前にしてやりたいんだ」
紅い瞳が揺れている。ゆっくりと俺は起き上がって身体を反転させた。
「綺麗な肌だな。絶対に傷つけたりはしないから俺に身をゆだねてくれるか?」
「アッシュ……」
「ベル。お前の全部が欲しい」
ベルの瞳が弧を描いた。口づけを交わすとベルの身体が反応しだす。
「……甘い」
「ああ。甘いな」
「私にとってアッシュの体液は媚薬になるのか……」
「俺も甘く感じるぞ。媚薬なんかなくても俺はずっとお前に発情しまくってるからな」
心が通じてるからだと思う。互いに触れるだけで胸が高まる。
「アッシュ。もっと触ってくれ」
「煽らないでくれ」
充分に慣らさないといけないと慎重に後蕾へ指を進める。
「ぁ……」
入り口はまだ狭い。俺はベルの雄も愛撫することにした。
「んっ……アッシュ……っ」
舌で転がすように舐め上げながら指も同時に動かしていく。
「ぁっ……っ……んっ」
ベルの喘ぎ声に気をよくした俺は挿入する指の数を増やし舐め上げる速度も早める。
「ぁあっ……アッシュ……も……出るっ」
「んっ……」
喉の奥に熱いものが注がれた。ねっとりと流れ込んでくる。濃厚で苦いような甘いような熱くて重くて凄く気持ちのイイものに身体が侵されていく。
「……飲んだよね? ふふ」
ベルが妖艶に笑う。艶っぽくて更に欲情する。
「もぉ……挿れて……」
かすれた声。赤い舌が唇を舐める仕草にくらくらする。もう限界だ。
「ベル!」
ズン! と突き入れると同時に放ってしまった。脳天まで快感が突き抜ける。
「っ! 嬉しい……私の中でイッてくれて」
「すまねえ。俺、初めてで……早すぎたよな?」
「大丈夫さ。これで終わりではないのだろう?」
「だからっ。煽るなってば」
「もっとどろどろになるまで抱いてくれ」
なんだそれ! めっちゃエロい。ベルってベットの中ではどエロになるのか?
「やめろって言ってもとまらねえぞ!」
ちろちろと見える赤い舌に吸い付き甘噛みし歯列をなぞるとベルも舌を絡め応戦してきた。互いにくちづけに夢中になるころには俺のムスコは復活していた。
「ベル。動くぞ」
「……ん……」
ベルの中はあたたかくて吸い付くように俺を包み込み締めつける。ぞくぞくと腰から這い上がってくる快感に俺の腰の動きが速くなっていく。
「んぁ……アッシュ。私の……離さない……ぁあ! あいして……る……ぁんっ」
ズルい。それは俺が言おうと思ってたのに。快感が体中を駆け巡って言葉に出来ない。
「……んぁっ! っ...ぁあ……イイっ」
「イイ? ココか?」
俺は大きく腰をグラインドし浅く同じ場所を突き始めた。
「ひっ! んぁあ! イイっ! ぁあそこ!」
「ここだな! ん! どうだ? ほら……」
ぐちょぐちょと濡れた音と快感で我を忘れて突きまくった。
「っ! んっ……ぁっ……もっと……」
「ベルっ……愛してるっ……くっ」
二度目の絶頂は快感と一緒に甘く苦しいような切ないような感情の渦が細胞の中に浸み込んできた。身体が浸食されていく。
「はっ……べ……ル……うぐっ」
ベルが何かをずっと唱えている。呪文のようだ。その間も俺たちは繋がったままだ。
「耐えてくれ……愛している」
「気に……するな……これぐら……い」
気付けば魔法陣の中にいた。心配げなベルに笑いかけてやるとまた泣きそうな顔をする。
「もっと交われば……楽になるから」
「はっはは……俺が絶倫だってバレちまうかな?」
「……何度でも抱いて」
「ベル。俺たちはずっと一緒だ」
◇◆◇
アッシュが自分から仲間になると言い出すとは思ってもみなかった。本当は機会があれば眷属にしてしまおうかと思ったことはあった。だが、それでは同等の立場ではない。主従になってしまう。人間から魔族になるためには無理やりではなく自分から望まないといけなかった。そして我が血と体液で交わり、快楽に溺れないといけない。リスクが高すぎると思い自分からは言えなかった。それなのにアッシュ自身が言い出してくれるとは。
「さすがだなアッシュは」
追いかけっこは楽しかった。昔アッシュと一緒にした鬼ごっこのような感覚で私はアッシュが追いかけてくれば姿をくらまし、捕まえようとすれば風のように逃げた。
いい加減もう諦めてくれてもいいのに。私の事なぞ忘れてくれてもいいのにと思いながらも私の事を想い追いかけてくれるのを待ち望んでいた。
側で眠るアッシュに口付けをすると眉間に皺を寄せてみじろぐ。目覚めが近いらしい。
「ん……」
「アッシュ。目が覚めたか? 気分はどうだ」
「少し頭痛がする」
「そうか、まだ体が馴染んでないせいだろう」
アッシュは灰色の髪が腰まで伸びてしまった。少しチカラを注ぎすぎたかもしれない。
「成功したのか?」
私と同じ尖った耳に紅くなった瞳。
「ああ。これで私達は同じ家族になれる」
「そうか! 良かった。ベル!」
アッシュに抱きしめられ嬉しさが込み上げる。
「愛してる」
「これからどうしたい?」
「そうだな。しばらくは二人だけで暮らしたい」
「ふむ。人に邪魔されない場所にでも城を建てようか」
「ははは。城か。ベルと二人なら小さな家でもかまわないぜ」
「そういえば元団長殿が隣国で孤児院を開いたそうだぞ」
「え?師匠が?」
「ああ。陰ながらだが援助していこうかと思う」
「本当なのか? ありがとうベル! くくく。魔王が孤児院の後ろ盾だなんてお前は本当に優しいやつだなぁ」
「あの人間はアッシュに会わせてくれた恩人だ。これくらい当たり前だろう」
アッシュの気を引きそうな話題の一つや二つ。作っておかないとな。
私は優しくなんかない。儀式には行為だけでなく多くの魂も必要だった。女を抱いたこともない私が子供などつくれるはずもないだろうに。私の子だと虚言を吐く妃や腐った高官ども、その他もろもろすべてを供物にした。この国はほぼ全滅したと言っても過言ではない。ここには懐かしさからではない、滅ぼすために立ち寄ったのだ。
「ふふふ。では二人の棲み処を見つけに行こうか?」
「ああ。お前と一緒ならどこでもいいぜ」
「ふふふ」
「ははは」
笑い声だけを残して闇に溶けるように二人の姿は消えて行った。
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楽しい短編集ありがとうございます
おせち料理のようにキラキラ、五味ありですね
女か竜かのお話が特に好きです
続編がありましたら、読みたいです
次回の更新楽しみです✨
お読みいただきありがとうございます!
すぐに観想頂けるなんて思ってなかったので嬉しいです。
はい。また時間があるときに練り直してみます。かなり先になるかもしれませんが。
リクエスト頂けて嬉しいです。ありがとうございました!