アイツとアタシ

猫屋敷ぽん

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アイツとアタシ ライブハウス編

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「...ちょっと、来て」
放課後、アイツに声をかけた
え?どこへ?
なんて、すっとぼけてアタシに聞く
気が利かないな、もう
察しろよ!
...まあ、それも無理か...

「ど、どこでもいいだろ?
さっさと来い!」
咄嗟に、手を掴み
無理矢理、引っ張って行く

あ、手、握っちゃった
さりげなく、
いや、思わず、無意識に、だけど

校舎の裏
引っ張ってきた、アイツを
カツアゲでもされると思ってるかな
走ってきたから
アタシも、アイツも
息が上がっている
はあはあ
ふうふう

どうしたの?
呼吸が落ち着いて
アタシに聞く、アイツ
アタシは

今からアイツに
打ち明ける、ことに
落ち着ける、訳がない

どうしよう
どうしよう
アタシの、話
聞いてくれるかな
受け取って、くれるかな、アレ
ドン引き、されないかな
や、やっぱ、やめよっかな

「あ、あ、あのさっ!」
声が裏返っている
うわずっている
素っ頓狂な、声で
落ち着け、落ち着け

「お、音楽!
す、好きっ?」

意味がわからないのか
アタシのこと、理解できないのか
首を傾げて
アタシを、見上げる
わざとやってんのか?
「す、好きかって、聞いてんだよっ!
お、音楽っ!」

うん、クラシックと、ジャズなら!
...だって?
またもう、嬉しそうに
やっぱり、オーケストラはベルリンフィルで...
ジャズは、ビッグバンドだよね!
...そんなことまで、聞いてないけど

あ、そう、ふうん
ジャズと、クラシック、ね
...ダメ、かもな、これは

踏み出せ、一歩を
絞り出せ、勇気を

制服のポケットに
手を突っ込む
取り出す
勇気という名の

...こんなに、こんなに
勇気が、いるもの、なのか

チケットを
握りしめていたから
もう、ヨレヨレ、だけど

「こ、これっ!」
アイツの鼻先に、突きつけて
チケットを

あ、なんだか目を瞑っている
頭を抱えて
何だもう、アタシが
殴るとか、思ったわけ?
凶器を出すとでも?

するわけないだろ、そんなこと
失礼だな

恐る恐る目を開けたアイツ
なに?これ?
アタシが押し付けた、チケットを
不思議そうな顔で、受け取って
恐る恐る
アタシに、聞きたげな、アイツ

「ラ、ライブの!チケット!
アタシ、もっ!
出る、からっ!
見に来いっ!
いや、その、つまりっ!
見に来てっ!
わっ、わかったなっ!この野郎!」

もう、機関銃の一斉射撃みたいな
早口で

無理矢理、押し付けた

回れ右、して
逃げるように、立ち去る
いや、逃げたんだ、実際
アタシ、恥ずかしくて

アタシ、バカだ、
もっと、あるだろ
他に、言い方、が

「アタシ、バンドやっててさ!
今度、ライブに出るの!
聴きにきてくれたら
嬉しいな!」

なんて

可愛く、言えたら、いいのに
そう、年頃の少女みたいに

一応、年齢的に、
少女、ですけど

恥ずかしいもんだから
そして、怖いから

「来いっ!」なんて、
「わかったなっ、この野郎!」なんて
チケット、押し付けて

礼儀知らずの
強引な
近寄りがたい、女の子、って
そう、思われるだろうか

事実...170センチの長身で
いつも、無愛想な、アタシ
クラスメイトからは
「仁王様」とか「人型決戦兵器」とか噂されて
陰で「番長」なんてささやく、不届き者もいる
敬遠されている、存在

番長、か
一昔前なら
そんなこと、してたから
そう思われても、無理ないけど

走りながら
教室に、戻りつつ
そんなこと、考えて

渡して、しまった
渡しちゃった、ついに
もう、逃げられない

「賽は投げられた」って言ったのは
誰だっけ?
シーサー?
...いやそれは、沖縄の守り神でしょ

勇気という名の、チケット
心臓が、ドキドキする
顔が、熱い

チケットは
アタシが入っている、バンド
いわゆる、ガールズバンド、の
ライブの、チケット

1週間後、この街の、ライブハウスで
借り切って
ライブをやる

アタシ達の、ガールズバンド
アタシの他に、メンバーは4人
ヴォーカル、ギター、
キーボード、ドラムス
そしてアタシ、
担当は、エレキベース

きっかけは
そう、半年前、ぐらいだったか

楽器店の前で
ショーウィンドウの、楽器達を
何気なく、眺めていた

趣味らしいものは、何もない
何せ、1人で生きてきたから
寮生活で、
生活と、学業に精一杯
ましてや、音楽なんて

そんなアタシが
色とりどりの、ピカピカの
楽器達に、眼を奪われた

トランペットや
クラリネットたち
キラキラ輝いて
自己主張、している

綺麗だな
かっこいいな、この子たち
奏でたら、いいだろうな
かっこいいだろうな

でも
アタシなんか、無理だ
音楽知らないし
譜面も読めない

第一、先立つもの
つまり...お金がない!

「ちょっと、あなたっ!」
物欲しげに、ボーッと
ショーウィンドウを眺めていた
無防備だった、アタシ
「は、はいっ!」
いきなり、後ろから声をかけられて
文字通り、飛び上がった

「音楽、好き?」
恐る恐る、振り返る
年上の、上品そうな女性
不気味に、いや、
爽やかな笑顔を浮かべている

「い、いえ、」
見ていた、だけですから...

「入んなさい!」
いきなり腕を掴まれて
楽器店の中に、引き摺り込まれる

「あ、あの...」
すいません、私、買いませんから
音楽なんて、興味ないですから
本当に、
見ていただけ、ですから...

椅子に座らされ
ギターみたいな楽器を、持たされる
無理矢理

それが
アタシと、エレキベースの出会いだった

「私たち、バンドやってるんだけどさ...」
上品な女性、続ける
「メンバー1人、抜けちゃうんだよね」

はあ、そうですか

「あなた、素質あるわよ
やってくれない?ベース」
...はい?

いや、素質も何も
今、楽器触ったばかり、ですよ?

「あのね、左手でここ、押さえて
右手で、弦を弾いて...」

はあはあ、なるほど
ベイイイン
あ、音が出た
まあ、当然か

いい音、だな

「...おおお、すごいすごい!
私の眼に、狂いは無かった!」

眼に?狂い?
何を基準に?

「...なになに、この娘!すごいじゃん」
「新しいメンバー?やったあ!」

ドヤドヤと、女性達が楽器店に入ってくる
一体、どこにいたのか
もしや、トラップ?
アタシを引き摺り込むための?

新しいメンバーだって?
いや、あの、アタシ
本当に、見ていただけですから

「私、カオリ!
ヴォーカル担当よ!よろしく!」

「ハルミです!ギター担当!」
「レイカ...キーボード」
「あ、あたし、アヤ、ドラムス!」

「香山、ミカ、です...」
全くの、初心者です
ただの女子高生、です
引くに引けない
逃げようにも、逃げられない
4人の女性に、取り囲まれて

結局...
中古のエレキベースを
格安の値段で買わされて
(事実、かなり値引きしてくれたみたい)
寮に、持って帰った

中古だけど
あまり傷はついていない
黒一色
ピカピカだ
君、綺麗だな
アタシは
君と、うまくやっていけるかな

見様見真似で
今日、楽器店で教えてもらったように
左手で 弦を押さえて
右手で、弾いてみる

ド、レ、ミ、ファ...
まずは音階から
低くて、力強くて
暖かい、音

いいな、コイツ

ほぼ強引に、
ガールズバンドに、入れられちゃったけど

今日の話を整理すると...
バンド名は、「爆裂レディース」
5人組、いずれも女性
そのうちの1人、エレキベース担当の
ナナさんという女性、が
近々、遠方に
転勤するから
メンバーから、抜けるらしい

そんな折
楽器店の前で、ボーッとしていた女子高生
つまり、アタシを
餌食、いや、後継者として
ヴォーカルのカオリさんが見つけ
首尾よく、いや無理矢理
メンバーに入れることにしたらしい
ナナさんの後継として...

なんか、無茶苦茶だけど
強引すぎるけど
アタシは
断れなかった
いや、断らなかった、敢えて

初めて手にした、エレキベース
運命の出会いみたいに、感じて
「やってみたい」
「奏でてみたい」って
思ったから

バンドの練習は、週一回
駅の近くにある、音楽スタジオ
メンバー全員集まって、音を合わせる

ナナさんからつきっきりで
手解きを受けた

「...ミカちゃん、いいよいいよ!
あんた飲み込み、早いじゃん!」

時におだてられ
時に「違う違う!」って怒られ
練習を重ねるうちに
アタシは
ガールズバンドと、そして
エレキベースの魅力に
どっぷり、はまっていった

エレキベース
どちらかと言えば、地味で、控えめな
楽器だ
縁の下の、力持ち的な
正確に、リズムを刻む
単調にも思える、でも

バンド全体を、力強く、支えている

ナナさんが、メンバーから脱退して
アタシが、正式に
「爆裂レディース」の
エレキベース担当になったのは
アタシが、楽器店に引き摺り込まれて
2ヶ月後、だった

定期的に、ライブをやっている
この街の、ライブハウスで

ちなみに、アタシの他のメンバーは
2人は女子大生、2人はOLだ
つまり、アタシよりも
みんな、年上

ナナさんの後継として
みんな、アタシを、
アタシなんかを
暖かく、迎えてくれた
いや、初めは
アリ地獄のように、引き摺り込まれたんだけど

そんなアタシの、
いや、アタシ達の「爆裂レディース」
今度のライブは、1週間後

「ミカちゃん、これ!」
練習が終わって、みんなで一息ついている時
ヴォーカルのカオリさんが
アタシに渡したのは
そう、例の、チケット

「彼氏、いるんでしょ?
来てもらいなよ!ライブに!」

「...いませんよ、彼氏なんて」
友達も、ほとんどいないのに
いわゆる「ぼっち」です、アタシ

ふと、あいつの顔が
頭の中に浮かび
ブンブン!頭を振って
イメージをかき消す

「またまたあ!嘘ばっかり
私、この前、見ちゃったんだよねえ」

「な、何を?ですか?」
ドキドキ

「この前の土砂降りの日!
男の子から、傘渡されたでしょ?」

...見られて、いたんだ 
「2人とも、いい感じ、だったよ!」
カオリさんに
アイツから、傘を押し付けられた
あの時のこと、を...

「あっ、あれはっ!そのっ!
ち、違うんです!」

傘は、押し付けられたんです
半ば、強引に

顔から火が噴き出すように
熱く、なって
アイツのこと、思い出して

「ミカちゃん、顔真っ赤っかだよ!」
「ヒュウヒュウ!すみにおけないねえ」
アヤさんも、ハルミさんも
散々、囃し立てる

「...連れて、来なさい...」
日頃寡黙なレイカさんまで
こんな調子で

「彼氏に、見てもらいなよ!
ミカちゃんの勇姿を、さ!」

そういう経緯で
新メンバーのアタシが、
断れるはずもなく
受け取って、しまった

そして今日
アイツに、押し付けた
勇気という名の、チケット

いわゆる、「ノルマ」じゃない
「爆裂レディース」のコンサートは
毎回、満員御礼
チケットは、即完売
ライブハウスはぎゅうぎゅう詰め

カオリさんから渡されたチケットは
いわば、「プラチナチケット」
それを、アイツに
アイツだけの、ために...

来てくれるかな
クラシックとジャズしか聴かないって
言ってたけど

嫌に思われないかな
不良っぽいって、思われないかな
...ロックが不良っぽい、なんて
あれ?アタシの方が
偏見を持っている?

今更、「返して!」なんて言えないし
どうしよう
どうしよう

やらなきゃ、練習
アタシが、誘ったんだ
ライブに、来いって
「爆裂レディース」見てもらうんだ
アイツに
アタシを...

何よりも
先輩達に
カオリさん達に
恥をかかせるわけにはいかない
失敗するわけにはいかない

しっかりと、リズムを刻む
強すぎず、弱すぎず
バンドの、「縁の下の力持ち」

ついに、1週間後
ライブの日が、来た

爆裂レディースのメンバー達
カオリさん達、OLだけど
女子高生風のコスチュームを
身に纏っている
これが、「爆裂レディース」の
ユニフォームだ

ちなみにカオリさん達
言うまでもなく、「元」女子高生だから
過去に着ていた、高校の制服を着ている

そう、ブレザーとか
ルーズソックスのギャル風とか
カオリさんなんか、セーラー服で
(しかもスカートが異様に長い)
一体、何年前の女子高生なんだか

アタシはもちろん
現役女子高生、だから
いつも通りの、制服姿
変わり映えしない

「ミカッ!」
「は、はいっ!」

アタシを見つめて
ニヤニヤしていた、ハルミさん
一昔前の、「ギャル風」
ルーズソックスなんか履いちゃって

「あんたさあ、スレンダーで
スタイル抜群、なんだから...」
はあ、ただ、ノッポなだけですけど
何せ「仁王様」だから
「人型決戦兵器」だから

「...こうしちゃえ!」
そう言って、ハルミさん
アタシの制服のスカートを、
ウェスト部分を、二つほど巻き上げて

やだ、超ミニじゃない!

「おお、いいねえ!ミカちゃん!」
「これで、彼氏を悩殺だあ!」

彼氏?じゃないですけど
恥ずかしいな、もう

...第一、来てくれるか、
それさえ、不確かなんだけど

ステージに上がる前
みんなで入念に、打ち合わせをして
音合わせをして
気合いを入れて

「行くよっ、みんなっ!」
「おうっ!」
カオリさんの、掛け声の元
アタシ達は、ステージへ

ウオオオオオッ!
地響きのような、声援
「爆裂レディース」への
歓迎の、雄叫びが
観客席から、沸き起こる

今まで、何回か経験したけど
いつもながら、すごい
興奮のルツボ

「みんな、来てくれてっ!
ありがとおおおっ!」

カオリさん、今日もノリノリだ
テンションアゲアゲ!

「ワン、トゥー、スリー、フォー!」

始まった
「爆裂レディース」の
饗宴が

火を吹く、ドラムス
闇を裂く、ギター
激流の、キーボード
天に届け、ヴォーカル

そして
地を這う、エレキベース

1曲目、2曲目
無難に乗り切った、アタシ
大丈夫かな
みんなの足、引っ張ってないかな

...さりげなく、客席を窺う
席って言ったって、もちろん観客たちは
立ったままだけど
よく、見えないな
...アイツ、来てるかな

やっぱり、いないか
来てない、な、アイツ

興味、ないんだろうか
ガールズバンドなんかに
ロックなんかに
いや、それよりも
アタシの、あの態度に
チケットを押し付けた、あの態度に
怒っているのかな
ドン引き、してるんだろうな

「...なんだよアイツ
ヨレヨレのチケット、
押し付けやがって
失礼な奴だな
誰がいくかよ、ガールズバンドなんて」

そう、思われちゃったかな

せっかくの、ライブ
来て欲しかったな
...見て、欲しかった、な
ステージの上の、アタシを

「ミカちゃん!
もっと、元気出して行こう!」
三曲目、終わった後で
カオリさんに、声をかけられた

「あっ、はいっ!」
アイツが来てないから
ちょっと、失望して
無意識のうちに
リズムと、ペースが、落ちていた、みたい

4曲目
気を取り直して
平常心で
いつも通り

バカやろう
なんで来ないんだよ

アタシ...
勇気振るったんだぞ
チケット、渡す時

見て欲しかったんだ、ほんとは
ベースを弾く
アタシの、
勇姿を
アタシの
本当の、姿を

「ミカッ!ミカッ!」
曲の間奏部分で
カオリさんが、叫んでる
...やば、また、テンポずれたかな
足引っ張っちゃったかな
怒られちゃうかな

カオリさん、アタシの腕を掴んで
ステージ中央部分に
引っ張り出す

「来てる!来てるよっ!
ほらっ!」

え?誰が?
ステージから客席、暗くてよく見えない

「あそこ!
あなたの、彼氏が!」

カオリさん、指さす
見えたっ!
アイツが、いるっ!
高校の制服のままで
両手を、大きく、振っている

あれ?手に何か持ってる
花束?
リズムに合わせて、全身を動かして
ピョンピョン飛び上がって

来てるっ!
来てくれた!
ほんとに、ほんとに、来てくれた!
アタシを、アタシを
見に来てくれたんだっ!

「カオリさん!
ど、ど、どうしよ?
アイツが、来てるっ!
アタシ、アタシ、どうしたら...?」

ステージの中央で
カオリさんに寄りかかって
うろたえる、愚かなアタシ

「バカっ!しっかりしろっ!
まだ、ライブの途中なんだぞ!」

「でっ、でもっ!
アタシ、どうしたら?
し、失敗したらどうしよう?
笑われたらどうしよう?」

「あんたを、見せろ
ありのまま、見せろっ!
見せつけろっ!
あの子のハートに、刻みつけろっ!」

「は、はいっ!」

間奏が、終わる
カオリさんは、再び歌い始める

アタシも、ベースのパートに戻る
来てくれた
アイツが、いる
アタシを、見ている

バカやろう
アンタ、遅刻だ!

4曲目、終わった
次の曲で、最後

「今日はみんな、来てくれてえええっ!
ありがとおおおっ!」

カオリさん、マイクを持って、
客席に、シャウト

「次が、最後の、一曲だ!
みんな、ついてこおおおい!

ワントゥースリーフォー!

ズズンズズズン
ズンズズンズズン

ベースがリズムを刻み
ドラムスが、絡みつく

熱い
熱い熱いっ!
何が、こんなにっ

感じる
アイツの、視線
アタシを、見ている
見てくれてるっ!
感じるっ!

ギターが吠える
キーボードが切り裂く

ベースが
アタシのベースが
アタシに、応える
一心同体!
一蓮托生!

地を打ち
えぐり
刻みつけるっ!

テンポが走り始める
ともすれば、早くなりがち
まだ、ダメだっ
抑えろ、抑えろ
ここは、抑えろっ

ダメだ、抑えきれないっ!

ソロ!
ソロならっ!
少々走っても
曲の中盤
ベースパートの、ソロがっ!

カオリさん、チラッと振り返り
眼で、合図を送る

走れっ!

「はいっ!」

今まで以上に、ヴォリュームを上げる
アンプが、吠えるっ

行くぞっ!
アタシの相棒
突っ走るぞっ!

ズンズンズズンッ
ベインベインベンベン

たぎるっ!血がっ!
沸騰するっ!

ベースライン、抑えつつ
要所要所で、弾ける

走れ、走れ、アタシっ
見て、見て、アタシをっ

スラップ、スラップッ
弾けろ、弾けろっ
刻め!刻め!

聴けっ!アタシの
アタシと、相棒の、雄叫びっ

震える、ハートッ
燃え尽きろ、ヒートッ

ズズンベンベンッ!
ベベンズンビンビビンッ!

ついて来いっ
みんな、アタシに、ついて来いっ

ああ
アタシ、一体だ
エレキベースと
「爆裂レディース」と
ライブハウスと、客席と

そして
そして、そして

何より、アイツとっ!
一緒だっ!
一心同体だっ!
君を!君のハートを!
感じる!熱く、感じる!

ソロパート
たった16小節、でも
感じる
永遠に、感じるっ!

終盤
ベースのソロは、あっという間に終わり
後は、エンディングへ
全員で、突っ走るっ!

ギターが
ドラムスが
キーボードが
そして
アタシのベースが

ラストに、音を合わせて
終わった...

「...ミカ!ミカッ!
終わったよっ!」

あれ、アタシ?
どうしたんだろ
メンバー達に、囲まれて

カオリさん、心配そうに
アタシを、見下ろしてる

「...カオリさん、アタシ...?」
「あんたもう、大丈夫?
曲終わった途端に、ぶっ倒れて...」

倒れた?アタシが?

...そうか、ソロで
全力、使い果たして
意識失ったんだ、アタシ

ゆっくりと、体を起こす
ウオオオオオッ!
歓声が、響いているお
観客は、総立ち

その中に
いる、アイツ
両手を突き上げて
ピョンピョン、飛び跳ねてる

アタシ...
ちゃんと演奏、できたかな?
アイツに
届いたかな、想い

鳴り止まぬ、
歓声と、拍手喝采
メンバー5人で
客席に、深く一礼して

「ミカッ!」
「は、はいっ!」
楽屋に戻って
カオリさんに、声をかけられた

「あんた、あんたって子は...」

ああ、走りすぎちゃったかな
ソロパートで
怒られちゃうかな

カオリさんに
ギュッと、抱きしめられる
「カ、カオリさん?」

「もう、あんた、
最高っ!」

え?

「ミカちゃん、すごいすごい!」
「もう、泣かせるじゃん!」
「偉大だ、恋の力は...」

アタシを取り囲んで
ハルミさん、アヤさん、レイカさんも

恋の、力?

「もう、早く、こっちこっち!」
地方に転勤した、ナナさん
ライブ、来てくれてたのか

ん、ナナさんが手を掴んで
引っ張ってくるのは?

アイツだ

「...もう、この子、楽屋の入り口で
モジモジしてるもんだから
連れて来ちゃった!」

「さあ、ほらっ!」

どんっ、てナナさんに
肩を叩かれて
アタシの前に
オドオド、しながら

あ、あの
「うん...」

僕、ロックは、初めてで
「うん...」

でも、そ、その
「うん...」

す、すごく、か、感動して

目の前に、花束が
え?え?
何?

香山さん!
僕と!
「付き合って、下さいっ!」

いきなり

こんなところで

告白?

アタシ
コクハク
サレチャッタ

バカ

バカやろう

こんな時に

こんな場所で

みんな、見てんのに

恥ずかしいじゃないか

「あのさ」

「今日は、ありがとう」

勇気という名の、チケット

アイツに渡して

勇気の、先は

花束と、そして

恋の、告白

「アタシは

香山ミカは

...ヤマト、サツキ君

君のことが

大好き、です」




















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