スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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消えてゆく痛み、変わりゆく考え

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 動画を操作し、巻き戻してダンサーのシーンを見ているマレ。やはりダンサーであるマレは、ジャンルは違えどダンサーが気になるのかもしれない。
 隊列のかなり前の方の映像でも、私たちの鳴らす打楽器の音はしっかりと響いていた。

 
「ダンサーたちもすごいねー」

 
 マレは少し、間を置いた。

 
「ダンサーやるって選択肢はなかったの?」

 
 マレが少し踏み込んできたのがわかった。
 つまり、マレもまた踏み込まれることを良しとする段階に入りつつあるということだろう。

 
 ただし、すぐぱくついたりはしない。
 まずはひとつひとつ、問われたならばその回答を。

 ドリンクのお代わりと、パフェを追加で注文する。私はメロン、マレはマンゴーのパフェだ。
 
 
 同じダンスという分野でも、ジャンルが異なれば考え方や身体の使い方やリズムの取り方なんかも、異なっている場合がある。
 だけど、「音を捉えて身体を使って表現する」という原理原則は変わらない。
 一応一時はバレエの世界でトップランナーのひとりだった身だ。その熟練した技術や身体操作が活かせる要素も多分にあっただろう。

 
「その時は、ダンスはちょっと、もう良いかなって」
 
 トップランナーだったからこそ、別のジャンルで一から、って言うのに抵抗があった。
 ダンスの世界の厳しさと、自分では至れないという事実を知ったばかりで、また同じ道を往こうとも思わなかった。

 
 でも今なら、何の気負いも衒いもなく、ただ楽しむために身体を動かすって言うことはできる気がしている。
 というよりも、踊りたいなっていう想いが湧いてきている。
 その道を追求していた者が、むしろその世界から離れた方が純粋にやりたくなるなんて構図は、結構ありがちなのかもしれない。

 サンバには自由に楽器を鳴らし踊るパゴーヂという楽しみ方がある。
 パゴーヂの場では楽器で参加することが多かったが、踊ってみたいな、なんて思いは持っていた。

 
「えー! すっごい良い考えじゃん! ジャンル変わってもほまれちゃんがまた踊るならそれも見たいなー! 打楽器もできて踊れるプレイヤーになったらいいじゃん」

 そんなわたしの変化を、マレは肯定的で好意的に捉えていた。

 この変化の根っこは、私も好ましく感じていた。
 自分で気付いていなかった、もしくは気付かないようにしていた後悔と劣等感と蟠り。
 きっとそれが、なくなりはしなくとも目立たなく気づかない程度に薄れていった証だと思えたから。


 バレエを辞めたことで、私にもいくつか負った傷があったとしたら。
 そのうちの一つは、癒えずとも風化しつつあるのかもしれない。
 そうであるなら、他の傷もいずれは。
 そうであるなら、マレの傷だって必ず。

 痛みを除けるはずだ。
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