スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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マレの、想い

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(柳沢 希)

 情けなさを抱えていた私に、マレの微笑みは少し痛い。


「お互い、相手のために気配りをすることが、自分のためになっている関係性って、理想的だと思うから、そこはお互いさまで行きたい。でね、ほまれちゃんのこと気になってたんだけど、さっきの言葉聞いて安心したんだ。ほまれちゃんはもっとほまれちゃんのこと認めてあげて良いと思う」
 
「うん、ありがとう」
 妹のように思っていた子に、すごく諭されてしまった。でも、悪い気はしない、かな。

 
「だから、わたしもほまれちゃんに安心してほしい。わたし、多分もう大丈夫。バレエちゃんと踊れると思う。さっき踊ってみて、もっともっと踊りたいって思ってるし」

 
 マレの笑顔にいつもの、いや、最近のマレの様子を鑑みれば、かつてのと言った方が正しいのか。
 強気で勝気な力強さが宿っていた。


「ほまれちゃん。わたしねーー」

 
 
 マレは、フランスに帰る時期を、なんとなくの消極的な見込は立てていた。
 そこにはどこか、「いつかやらなきゃいけないことはわかっているけれど、なかなか手を付けられない夏休みの宿題」を先延ばしにするような、煮え切らない様子があった。

 しかし今のマレは、各所の調整が済み次第、フランスに戻るということをはっきりと言葉にしていた。

 
 そう遠くない将来にいつか来ることはわかっていた別れだけれど。


 このままマレがここに居続けるより、早く戻って再起してほしいと思っていたけれど。


 いざ、戻る日が具体的になってくると、残り日数を数えてしまう。
 限られた時間でできることを考え、焦ってしまう。
 カウントダウンのように容赦なくその日が迫るにつれて、寂しくなってしまう。



 
 気が付けば、楽しかったあのイベントからは一週間が過ぎていた。
 それは、マレがフランスに戻る日でもあった。


 戻ることを決めたマレの行動は早かった。
 とはいえ、本来フランスで授業と練習を受けている身で、日本にいることがイレギュラーであった彼女が、この地で新たな基盤を築いていたわけではないので、公的な手続きはほとんどと言って良いほど無かった。
 実家のバイトの調整と、帰国準備、そのための手配くらいだ。
 しかしそれでも、一週間という期間は短い。結局、マレと約束していた「やりたいことリスト」は、ほぼ解消されず、次の機会の楽しみに取っておくことにした。

 次にまとまった休みが取れたマレが日本に来るときか。
 マレが留学を終え、日本での暮らしが始まったときか。
 私がフランスに遊びに行くなんてこともあるかもしれない。

 前向きな約束をたくさん残していることが、なぜか心を浮き立たせてくれる。


 マレも同じ気持ちだったら嬉しいな。
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