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終章 ひとつの手にした誉
しおりを挟むかつて、私は何の栄誉も栄光も掴めないと思っていた。
今、私は何らかの表彰を受けたわけでも優勝を手にしたわけでもない。
でも確かに、手に入れたものがある。手元に残ったものがある。
何かを成し遂げたという実績と自信。それももちろんだ。
その源泉には、私を援けてくれたたくさんの仲間たちの存在がある。
思えば、栄誉や栄光というものは、例えば仲間たちと共に手にしたものだとしても、得たという実感は個人で感じるものだ。
確かにそれは誇らしく、輝かしいものだろう。得難いものであるのだろう。目指すべきものとして良いもの。素晴らしいものであるはずだ。
だから、今の私もやっぱり、そういうものを求め、努力し尽力したい。そういうものを美しいと、善きものだと、感じる価値観はある。
けれど、それがすべて。それが唯一。ではないとも思うようになった。
仲間と共に得た、誰かが表彰されるわけでもない、けれども多くの人を笑顔にすることのできた、素晴らしい成果。
それもまた、得難い経験だ。
誉。
私が名付けられたこの言葉は、周りから得られる良い評判や褒め称えられることを意味する言葉だ。
名前として使われる際に込められる想いとしては、「立派な人物になって欲しい」「尊敬される人物になって欲しい」「能力のある人物になって欲しい」などが挙げられる。
名付けた私の両親もまた、同じような想いを込めてくれたのだろう。
相も変わらず私は、未だ栄誉というものを手にはしていない。それを手にするに能う存在になれてはいない。
人に助けられてばかりの情けない人間だ。
立派な人物、尊敬される人物なんてものとは程遠い。
それでも、ありがたいことに周りにはたくさんの、能力にも性質にも恵まれた人々が居てくれる。
こと「周りから得られる」という点に於いては、私は自信を持って良いのではないだろうか。周囲が助けてくれることに自信を持って良いのかははなはだ疑問は残るけれども。
それが名前のおかげかはわからないが、私が培い、積み上げた結果が、今の状況だとするならば、悪いことではないと思っている。
栄誉や栄光というのは点ではない。
線の先にあるものだ。
であれば、私は未だ道半ばなだけ。
この先に、いつか、何なら今際の際にでも良い。最後の最後に手にすれば良いのだ。
今は、周囲の助けに感謝し、返しながら、目の前のやりたいこと、すべきことに尽力するだけ。その先に栄誉とやらがあるのなら、それで良い。
誉という言葉には「祝福」という意味もある。
得る、ではなく与える立場でも良いではないか。
多くの人を笑顔にできた、楽しませることができた今回の企画は私にとっても楽しかった。
そういうことを積み重ねて、たくさんの人に笑顔を、祝福を与えていける、私になろう。
相も変わらず、たくさんの人に助けられながら。
その先にきっと、私の「誉」があるはずだから。
今日は約束の日だ。
身支度を整えた私は、新しい始まりの予感を胸に、扉を開けた。
~ 第一部 完 ~
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