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バイト終わり
しおりを挟む「おつかれさまー。かえろー」
「ねー、つかれたねー」
着替えを終え、めがみちゃんと一緒に駅へと向かう。
「おつかれさまー。またね!」
乃木さんがトレードマークの発色の良いイエローのスクーターでわたしたちを追い抜いて行った。
「乃木さんのスクーターかわいいなぁ。スクーターも良いよねぇ」
めがみちゃんは小柄で可愛らしい見た目の印象からはギャップがあるが、バイクに興味を持っている。『ソルエス』でスルド奏者であり、個人でバンド活動もしているキョウさんの影響だ。キョウさんはめがみちゃんのスルドのトレーナーだった。がんちゃんとキョウさんは今でも師弟のような関係性が続いている。
いわゆる不良中年の様相のキョウさんは、昔ながらのロッカーって感じで、バイカーでもあるのだ。ちなみに『ソルエス』の代表ハルは、地元のクリニックを開業医から継いだ二代目院長で、精悍な印象の外科医だけどバイクや車が好きらしく、ほかにも何人かいるバイク好きとバイク談義をしていることがある。そこに、めがみちゃんも加わっているのが、なんだかシュールだと思っていた。
「免許ほしいなぁ。校則で禁止されてるからなぁ」
独り言のように漏らすめがみちゃん。
かつてはバイト代をためて、独り立ちしようとしていためがみちゃん。今は無理に家から出る必要は無いと考えているようで、お金の使い道を免許の取得やバイクに当てようかなと考えているそうだ。
姫田家は地元では高級住宅街のエリアに持ち家を持っていて、更に豪邸と言って差し支えのない邸宅を構えている。
わたしの地元の子たちは、そのエリアに住む子たちを「お金持ちの子」として認識していて、姫田家もいわゆるお金持ちと呼んで差し支えない家だった。
親におねだりすればバイク代免許代一式丸々出してくれそうだが、めがみちゃんは自分の力で買いたいらしい。
その辺もいのりちゃんに似ているが、いのりちゃんの場合なんていうか、アプリを開発して企業に売ったり、配信がしっかりと収益になっていたりと、お金の稼ぎ方が学生離れした別格な感じだから、普通の子どもは甘えられるなら多少甘えた方が、ご両親も喜ぶんじゃないかななんて思った。
わたしもまた、同じようなことがあったから。
趣味を見つけたわたしに、楽器代くらい出させてくれとお父さんに頼まれてしまった。最初は断っていたが、日本にひとり残しているわたしに対し、できることがあるならできるだけ何とかしたいという、ある意味罪悪感の払拭も兼ねていそうなお父さんの望みを、拒絶するのは配慮とは異なるなと思い、ありがたく出して貰う事にしたのだ。
その時のお父さんは、本当に嬉しそうだった。
「卒業したら免許すぐとって、ツーリング行きたいな。のんちゃん乗ってく?」
バイクの二人乗り? 怖いけど、気持ちよさそう。
頷くわたしに、めがみちゃんはにっこり微笑んだ。
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