スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

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意外性

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(柳沢 望)

 カタちんとわたしはほぼ同じ地元だ。駅で言えば一駅違い。わたしと同じ最寄り駅のいのりちゃんとめがみちゃんと一緒に、うまく並んで座れたわたしたちは電車に揺られていた。
 
「原さんや奥村さんとはよく遊んでるの?」

「ん、意外とそれほどでもない。奥村が部活忙しいし。まあたまに……カラオケ行ったりとかするくらい。ヤナたちみたいにアスレチック行ったりとかしたいなー」

「こっちも部活や塾行ってる人いるし、わたしもバイトあるし。タイミング合わせるのは大変だよ。でも、『絶対行く!』って強い気持ち持ってればどうにかなる」

「はは、参考にしとくわ」

「逆にカラオケとかゲーセンとか、定番のところ意外といったことあまりなかったことに気づいた……カヨとササの三人で数回いったくらいかも」

「マジー? もったいない。あんな手軽で気軽で楽しいのに。帰るついでに毎日寄ったっていいくらいだよー」

「へぇ、カラオケ好きなんだ? 何歌うの?」

「けっこうなんでもかなー。YOASOBIでしょー」
 え、意外。いや、以外でもないのか? カタちんはマンガが好きだし、アニメも観てる。主題歌を歌うことの多いアーティストの曲はよく歌うのかもしれない。

「あとはー、あいみょんとかSCANDALとかー」
 こっちは逆に、ぽすぎて却って意外かも。

「Almerとか英理沙も良いよねー。adoも好きー」
 へぇぇ……。歌唱力問われそうなアーティストばかりだな。
 adoが曲によっては激情や怒りの感情を表すのに使うがなり声での歌唱はカタちんのイメージに合いそう。

「え、もしかしてカタちん、うたうま?」

「まーね、大体九十五点はいく」

「え、すごいじゃん!」
 へへー、と珍しく照れた様子のカタちんが意外とかわいい。
 
「軽音部とか入れば良いのに」

「楽器もできないのに軽音部とか、恥ずかしくない? 当方ボーカル、全パート募集! みたいな感じヤダー」
 ボーカルだってパートのひとつだ。
 カタちんが例に挙げた事象は、うまいへたはともかく、歌うことは誰でもできて、そしてボーカルは大抵のバンドで最も目立つポジションである。他に仲間がいるわけではなく、楽器を担えるわけでもないのに、厚かましくもボーカル志望でほかを募集で補おうとする厚顔無恥さが露になる事例だ。
 しかしカタちんに、恥ずかしいとかそういう概念あんのか。
 
「合唱部とかは?」

「好きな歌だけ歌ってたいじゃん」

「部活じゃなくても、バンド組んだり、別に歌ってみたみたいな感じで配信したっていーじゃん」

「まーやっても良いんだけど。別に目立ちたいわけじゃないしなぁ」
 
 まあ、それもそうか。
 ミュージシャンになりたいなんて欲求があるなら盛んに活動すべきだけど、歌うのが好きなだけなら、聴かせたいとか知らしめたいという欲を持っているかどうかは別の話だ。
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