スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

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みんなの意見


 
 「いーじゃん。あたしは良いと思う。まあ、あたしが『君届』好きってだけなんだけどさー」
 笑っていたって大抵きつそうに見えるカタちんが、珍しく優しげに微笑んでいる。

「え、同じだなーって思ったけど、実際そこからとったの?」
 ササの言葉にうなずく。

「あー、片岡さんから借りてたもんねぇ。のんには響いたのかな?」

「そういう面もある。けど」
 
 一呼吸置く。みんな聴く姿勢を取ってくれている。
 案を出し合っているときはあんなにしっちゃかめっちゃかだったのに。
 真剣な時と緩いときの受け止め方が、みんな近しい感覚の持ち主のようだ。
 
「わたしはこのバンドで、届けたい想いがあるんだ。届けたい相手も何人かいて。カタちんも、あるよね? みんな、相手も内容もちがくても、そういうのはあるんじゃないかなって思って。それが伝わるようにって希望を込めたバンド名……どうかな?」
 
 直近で感銘を受けた作品のタイトルをそのままなんて、安直すぎるだろうか。
 その作品を本当に好きで熟知し考察しているような人から比べれば、さっと一読したに過ぎないわたしがそのネーミングを借りるなんておこがましいだろうか。
 ちょっと感動したくらいですぐに飛びついてしまうなんてチャラすぎるだろうか。イタいだろうか。
 
 でも、他者からどう思われるかなんてどうでも良い。

 どうせやるのだ。
 せっかくやるのだ。
 込められるものはすべて込めたい。

 もう惑わないと、揺るがないと、決めたのだ。
 ここで問われるのは、わたしがどう思うか。
 そして、わたしと一緒にやってくれるこの場のみんながどう思うか。それだけだ。
 
「あたしも良いと思う。これでいこーよ」

「猫日和諦めて良いの?」

「まーしゃーないね」

「わたしもクリームパンはあきらめよー」

「あれ本気だったの?」

「ヤナ。反対意見なさそうだよ。あ、あたしが出したエビとポテトのビスクソースも諦めてあげる!」
 
 なんだか偉そうなカタちんに微苦笑しながら、みんなに伝えた。
 
「ありがとう、じゃあ、『きみに、とどけ』で申請書書いて出しておくね」
 



 
 あの日のみんなの顔を思い出し、思い出し笑いを抑えながら、完成させた申請書を持って教室を出る。
 一緒に教室を出た渡辺くんは、部活の合宿で任された役割のことで、相談と打合せがあるらしく、二年の先輩の教室へと向かった。
 別れ際、特に言葉は交わしていないが、お互いにエールを交換するような視線が交錯した。
 

 
 世間に、この学校の生徒に、来てくれた知り合いに、サンバを届けるんだ。

『ソルエス』のみんな、友だちのみんな、その場にはいなくても遠くにいる家族に、感謝を届けるんだ。

 ミヤちゃんに、元気を届けるんだ。

 そして。

 おばあちゃんに、好きだよって気持ちと、わたしの願いを、届けるんだ!
 
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