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本章
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開会式が終わり、最初のコーナーは今回のイベントに出店しているキッチンカーの紹介だ。
キッチンカーは全て有名なお店や地元の特産品などを扱った、特別なものばかりだった。その商品を、選手がテーブルで食べながら紹介するのだ。
キッチンカーは七台来ているので、七名の選手が順番に紹介して行った。それなりに時間を割いている。商品を提供しているお店がスポンサーなのかもしれない。
続いて、今シーズンの試合や選手が出演した番組などを材料にしたクイズ大会があったり、チームのグッズ紹介を兼ねた抽選会があったり。
前座的なコーナーが終わると、中締めのような立ち位置で、チームのチアリーダー『ゼルコーバチアーズ』のダンスショーがある。
モニターに映されたステージにはいつの間にかテーブルがどかされ、司会者も捌けていた。
明るくポップな音楽が流れ始めた。
モニターからの音とは別に、会場の方からも音が聞こえてくる。
はじまった!
このショーの後はわたしたちの出番だ。
「よし、いくか!」
ハルさんの言葉で、みんな移動を開始した。
いよいよだ。
いよいよだっ!
ゼルコーバチアーズのダンス終わりから途切れなく、サンバ隊が合流するのだ。
サンバ隊は外からパレードで入場し、外周をゆっくり回ってからステージに登る段取りだ。
ステージを横から見られる位置で隊列を整える。
チアの躍動感あふれるダンスを少し遠めに見る。観客も盛り上がっている。
この盛り上がりをわたしたちが引き継ぐのだ。テンションを下げさせるようなことになってはならない。もっと盛り上げるくらいの気概で臨まなくては。
曲の終わりで、ゼルコーバチアーズがキメのポーズをとった。
わたしたちの番だ。
ヂレトールのカウントの声が轟く。
中太鼓のヘピニキによる『シャマーダ』が響く。バテリアを呼び起こすと言う意味の最初のきっかけのリズムだ。
ここだ!
スルドを打つ。
大丈夫。外してない。
リズムにスルドが加わり、全打楽器が参加してのバツカーダとなったタイミングで、パレードはゆっくりと進みだす。
ステージではパレードが到着するまでゼルコーバチアーズのダンサーたちが揃いの動きでリズムに乗っていた。派手なダンスではなくても絵になる。さすがだ。
パレードはステージの周りを客席の側からゆっくりと半周して逆の出の位置まで向かう。
客席にかなり近い位置を練り歩いていく。
これはこの前スタッフとして参加したイベントのパレードに似た距離感だ。
観客は椅子に座った状態だが、目の前を華やかなサンバダンサーが通り、バテリアの爆音が過ぎていく。
本当は客席に向かって笑顔を向けたい。けど、余裕がない。ソータさんとわたしのふたりだけのプリメイラ。こんなに観客に近い距離で音を外すわけにはいかない。
必死に、なんとかついていく。
阿波ゼルコーバやその選手を目当てに集まったファンの心をどれだけ掴めるか。
この距離感は多分有利なはず。
ダンサーのパッションが、バテリアの音が、観客にとって間近であることと同じく、わたしたちも観客の感動や歓喜を間近に感じることができる。
手を上げて手拍子してくれているひとや、立ち上がって少し踊っているひともいるようだ。
余裕ないなんて言っていられない。
間違えないのはマストだとして、客席の方を見ることはできなくても、せめて笑顔で、楽しそうに演奏しよう。
キッチンカーは全て有名なお店や地元の特産品などを扱った、特別なものばかりだった。その商品を、選手がテーブルで食べながら紹介するのだ。
キッチンカーは七台来ているので、七名の選手が順番に紹介して行った。それなりに時間を割いている。商品を提供しているお店がスポンサーなのかもしれない。
続いて、今シーズンの試合や選手が出演した番組などを材料にしたクイズ大会があったり、チームのグッズ紹介を兼ねた抽選会があったり。
前座的なコーナーが終わると、中締めのような立ち位置で、チームのチアリーダー『ゼルコーバチアーズ』のダンスショーがある。
モニターに映されたステージにはいつの間にかテーブルがどかされ、司会者も捌けていた。
明るくポップな音楽が流れ始めた。
モニターからの音とは別に、会場の方からも音が聞こえてくる。
はじまった!
このショーの後はわたしたちの出番だ。
「よし、いくか!」
ハルさんの言葉で、みんな移動を開始した。
いよいよだ。
いよいよだっ!
ゼルコーバチアーズのダンス終わりから途切れなく、サンバ隊が合流するのだ。
サンバ隊は外からパレードで入場し、外周をゆっくり回ってからステージに登る段取りだ。
ステージを横から見られる位置で隊列を整える。
チアの躍動感あふれるダンスを少し遠めに見る。観客も盛り上がっている。
この盛り上がりをわたしたちが引き継ぐのだ。テンションを下げさせるようなことになってはならない。もっと盛り上げるくらいの気概で臨まなくては。
曲の終わりで、ゼルコーバチアーズがキメのポーズをとった。
わたしたちの番だ。
ヂレトールのカウントの声が轟く。
中太鼓のヘピニキによる『シャマーダ』が響く。バテリアを呼び起こすと言う意味の最初のきっかけのリズムだ。
ここだ!
スルドを打つ。
大丈夫。外してない。
リズムにスルドが加わり、全打楽器が参加してのバツカーダとなったタイミングで、パレードはゆっくりと進みだす。
ステージではパレードが到着するまでゼルコーバチアーズのダンサーたちが揃いの動きでリズムに乗っていた。派手なダンスではなくても絵になる。さすがだ。
パレードはステージの周りを客席の側からゆっくりと半周して逆の出の位置まで向かう。
客席にかなり近い位置を練り歩いていく。
これはこの前スタッフとして参加したイベントのパレードに似た距離感だ。
観客は椅子に座った状態だが、目の前を華やかなサンバダンサーが通り、バテリアの爆音が過ぎていく。
本当は客席に向かって笑顔を向けたい。けど、余裕がない。ソータさんとわたしのふたりだけのプリメイラ。こんなに観客に近い距離で音を外すわけにはいかない。
必死に、なんとかついていく。
阿波ゼルコーバやその選手を目当てに集まったファンの心をどれだけ掴めるか。
この距離感は多分有利なはず。
ダンサーのパッションが、バテリアの音が、観客にとって間近であることと同じく、わたしたちも観客の感動や歓喜を間近に感じることができる。
手を上げて手拍子してくれているひとや、立ち上がって少し踊っているひともいるようだ。
余裕ないなんて言っていられない。
間違えないのはマストだとして、客席の方を見ることはできなくても、せめて笑顔で、楽しそうに演奏しよう。
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