詩片の灯影③ 〜言葉を音に乗せて〜

桜のはなびら

文字の大きさ
18 / 23

ロックバー

しおりを挟む
 私鉄駅前ロックバーはDJがプログラムを組んでくれる。
 バーなので飲み食いやお喋りも楽しみ方のひとつだから、その背景にもなるし、音楽に心を預ければ心地よい時間を楽しむこともできる。そんな、ある意味本格的な演奏を求めたい。

 ここでの演奏を任せたいのは、高校時代に軽音部で出会い、『ソルエス』メンバーがその中にいたことから、バンドごと浅草サンバカーニバルで助っ人として参加してもらって以来正規メンバーとして加わった『カントーラ』のアリスン。
 同じ軽音部のバンドメンバーだったKHOこーとたろーも同じ流れで『ソルエス』入りをしている。
 アリスンは軽音部ではベースも担当していた。珍しいベースボーカルだったのだ。
 この企画でもその経験を生かしてもらい、『ベース』も弾いてもらおう。
 この件のことを話した時、アリスンはコントラバスボーカルやりたいと言っていた。
 ボサノバならその方が雰囲気は間違いなく出るが、他の出演者候補がだいぶ大人びていて落ち着いた雰囲気なので、この現場ではちょっとギャップを魅せたいと考えていた。

 せっかくのロックバンド編成を活かしつつ、天使のような見た目のアリスンの愛らしさも充分に発揮してもらう方として、少々あざといが、躍動感ある系のアイドル的な演出をしてみたいと紗杜は考えていた。
 となると、演奏しながら動けるエレキベースが良い。
 
 メロディは楽器の演奏は大体何でもできるKHOは、サンバならではの楽器7弦ギター『セッチ・コルデス』を奏でる。
 
 ここはバテリアメンバーは出ないので、バンドでリズムも補う。
 通常のサンバの編成では使わないが、ジャズやボサノバでは使われる『ドラムス』を、KHOと同じくどのパートもこなせるたろーに。
 以前あるイベントでキョウさんが、サンバのステージで演奏したところ大層好評だった。
 キョウさんは普段はスルドの奏者だがKHOやたろーと同じくバンドマンで、ふたり同様大抵の楽器の演奏ができる。
 
『ソルエス』発祥の商店街で茶葉や茶器を扱う店舗を営んでおり、チーム立ち上げメンバーのひとりでもあった祖父のリーチと、その娘の母マルガが『ソルエス』メンバーだったこともあり、幼稚園児の頃から当たり前のようにその世界に身を置きダンサーとして活躍していたルイ。
 美しく成長した今はチームを代表する若手ダンサーのひとりとなった。
 ルイは『ソルエス』ではダンサーであるが、高校時代は軽音部で彼らとバンドを組んでいて、『ギター』を担当していた。
 今回の企画ではバンドメンバーの一人として『ヴィオラォン』で参加して貰うことにする。
 
 アリスン、KHO、たろーは、バンドメンバーのルイが『ソルエス』のダンサーだったことでサンバとの縁が生まれた。そういう縁に依る繫がりからの広がりが、『ソルエス』には多い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら
キャラ文芸
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。 長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。 客観的な評価は充分。 しかし彼女自身がまだ満足していなかった。 周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。 理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。 姉として、見過ごすことなどできようもなかった。 ※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。 各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。 表紙はaiで作成しています

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

処理中です...