スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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天候のこと

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 野外ロケは天候に左右されてしまう。天気だったら良いというものでは無い。そのシーンに必要な天気でなくてはならないのだ。
 また、例えば晴れのシーンだから晴れなら良いかと言えば、それだけでは条件を満たさない。
 ずっと晴れだったシーンを撮ろうとするなら、地面は乾いていないとならない。

 ロケ地までのバス移動で、控えめに端の方に座っていた私。後から乗ってきた妃夜さんは最後部の広い席も、他にも空いている席はいくらでもあったのに、私の隣に腰を下ろした。

 移動中に、特になんの意図も感じさせず、なんとなく思ったままのことを口にしていたような妃夜さんから、野外でのロケや天気のことについての知識を得た。


「前の日の夜中に土砂降りがあって。翌朝はすっかり晴れてたけど地面がぬかるんじゃっててね。大きくて分厚い布を何枚も掛けて水分を吸わせたり、掃除機みたいな機械で水分を吸ったり、大きい風を起こす機械や熱を出す機械で乾かそうとしてたよ」

 実際に起こった出来事。大変なことだったろうに、なんでも無いことのように妃夜さんは語っていた。

 その顛末は、大勢の人がそこまで大掛かりなことをやっても、結局撮影は断念したということだった。
「人の営みで、自然に逆らおうとしたってね」と、妃夜さんは悟ったような穏やかな表情で語っていた。
 撮影するかしないかわからないままロケバスや送迎車で待たされていた総勢百を超える演者は、半日以上の拘束時間の果てに、ほぼ夜中に解放された。
 翌日も予備日として抑えてあるが、撮影が済んだパートの演者は帰る予定だったから、宿泊施設がない。制作会社側のスタッフ総動員で片っ端から宿泊施設を当たり、今は稼働してない施設まで頼み込んで開けてもらい、なんとか全員分の目処をつけた頃には日付が変わっていた。

 制作会社のみんなも大変だっただろうけど、待たされた演者たちも疲労困憊だったに違いない。


 この話。更に辛かったのは、結果として翌日も撮影できなかったこと。


 当日の二日間を含めた、この撮影スケジュールのためにかけた労力も時間も予算も消化されながら、案件は何ひとつ進捗しなかったことになる。


 妃夜さんの話を聞いた上だと、改めて思う。
 今日の撮影は非常に幸運だったのだと。

 比較的雨の多い時期ながら、演者全員の都合のつく日が晴れ予報で、しかも予報通りの好天に恵まれたのだから。


 撮影班は、この機にここで撮れるシーンを全部撮ってしまうスケジュール組をしていた。
 なので今日は一日仕事だが、陽気が良く外での待機や休憩も心地良い。


 ドーナツを選びながら、ケータリングを物色する。地方ロケならではなのか、ケータリングで用意されていた地産のシャインマスカットが置いてあった。
 ドーナツとばかうけのコーンポタージュ味に加え、宝石のような果実もいくつか紙皿に乗せて、バスの時とは逆に私の方から妃夜さんの隣に腰掛けた。

 珍しく、妃夜さんが微笑んだような気がした。
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