スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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ロケ地

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(高梨 妃夜)


「おつかれさま」

 初夏の日差しは弱くはないが、木々を通って届くそよ風は少しひんやりしていて心地良い。少し標高が高いのかもしれない。

 仕切りもなく多少の日除けは全ての日差しを防いではいない仮設の休憩所に入ると、先に休んでた妃夜さんがドーナツにかぶりついているところだった。
 自分のペースでゆっくりと咀嚼をし、飲み込んでから、落ち着いた口調で挨拶をしてくれた。
 ドーナツは例によって小国さんからの差し入れだ。
 遠方のロケ地にも顔を出してくれただけありがたいが、なぜか定番になりつつあるドーナツの差し入れを欠かさないでいてくれる気持ちが嬉しかった。
 個人的に毎日食べたいくらいなので、ドーナツがあるとすごく気持ちがアガる。


 小国さんはみんなへの挨拶と差し入れの提供を終え、進行通り進められそうだからか機嫌が良さそうな監督の様子を確認したら、「後はよろしくお願いしますね。何かあれば連絡してください」と、そっと私に声をかけて戻っていった。滞在時間は下手したら三十分にも満ちていなかった。

 今日のロケ地は中部地方の地方都市にある規模の大きい運動公園。空気も景色も空も綺麗な素敵なところ。関東からは日帰りでも行けなくはないが決して気軽に行けるような距離でもないほどの位置関係。
 林間学校のシーンをここで撮影するのだ。
 撮ろうと思えば、近隣のロケ地でも撮れるシーンだ。もっと予算と労力を削るなら、スタジオ内で撮って背景をはめることもできる。
 しかし、ここは監督のこだわりがあった。撮りたいシーンの中に、美宝が一大決心をする場面がある。その場面だけは、どうしても納得のいく背景の中で撮りたいと言うのだった。


 慌ただしくとんぼ返りした小国さんが運転する社用車がみるみる小さくなっていくのを見送理ながら、思う。

 本当に忙しそうだ。

 約束上、私のためにわざわざ顔を出してくれたのだとしたら、流石に申し訳なくなってきた。
 来られない日はお詫びを言いながらも来られないということはあるので、必要だったから顔を出したものだと信じているが。

 ちなみに要さんも今日は不在。
 どうしても外せない講義があり、今回の拘束時間は長くて予定を空けるのは厳しかったのだそう。

 今日のロケは夜まで撮影になる見込みで、今日は宿泊して明日の朝イチで帰ることになっていた。
 泊まりということもあり、要さんはどうしても行きたかったらしく、なんとか予定を調整できないか奮闘していたが、どうにもならなかったらしい。私が心配というのは決して嘘ではないだろうけれど、要さん、今回の案件少し楽しくなってきてないかな? 妃夜さんのファンみたいになってるし。
 一方、今日は久しぶりにしょーちゃんが撮影現場に来ている。しょーちゃんは出社してから自力移動での現地入りだ。
 さっき見かけたけど、今はどこにいるのかなあ。


「おつかれさまです!」

 妃夜さんに挨拶を返した。
 つい、大きな声が出た。

 今日はよく晴れていて、野外での撮影日和だった。
 気持ちの良い天気の影響を受けてしまったか、私の挨拶は明るく元気も良かったと思う。
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