祖父ちゃん!なんちゅー牧場を残したんだ!相続する俺の身にもなれ!!

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冬の月16日(火の曜日) ステラ王国との繋がり

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 初めての冒険の時に遭遇した怪我を負った冒険者は、やっと全回復した。
 俺たちの応急手当が良かったらしく、後遺症もなく、また冒険が続けられると喜んでパーティたちと次の村へと旅立って行った。


 村を離れる時、パーティのリーダーは、意味深な事を話していた。
「あのシルバーウルフ、俺が感じた限りでは生命力がなかったんだよな~」
「それはどういう意味ですか?」
 検問所で旅立つ冒険者たちの荷物を馬車に乗せていたリックさんが、聞き返した。
 俺も最後に挨拶をしたかったので、検問所を訪ね、リックさんやガイの手伝いをしていた時、自然と耳に入ってきた。
「俺、魔物の個体の熱を感知するスキルを持っているんですけど、あの森で遭遇したシルバーウルフからは熱を感知しなかったんですよ。なんていうのかな……実態がないというか……例えるならゴーストタイプ?」
「ゴーストタイプのシルバーウルフなんて聞いた事ないですね」
「何か未練があって地上に残っちゃったんですかね? Sランクの魔物って、個体の突然変異で妙に戦闘能力が高かったり、個体の毛の色が違っていたりするじゃないですか。中にはゴーストタイプに変化しちゃう魔物もいるんじゃないんですかね?」
「なるほど。情報、ありがとうございます」
「またこの村には寄らせてもらいますよ」
 冒険者はニカっと笑った。その笑顔でこの村での滞在の感想がすぐにわかった。
「あ、そうそう。俺に薬をくれたのは君か?」
 冒険者は俺の前に立った。
「そ…そうですけど…」
「いや~、お前の作った薬で助かったよ。俺はステラ王国から来たんだ。もし、ステラ王国に来るようなことがあったら、俺に会いに来てくれよ。お礼がしたい」
「あ~…俺、冒険者じゃないので、外国は…」
「冒険者じゃなくても来ることはできるだろ? 例えば、お前の作った薬を売りに来たりとか。義理の兄に話したら絶対に高値で買ったくれるよ」
「義理のお兄さん?」
「ああ。俺の義理の兄、ステラ王国の国王をしているんだ」
「「ステラ王国の国王様!!??」」
 俺以上にリックさんとガイが驚いていた。
 俺はただポカーンとしているだけ。
「俺の姉が国王の正妃に選ばれてさ、近隣諸国の情報が欲しいからって、冒険を続けているんだ。一番の理由はサウザンクロス帝国で起こっている戦争の影響を確かめるためなんだけど、この国は遠く離れているから影響はなさそうだね」
 ケラケラと笑う冒険者。
 あなたの身分を知ってしまった以上、下手に返事が出来ないんですけど…。
「そうだ! これを渡しておくよ。これを見せてくれれば、ステラ王国には顔パスで入れるからさ」
 そう言いながら、冒険者はコイン型のペンダントをくれた。黄金に輝くコイン型のペンダントトップには、水平線から顔を覗かせる太陽、空に輝く二つの三日月、三日月と水平線の間には星が一つ刻まれれていた。とても丁寧に彫られてあり、鉱石を知らない俺でもこれが金で出来ている事が分かった。
「それは王家の紋章なんだ。王族が認めた人にしか配らないんだけど、俺はお前を気に入った。義兄にも話しておくから、国に来るときは一報をくれよ」
 バシバシを俺の背中を叩いてくる冒険者。
 俺はどう反応していいんですか?


 ステラ王国の王弟である冒険者は、仲間と共に村を離れた。
 その冒険者が俺に王家の紋章に入ったアクセサリーをくれたものだから、村中で大騒ぎになってしまった。
 ラッツィオさんにいたっては、
「わしも親友の1人が国王に仕えている王宮専属の武器職人でな、同じ物を貰っておるんじゃ!」
と、突然カミングアウトしてきた。
 なんでもステラ王国は出来たばかりの国で(サウザンクロス帝国っていう大きな国から独立したんだって)、他国との交流も浅い事から、国王を中心に知り合いや優れた技術を持った人との繋がりを作り上げていっている最中なんだとか。
 でも、ラッツィオさん、この村出身だよね? どうやってステラ王国の人と知り合えたの?
 ま…まさか! 祖父ちゃん絡み!?


 冒険者からの情報を得て、リックさんはもう一度あの森へ調査に出かけると話してくれた。
 もし、本当にゴーストタイプだとすると、後々厄介な事になるらしい。
「ゴーストタイプは同じ属性の魔物を引き寄せてしまう事があるんだ。早めに退治しないと、あの森全体がゴーストタイプで溢れ返ってしまう」
 ゴーストタイプの魔物で溢れ返ってしまうと、冒険初心者が気軽に行けなくなってしまうらしい。なぜならゴーストタイプの魔物は普通の物理攻撃ではまったくダメージを受けないらしい。炎とか水とかの攻撃魔法か、取得者が少ない光属性の魔法でないと倒せないんだって。後は武器に炎や水なんかの属性を付加させた物を使うっていう手もあるんだけど、それはこの村では祖父ちゃんしか作る事が出来ないらしい。ガンツさんも作れないって言っていた。
 今回はリックさんがギルドに依頼を出して、冒険者たちの力を借りることにした。
 出発日の朝まで募集している。


「だけど、ゴーストタイプの魔物なんか、そんなに簡単に倒せるのかね?」
 牧場に遊びに来ていたガイは、リーフを撫でまわしながら大きな溜息を吐いた。ガイも討伐のメンバーに志願している。
「だから多くの冒険者を雇ったんじゃないの?」
「雇っても、ゴーストタイプに一番効果のある光属性の魔法を使える人は誰もいないけどね。もう魔法総攻撃で倒すんだろうな」
「ガイも魔法を使えるの?」
「オレは防御魔法だけ身に着けている。たぶん最前線で魔物の攻撃を封じ込める役目になるんだろうな」
 はぁ~っと大きな溜息を吐くガイ。
 見たこともない魔物との戦いで最前列に駆り出されるのは、辛いだろうね~。
 俺は冒険者レベルが低すぎて、絶対に足手まといになるから志願はしないけど。
「そういえば、ハヤトは覚えてる? あの冒険者の仲間が、遭遇したシルバーウルフが首輪をつけていたって」
「あ、うん。結局何だった? 魔物を操れる道具だった?」
「それが、どうも違うらしいんだよね。パーティの仲間に記憶を留めておくことができる能力を持った人がいたから、その時に付けていた首輪を思い出して絵に描いてもらったんだ。なんか異国の文字で書かれてるみたい」
 ガイはガサガサとズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。
 小さく折りたたまれたその紙には、黒いベルトに丸い何かがぶら下がっている絵が描かれてあった。丸い何かにはたしかに異国の文字が書かれてあり、冒険者の話だと素材は材木ではないかとの話だ。
「材木?」
「そうなんだよ。主任に話したら、特に危険な道具ではないだろうって言っていた。ただ、魔物自体がゴーストっぽいから油断はできないって」
 確かに材木で作られた物は、耐久性が優れていないから魔物を操るには向いていないよな。耐久性のいい鉄とか金とか使った方が長持ちするし。

 ただ、この材木で作られた丸い物に描かれている文字、どっかで見たことがあるんだよね。
 俺が異国の文字を知っているとなると、祖父ちゃんか祖母ちゃん関係になるんだけど、なんかごく最近、これに似た文字を見たことがあるような気がする。
 それに、この文字、俺、読めるかも……。

「う…うぉ…? うぉ……る……ふ?」
「え!? お前、文字読めるのか!?」
「いや、どっかで見たことがある文字だなって思っ………あ、もしかして……」
 俺はすぐに母屋の中に駆け込み、机の上に散らかっていた祖母ちゃんが残した書物をかき集めた。
 たしか、魔物の事について書かれてある書物があったはずだ。魔物だから、たしか……紫色の表紙の書物だ!
 紫色の表紙の書物の後半に、魔物について書かれてある。その中にシルバーウルフだと思われる魔物の絵も描いていあったはず。
「ハヤト?」
 外に置いてきぼりにしてしまったガイが、部屋の中に入ってきた。
 それに気づいていたけど、俺はとにかく祖母ちゃんが残した書物を読み漁った。

「あった!」
 紫色の表紙の書物の、ほぼ終わりのページに、シルバーウルフと、他に二匹の生き物が描かれたページを見つけた。
「ガイ! これを見て!」
 俺はガイにそのページを見せた。
「これは……シルバーウルフ?」
「祖父ちゃんが飼っていた魔物だよ! 祖父ちゃんはこの牧場でこの三匹を飼っていたんだ。俺、小さい頃にこの牧場に来たことあるけど、この三匹はたしかにこの牧場にいた!」
「は…はぁ!?」
「前にミントさんに牧場にいたペットについて話した時、『最高ランクの魔物』って言っていた。俺は犬にしては大きいな~って思っていただけだったけど、祖父ちゃんと祖母ちゃんはシルバーウルフをこの牧場で飼っていたんだよ! それに、シルバーウルフには祖母ちゃんが作ったっていう首輪をつけていた。黒い革のベルトに、丸く削った材木をつけてて、その材木には祖父ちゃんの故郷の文字で【うぉるふ】って書いてあったんだ。祖父ちゃんが飼っていたシルバーウルフの名前だよ」
「じゃ…じゃあ、あの森に現れたシルバーウルフって…」
「祖父ちゃんが飼っていたペットかもしれない。祖父ちゃんが死んだあと、親戚がこの牧場を一回受け継いだんだけど、手入れもなのもしなかったから、ペットにしていた魔物もどっかに行ってしまったって聞いた。もしかしたら祖父ちゃんがいつか帰ってくるかもしれないって思って、あの森に隠れていたんじゃ…」
「主任に話した方がいい。オレ、話してくるよ」
「待って、ガイ。これはただの憶測に過ぎない。俺も討伐に加わって、本当かどうか確かめる」
「加わるって、今の冒険者レベルだと無理だよ」
「足手まといになるのは分かっている。でも、遠くからでもいい。確かめたいんだ」
「……ハヤト……」
 あの森に現れたシルバーウルフが、祖父ちゃんが飼っていた物かどうか調べたいだけだ。そして祖父ちゃんが死んだことをちゃんと伝えたい。
「でも、ハヤト。着いてくるのはいいけど、武器とか防具はどうするの? この間の装備じゃ、シルバーウルフには近づけないよ」
 そう言われてハッとした。

 そ…そうだった……。俺の装備は超初心者だった……。
 勢いで動いてしまったが故に、そこまで考えていなかった……。


 いや、待てよ。俺には最高の装備が揃っているじゃないか!
 祖父ちゃんと祖母ちゃんが残してくれた装備品!!

「ガイ、頼みがある。武器屋のナタリアさんを呼んできてくれないか?」
「ナタリアさん…を?」
「鑑定してもらいたい事があるって言ってくれればいい」
「わ…わかった」
 ガイは母屋を飛び出して行った。
 ナタリアさんが来る前に、祖父ちゃんと祖母ちゃんが残した装備品を並べておかなくては。この中に、今の俺でも身に着けられる物があるかもしれない。



 ナタリアさんはすぐに来てくれた。
「鑑定してほしいって、珍しいね、ハヤ……ト?」
 部屋に入ってくるなり、ナタリアさんは言葉を失った。
 俺は祖父ちゃんがと祖母ちゃんが残した装備品を、ポールさんが要らないからって分けてくれた服を着させるマネキンと呼ばれる道具に、綺麗に飾りつけたのだ。
 前にナタリアさんが見た時は箱から出した状態で、このように全体を見る事はなかった。
「これは……」
「祖父ちゃんと祖母ちゃんが残して行った装備品です。この詳しい鑑定をお願いします。どのような効力があるのか、どんな属性の魔法が使えるのか、すべて教えてください」
「ハヤト、売るつもりかい!?」
「いえ、違います。近くの森に現れたシルバーウルフの討伐に参加したいんです。これらの装備品が俺でも身に着けられるか、鑑定をお願いします」
「シルバーウルフの討伐って、あんたのレベルじゃ無理だよ! 着いていったって、遠く離れた陣営でしか役に立たないよ!」
「わかってます! でも、あのシルバーウルフは祖父ちゃんが飼っていたペットかもしれないんです!」
「…どういうこと?」
 俺はナタリアさんにすべて話した。
 冒険者が見たというシルバーウルフが身に着けていた首輪。それは昔、祖父ちゃんが飼っていた大きな犬が付けていた物と一緒で、祖父ちゃんの故郷も文字で名前が彫られている事。ミントさんから祖父ちゃんたちが飼っていたペットは『最高ランクの魔物』だと教えられた事。もしかしたら、あの森に現れたシルバーウルフは、祖父ちゃんを探しているかもしれない事。とにかく今分かっている事を全部話した。
「…なるほどね。それで、ハヤトは何をしに討伐に加わりたいんだい?」
「何を…って」
「討伐に参加している仲間の手助けをしたいのか、前線で防衛に努めたいのか、シルバーウルフ自体を直接退治したいのか」
「えっと……そこまでは考えていませんでした」
「だろうね。初心者の冒険者は何も考えずに飛び出して行くからね。ま、あんたの考えは分かったよ。ユーキとアスカも、後先考えずに前線に飛び出して行く人だった。その血を引いているってことは、2人と同じことを考えているんだろうね。わかった。鑑定してあげるよ」
「ありがとうございます、ナタリアさん」
 ナタリアさんなら必ず引き受けてくれると信じてた。


 ナタリアさんが鑑定してくれている間、ガイはリックさんに俺が討伐に加わることを伝えに行ってくれた。
 案の定、心配したリックさんは牧場に駆け込んできたが、ナタリアさんが鑑定している祖父ちゃんと祖母ちゃんの装備品を見て、何故か納得してくれた。
 本来の目的は俺を止めに来たんだろうけど、今のリックさんは、その目的すら忘れてナタリアさんと一緒に装備品を見て熱い議論を交わしている。専門的な用語が飛び交っているようで、俺には理解できなかったけど。

 そしてすべての装備品を鑑定してくれた結果、祖父ちゃんの長剣、盾、ブーツ、祖母ちゃんのマントなら俺でも身に着ける事が出来るようだ。長剣には光属性の攻撃付加が付けられており、盾には闇属性の攻撃を吸収する効果が付けられている。ブーツには体力と魔力回復効果と風属性の攻撃を無効化する効果が付けられていた。そして、祖母ちゃんのマントには異常状態(毒とか麻痺とか)になると、それらの症状を反転させる効果(つまり毒の状態なのに体力が回復するとか)が付けられていた。
「どれも素晴らしい物だよ。さすがユーキとアスカだね」
 ナタリアさんは、こんなに凄い装備品に出会ったことがないと感動している。
 リックさんも感激の涙を流している。「わたしも欲しいよ」と言っているが、値段が高すぎて手が出せないとか。
「あと、このアクセサリーの中に、絶対に手放してはいけない物を見つけたよ」
 ナタリアさんはアクセサリーの入っていた箱の中から、一枚のコインを取り出した。
 そのコインには、水平線から顔を覗かせる太陽、空に輝く一つの三日月、水面に映された歪んだ三日月、三日月と水平線の間に星が一つ刻まれれていた。
 俺が貰ったステラ王国の王室の紋章を似ている。唯一違うのは二つ目の月が水面に映っているのか、夜空に輝いているのかだ。
「それは、今のステラ王国の国王様個人の紋章だよ」
「個人の紋章? ステラ王国の王室の紋章ではないんですか?」
「ステラ王国の国王様は、サウザンクロス帝国の皇帝の息子っていうのは聞いた事あるかい?」
「なんとなく…」
「サウザンクロス帝国の皇帝には何人ものの妃がいて、何十人という王子や王女がいる。その王子や王女一人一人に、成人の儀式の時に個人の紋章を授けているんだ。ステラ王国の国王様は個人の紋章を王室の紋章にしたんだろうね。ただ、同じにしてしまうと何かと不便だから、月の位置を変えたようだね」
 え? ナタリアさんもステラ王国の王室の紋章を知っているの? 俺、見せていないよね?
 あ、ラッツィオさんが見せてくれたとか?
 でも、ラッツィオさんはこの間カミングアウトしたばっかりだし、もしかしてステラ王国って有名なの?
「そのコインはユーキ殿とアスカ殿が、ステラ王国の建国に貢献した証で授かっている。向こうの国に行ったら、ハヤト殿は国賓として迎えられるだろうね」
 リックさんまでこのコインの事を知っているって、どういうこと?
「ナタリアさんとリックさんは、ステラ王国の事を知っているんですか?」
 俺の問いかけに、ナタリアさんとリックさんはお互いに顔を見合わせて、小さく笑った。
 そして、
「そうだよ。建国に立ちあったんだ。ユーキとアスカと一緒にね」
と、衝撃的な事を口にした。

 祖父ちゃんと祖母ちゃんが建国に立ちあった!?
 しかもナタリアさんとリックさんまで!?
 一体、どれぐらい前の事なんだ!?
 ってか、祖父ちゃんと祖母ちゃんは生きている間に、何をしているんですか!?


       <つづく>


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