乙女ゲーム主人公の"姉"に転生しました!?

アオイカナト

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レンジデチンノ魔法

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「その名もレンジデチンノ魔法です。」
レンジデチンノ魔法。
名前、ダサ!!
リリーの絶妙なドヤ顔を何故か殴りたくなる。
しかもその魔法の効果って…ものがあっためられるとかじゃないよね!?
「えーーすごい!リリー、カッコいい!どんな魔法なの?」
エミリーは両手を握りしめて興味津々に聞く。
その反応が嬉しかったのか、リリーは表情を崩し、本当に嬉しそうに質問に答えた。
「なんと、その効果は!ものがあたためられるのです!」
レンジでチンの魔法…。
効果もそのままじゃん!
そんな嬉しそうに言われても反応に困るわ!
そういやゲーム内でもこんなしょーもない名前の魔法あったわね…。
プレイしてたときは製作者のネーミングセンスに震えたんだったな…。
でもこっちの世界ではレンジなんて無いし、きっと普通に呪文の名前として認識されてるのかな…?
「凄いね。リリー。」
ユリウスお兄様が穏やかに微笑む。
「これでレンジ要らずだね!」
そう言ってエミリーは椅子の上でぴょんぴょん飛び跳ねた。
あるのね!
レンジ!
まあ冷凍庫も冷蔵庫もあるからあってもおかしくないけど!!
みんなはこのレンジでチンの魔法って名前に脱力感を覚えたりしないのかな…?
「メアリー、レンジデチンの魔法は、レンジの魔道具無しに、ものをあたためられる、すごい魔法なんだよ。」
そっか…。
この世界は魔法って言っても、ほとんど魔道具に頼って動いてる。
そんな中で、魔道具無しで魔法が使えるってことは、すごいことなんだよね…。
…なんか認めたくないけど。
まあ褒めてあげてもいいかな。
「す、スゴイネ…。」
若干棒読みになっちゃったけど仕方ないよね?
大体ネーミングのせいよネーミングのせい。

「ねね、!リリー!その魔法、使ってみてよ!」

わくわくしていたエミリーが待ち切れずに身を乗り出してリリーに要求する。

「ええ、そのためにこのまま持ってきたんです。やってみせましょう。」
リリーは目を瞑ると、凍ったスコーンの上に両手をかざした。
そして、ゆっくりと呪文を唱える。
「#@$$#%~@$%&%##$@*$@」
凄い、全然なに言ってるかわからない…。
「$%$@&*~#!」
唱え終わった瞬間、リリーの両手からオレンジ色の光が溢れ出して、スコーンを温め始めた。
「わぁ…!すごい…!」
エミリーが輝かせた瞳に、暖かい、オレンジ色の光が反射する。
「綺麗…。」
私はそう呟いていた。
これは確かに魔法だ。
聞くのと実際に見るのじゃ大違いって本当。
ほんわりとした暖かい光は、ゆっくりとスコーンをあたため、キツネ色の焦げ目をつけていく。
今、目の前で小さな奇跡が動いてるんだ。
いつの間にか、壁に控えていた筈のアベルも、この小さな奇跡に惹き付けられるようにすぐ側に来て見つめていた。
みんなが魔法に見惚れたまま、暖かい光とともにスコーンの甘い香りが立ち始めた頃、
「こんなものですかね。」
リリーがそう呟いて手から力を抜くと、彼の手から溢れ落ちていた暖かい光は一瞬で消え去ってしまった。
「あ…。」
みんなから残念そうな声が漏れる。
もっとあの魔法を、見ていたかった。
その気持ちは、みんな一致していたと思う。
「魔法って、素晴らしいのね…。」
ぽろりと、私の唇から言葉が漏れた。
「あぁ、本当だね。」
ユリウスお兄様は夢から醒め切っていないような表情で返事をする。
こんなしょーもない名前の魔法でさえ、こんなにも美しく、惹きつけられるなんて、他の魔法はどんなに素晴らしいんだろう。
絶対に魔法学校に入りたい。
このとき初めて、私は強く明確にそう願った。
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みんなの感想(4件)

伊予二名
2020.06.11 伊予二名

第2話。攻略対象が気狂いばっかりな件(๑╹ω╹๑) マッドサイエンティストもいるのか〜

攻略(物理)を検討したほうがいい。鏖殺の方向で。

解除
伊予二名
2020.06.11 伊予二名

第1話。白雪姫、居るんだ(๑╹ω╹๑)

解除
2019.06.01 ユーザー名の登録がありません

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