竜の恋人

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異世界生活スタートです。

回想(アルホンス)

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儀式成功に歓喜する者や、儀式で魔力枯渇を起こして倒れている者達など、多くの者達に囲まれながら、今回『聖女召喚の儀式』で召喚された二人の少女は、お互いを庇い合うように身を守り、説明を求めていた。

召喚後の説明やその後の事で主として『聖女』のお世話をするのは、儀式会場国である『ヒト族の国』ロザリアン神聖国と決まっている。そして、各国は自国に報告後、聖女と共に『浄化巡礼』の旅に付き従う者を派遣する事になる。
また、各国は『浄化巡礼』を支援しながら、自国での討伐も行なっていき、『扉』からの『悪魔降臨』を防ぐんだ。

召喚の儀式を立ち会った俺は、なぜかその少女の事が気になった。
召喚用の儀式の間。その中央には儀式用のサークルが描かれ、主として儀式を行う神官長はじめ多くに神官職と、各国の魔力の多い神官職の者達や、魔法師達が魔力を注ぎ込んでいた。
やがて、サークルが光りだすと、天高く光の柱のように輝き始め、人影が現れた。
会場内は固唾を飲んで見守り、輝く光が消えたと同時に二人の少女が現れたのだ。

その瞬間、何とも言えない香りが漂ってきた。
甘く甘美な香り…
それを感じるのが自分だけであるというのにも衝撃を受けた。

香りの元…現れた二人のうちの一人。
神官長や神官職に囲まれ連れて行かれていく少女ではなく、まるで拘束されるようにこの国の皇太子や騎士達に囲まれた少女。
その少女を見た途端。『ソレは自分のモノ』だと自覚した。

自分のモノだ。誰にも渡したくない。
誰にも傷つけさせたくない。
自分だけの大切な…
身体から、魂の髄まで食べ尽くしたいぐらいに…

ここまでの執着は、その少女が自分の『運命の番』であるという事だろう。

連れて行かれる先には不安が募るが、今奪い去れば下手すれば国際問題になりかねない。
それが例え『番』に対しての事でもだ…
だが、指を咥えて見ているだけでは…
彼女が傷つけられるだけなら…そう、身体の傷なら自分が癒せれる…
だが、命を刈り取られるようになれば…

そう考え、すぐさま殿下に報告•相談した。
『番』に対しての迫害は、どの国でも許されない事だ。
ただ、相手が知っていた場合だが…
知らずにしてしまった場合は…黙認されてしまうことも…

だから、すぐさま行動に起こした。
王家の代表である殿下が動けば、公爵家の自分よりも国家間においては遥かに影響力がある。
殿下がすぐさま謁見を申し入れ、その件について伝えてもらえた。
よって、彼女の身の安全はとりあえず確約が取れた。

ただし、これまで『聖女召喚』で現れた『聖女』は一人。
彼女はイレギュラーである。
よって、国民に彼女を秘匿し、『浄化巡礼』が終わるまでは、何かあった時のために、この国に留めておく事になった。秘匿の手法として、『髪と瞳の色を変える』との事。
ただこれは、一時的に変えるだけの魔法薬ではなく、一度飲めば半永久的に変わったままなのだという。
これは、各国の国民が不安にならない為もあるが、それともう一つの思惑もあった。
そう、あの国の一部の者…あの者達が彼女を狙う可能性があるからだ。
これは、あの国の上層部から直ぐに連絡があった事でもあった。

殿下が謁見を申し入れた時、同じ女性の件であった為、あの国の王族代表が同席し、極秘会議となったのだとか…
彼女からその事がバレてはいけないので、敢えて伝えず、騙す形で『髪と瞳の色』を変えてしまい、この国の別の場所に居ていただくとの事だった。
身の安全は保証するとはいうが、絶対とも言い切れない。
よって、我が国と隣接する場所で、『竜人族』である我らが護衛に付くという提案を行なった。
戦闘能力は『ヒト族』より、我らの方が上なのだ。しかも、彼女は私の『番』である。
誰にも任せられるはずがない。

『ヒト族』も、『多種族』も、勿論、『番』については理解しているし、常識的知識である。
だから、それはすぐさま了承された。
ただし、護衛の『竜人族』は、『番』である者と、もう一人。そう、二名とされた。
でないと、例の者達にバレて、問題が起こる可能性が強くなるからだ。

彼女の隔離場所として、大陸の大陸中央を位置する『ヒト族の国』の中心の王都と神を祀る神殿とかある神都市からやや南西側にあたるシュタルク領とした。このシュタルク領は西側の『妖精の国』と、南側の『竜の国』に隣接した辺境地だ。だから、何かあれば、自国に連れて行くことも了承させた。
まぁ、後々、この国を出て、我が国に迎えるのだから、遅いから早いかの違いだけだ。
そして、彼女の護衛は私と殿下の二人。
これは国にすぐさま報告に戻り、殿下が『自分が一緒に行く』と言い出したのだ。
殿下とは親しい友人でもあり、信頼もしているが…面白がってだろうと思う。
本人も『こんな面白そうな事、他の者に任せられない』と言っていたから…

彼とは友人であるから、敬語は公式の場以外は禁止されていた。
まぁ、ありがたいがな…

そうして、一時国に戻り、直ぐ様殿下とこの地、この屋敷にやってきたんだ…




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