竜の恋人

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異世界生活

異世界

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どれだけかけていったのだろうか。
気がつけば、見知らぬ場所にいた。

「ここ何処?」

みんなを置き去りにして走ってしまったんだ。
追いかけて来てくれたのかもしれないけれど、姿が見えない…

「ここにいるよ」

そう声が聞こえた方を見る。
周りは鬱蒼とした植物に囲まれていたが、気分が悪い感じはないし、薄気味悪くも感じない。
蔓のような植物の間にちょこんと座っているのはルシル。
クスクスと笑っていた。

「ユーリが、あの場所から離れたがっていたから~、ここに連れて来たんだ~。」

間延びした声でそう応えてくれたが、ここは何処?

「ここは?」
「ん~。僕たちの世界だよ。ユーリがいる世界と表裏一体みたいな感じ?ほら、向こうに友達がいるんだ~」

蔓に囲まれた一部が開けていき、花畑が見えた。
飛び交う光。
大きなモノもあれば、小さなモノもいた。
泉のような場所が見え、そこに蓮の花のようなモノも見えた。
その花がパンと開き、そこから小さな光が飛び出した。

「あれはね~妖精が生まれたんだよ。ここは妖精が生まれたりする場所なんだ。」
「そんな大切な場所に今私がいるの?」

驚きで思考が停止する。
人がいるべき世界じゃないよね。

「ユーリにあげたいモノがここにあるんだ。見せたかったのもあるけどね~。それに、ここなら見つからないよ。きっと」

見つからないと言う事は、戻れないと言う事だろうか…
あの場には居たくなかったけれど、別の世界に逃げたかったわけではない。
しかも、姉を置いて、去るなんて…
戻るなら、姉と一緒。
別の世界に行きたいわけではない…

あの人と…会えなくなる事を望んだわけでは…
ただ、そうただ…

「ん~。悲しいの?ここなら辛くないよ?」
「そうじゃなくて…」

自分のいる場所がなくなって辛かったんだ。
私は…あの人の事が気になって…

自分がいた場所に違う人が居たのが辛かったんだ。
それだけ、あの人に事が…

「帰りたい?辛い事あるかもよ~」

「うん。帰りたい。帰りたい…」

しゃがみ込んで泣き出した。
今まで我慢して来た事が一気に膨れ上がり、涙が止まらない。
頭の中もぐちゃぐちゃになって、考えがまとまらない。
浮かんでは消えて、また浮かんでを繰り返した。

「ん~、向こうからすごい魔力を感じるね。無理やりこじ開けようとしてるみたい。困ったな~。渡さないといけなモノがあるから、それを取りに行こう」

よくわからないけれど、両手を持ち上げられ、そのまま身体が浮かび上がる。
右手にはルシル。左手には光が集まって持ち上げられた感じだ。
そのまま、ふよふよと飛んでいく。

泉に浮かぶ大きなは蓮のような葉っぱの上に降ろされた。
一瞬沈むのではと驚いてビクついたが、ふわふわのクッションの上に乗った感じだった。

「そのお花に手を入れてみて。出来たら両手ね」

そう言うと、ポンと大きな花が現れた。
そっと手を伸ばし、恐る恐る手を伸ばす。
そっと伸ばして触れたのは…

花粉に触れたと思うと、いきなり弾けた。
そして現れたのは、可愛らしい猫?
何で猫?しかも小さい。
色は猫にはありえないピンク色。
ピンクと言っても桜色だった。

もう一つの花粉にも触れてしまい現れたのは青い色。空色と言ってもいい綺麗な色の鳥?
どう言う事??

「うん。よかったね。僕達からのユーリのプレゼントなんだ。この子達の希望でもあってね」

そう言うと、ルシルの姿が大人になった。

「ユーリ。この子達に名前をつけて。付けてくれないと、この子達は消えてしまうよ」

そう言ってクスッと笑われた。
名前を付けないと消えるってどう言う事?
尚更分からない。

「ほらほら、急がないと、来てしまう。消えてしまうよ」

そう言われて、慌ててつけた。
桜色だから『サクラ』空色だから『ソラ』と。
ネーミングセンスが無いのはわかる。そのままの色だもの。

サクラとソラと名付けた猫と小鳥は、私の肩に乗った。
決して重くは無い。
体重を感じない。

「この子達は妖精だよ。君のために上生まれた子だ。可愛がってね。もちろん私も…」

そう言うと、大人になった姿から元の可愛い子供の姿に戻った。
ルシルっていったい?

「今は深く考えなくてもいいよ~。ユーリの味方。もう破られそうだ…」

大きな爆発音のようにも感じるし、風船が破裂したようにも思う不思議な音を感じ、見えていた物が崩れ去った。

いきなり抱きしめられる。
見知ったこの感じは…
欲しいと思った温もりを持つあの人だった。
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