兄様達の愛が止まりません!

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悪役令嬢回避

聖女が来たせいで…ギルベルト

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今、私とアシュはシャルル殿下に呼ばれて、生徒会室に来ていた。
以前は側近候補として側にいたが、今は私にとっての殿下は、歳下の幼馴染で友人だ。
自分達も言いたい事が有ったが、急に呼び出すとはどうしたことかと思った。

友人であるが、あえて生徒会室に呼び出したんだ。
他に聞かれてはまずい事でもあるのだろうとも思ってもいた。

私とアシュは、この所あの聖女と呼ばれている女生徒が、頻繁に私達の周りをウロチョロして鬱陶しかったから、確かシャルル殿下が聖女の世話役を仰せつかっていると聞いていたから、どうにかして貰おうと、入室して直ぐに苦情を訴えたんだ。

異世界から渡ってくる『聖女』という存在は以前から知っていた。
アシュがまだ『僕』と言っていた頃、そう、私達の大切な宝物的存在であり愛しい婚約者達。
義理で弟や妹となったエルとレインが、自分達は『悪役令息』『悪役令嬢』という存在になりたくないと思いながら奮闘していたあの時に…そう、運命的に出逢った時に私やアシュのスキルで何度か垣間見たから知っていたんだ。

アシュ愛しいエルは幼いながらも頑張り屋で、妹であり私の大切な存在レインを大切にしていたんだ。

運命のイタズラで幼い時に両親を亡くし、エルは家督を奪われていた。
遠縁と言う男が屋敷を乗っ取った形で、妹と共に虐げられていたと言ってもいいだろう。
唯一の大人であるメイドの女性に守られて頑張っていたんだ。

父上達が無事救出した時には、あの子達とその女性だけがその地に残され、他は魔獣や魔物に追い出されるかのようにその地から逃げ出していたんだ。

その地は一時的に閉鎖され、子供達二人と女性は我が家に受け入れらやって来た。
エル達の父親が昔我が家に養子として、父上と兄弟として育っていた敬意もあった。

私はエルやレインの父親と一緒に暮らした事もあるし、私達は両親に連れられてエルの両親達に会いに行った事もある。
生まれたばかりのエルとレインは天使のように可愛らしく愛らしくて、私達兄弟はそれぞれ心を奪われていたんだ。しかしその後ずっと会う機会がなかったから…その事を忘れていた。

再度会った時、そう衝撃的な出逢いは、弱々しく傷ついているその子、レインが当時の私に微笑んだんだ。
その笑顔で撃ち抜かれた。
この子は私の運命的存在だと再自覚したんだ。私のものだと…
一族男子特有の『執着心』が芽生えたんだ。
それはアシュも同じで、アシュはエルの方にその矛先を向けた。

この子を守り護るために全てが知りたくて、アシュがスキルを使って覗けば、エルは前世の記憶持ちだった。しかも異世界というこの世界とは別次元。
そこでこの世界に類似したゲームという遊具と小説という物語や、アニメや漫画という不思議な動く絵や絵本のようで…でも絵で全てを訴えてくるような、ふしぎな本でこの世界の未来が描かれていた。
それを私は共有して見たんだ。また、レインは双子特有のリンクとスキルの未来視で見ていたのを私が確認した。

その中のエルとレインは、本人達が「なりたくない!」と言っている『悪役』という役割の者だった。

私達家族の悲劇や、その他の出来事で嫌われて…でも受け入れてもらいたいが、残念ながら悪い方向に模索してしまった二人は、結局は嫌われ者だった。
二人が生まれた故郷から各地域に魔物被害が勃発していき、世界は混乱の渦に呑み込まれようとした。その時、各国の密談により『聖女召喚の儀式』が執り行われ、現れた聖女という者に全ての者が癒やされていく…そんな恋愛物語だったんだ。
その物語では、あの子達は殺されていたり、悲惨な死を迎える事がほとんどだったと思うけれど…。

だが、実際のあの子達は純粋で可愛らしく、健気でもあった。
家族の悲劇になるはずの出来事を必死で回避してくれて、その悲劇は我が家で起こる事はなかった。
まぁそのせいもあって、我が家にはとんでもない秘密の場所ができ、普通では出会う事が出来にくい者達と契約までできたんだけれども…。

あの子達の能力は、とにかく我が家に多くの幸せを寄越してくれた。
そして、自分達が愛する者も幸せにしたいと強く願ってくれて、私達家族を巻き込み、さらに多くの者達を魅了して巻き込んで、この国を世界を守り護るために貢献してくれていたんだ。
そんな愛しい婚約者達を他の者に奪われないように、逃がさないようにしっかりと私とアシュの側にと、あらゆる事を模索して実行していったんだ。
それは現在も進行中だ。

エルは、この世界の窮地を脱するために、まずはこの国のためにと貢献してくれたんだ。結果、この国では魔物や魔獣被害は激減し、最低限の行動でどうにか出来るぐらいに…。そしてその力の影響は徐々に各国に広がりつつあったんだ。レインはエルの補佐として頑張ってくれていた。

だが、他国にまで我が国のようにはいっていなかった事もあり、結果あの子達が以前から懸念していた『聖女召喚の儀式』が執り行われてしまったんだ。
行われた日は、エルが最後の地に『桜』を植えて、精霊王との約束を守ると、魔法陣が発動したあの日だ。
だから、私やアシュ、父上もその儀式には参加していない。するつもりもなかったしね…。

私達は愛しい二人の側にいたいし、守り通したかったから、幼馴染の友である第二皇子殿下の側近候補からあえて外れもしたんだ。聖女にも関わりたくないし、愛しい婚約者達にも関わらせたくなかったから、とのかく会わないようにしていたんだ。
しかし、聖女本人が私やアシュに接触しようと動いていた。
それに、不審な発言も多く聞こえてきていたんだ。

この国はエルやレインのおかげで安定していたから、聖女は神殿か王城でこの世界の知識を得たら、すぐに各国に巡礼に向かわせると決定されていたのに、「絶対に学園に通いたい!」と訴えたり、エルが精霊王に頼まれて植えた『桜』がある場所に『巡礼の旅』と称して訪れたがっていたようだ。

学園では図書室や図書館でアシュの姿を探しまわり、「何でいないのよ!」と叫んでいたと報告されている。
アシュがエルを覗き見た時の、あの場面を実行したかったのだろうが、我が家では『妖精のイタズラ』は行われる事はなかったし、その妖精や精霊から教えを乞う事ができているから、調べる必要性がなかったんだ。

そう、『妖精のイタズラ』は阻止され、奪われるはずの弟アルは、元気で今では剣術の稽古も乗馬の稽古もしている。屋敷では妖精や精霊が温室で過ごしており、アル自身は『妖精の愛し子』となっているんだ。
アルが奪われたせいで命を落とすはずの母上も、父上と仲良く毎日を過ごし、つい最近妹が生まれたんだ。
名前は『アイーシャ』で、家族では『アイ』と呼んでいた。

聖女召喚のきっかけとなるはずの第三皇子殿下も実際は起こる事がなかったから無事なのだが、自分と同じクラスにいた時は驚いていたらしい。

「何でこのクラスに?魔力器官が壊れたりして、神殿で聖職者の道に進むはずなのに…」と言って、第三皇子殿下に変な顔をされたとか…。聖女巡礼メンバーも違うとごねたらしいが、選ばれた者の中には隣国の王子達がいて、聖女に優しく接していたらしいから、それは嬉しそうに受け入れたらしい…。
だが、本来のメンバーの一員とされる私やアシュ、そしてもう一人の攻略対象者であり、私とアシュの友人の姿を探し回っていたらしい。
特に友人には「側にいて欲しい」と何度もおしかけて言い続け、第二皇子殿下に苦情を届けられていたんだ。

彼の母親は、彼が幼い時に急に姿を消していたんだ。
いきなり彼の父親の目の前で姿が消えたんだ。だが、聖女召喚のあの日に戻ってきたらしく、現在父親と一緒に母親と仲良くしているらしい。
せっかくの母親との大切な時間、生活を邪魔して欲しくないと言ったそうだ。やっと会えた母親なら、側にいたいのもわかる。色々話したい事もあるだろう…。

巡礼の旅に行く前のお披露目パーティーは、母上の出産で欠席したんだ。
行きたくなかったのももちろんあったけれどもね…
その時は、城の噴水あたりで私を探して「何でいないの!ここで私が慰めて私に好意を持つはずなのに~~~~~!」と地団駄を踏んでいたらしい。
聖女としてどうだ?と心底思った。

そうして、逃げ仰せていたのに、何処かで私達二人がいる場所を見つけたのか、エルとレイン、アシュとの食事の時に邪魔しに来たんだ。
食事を一緒にと言ってエルやレインの場所を奪おうとしたから、そのまま席を譲って別の場所に移動した。
第二皇子殿下達が世話係を皇王から仰せつかっていたから、急いで駆けつけて対応してくれて助かった。
その後も待ち伏せなどされ続けて、とにかく鬱陶しい!
第二皇子殿下に何度も苦情を言ってきたんだ。

第二皇子殿下も何か思う事があるみたいで、苦笑いされていたが…。
「少し調べたい事があるから」と言われて、その時は引いたんだ。

エルとレインの姿が、例のゲームとかで見た時の姿と違っていたから、単に私達二人の側にいる者としてしか、その時の聖女は捉えていなかったようだ。
それは第二皇子殿下から後で聞いた。

私達二人と接触できないし、自分を引き立たせてくれる役割の『悪役令息』『悪役令嬢』がいないと呟き、それは誰のことだと聞けば、エルとレインの名前が出てきたと…。
それも、その時の第二皇子殿下情報として訊いた。

そして、聖女の取り巻きから、エルとレインのことを聞き出し、しかも婚約者が私達二人であることに怒り心頭だったと…。
殿下は、二人の身が危険になれば、フィンレイ侯爵家から皇王に苦言を言われるだろうし、場合によっては国から離脱宣言されかねないと、急いで俺と兄上をこの場に呼んだと言われたが…。
ならそうならないように対応してもらいたい!

聖女が現れてからの彼女に関しての報告書と、他国での『巡礼の旅』での状況。
確かに聖女としての力は持っているようで、とある遺跡で聖物を発見。
過去の聖女が使用していた『双剣の聖剣』であると判明して聖女が持つことになったとか。

その剣は、聖女の力を更に引き出してくれるものでもあるし、魔獣に触れたら黒きチリのように消え、魔物なら魔力を奪い、傷が塞ぎにくく、場合によっては絶命するほどの傷を負わせれるらしい。
他国で刺客に襲われた時は、その剣で身を守り、その剣先が相手に触れた時があったとか…。すると、人にも魔素は存在するせいか、魔力が剣の方に奪われて、負った傷も魔物の時のように塞がりにくかったらしい。

その剣の危険性を感じて、巡礼が終われば国庫の奥に…
次に必要になるその時まで封印する予定だと言っていた。

他にも、他国で澱んだ魔素に多く触れた時、聖女自身が少しおかしい発言が多かったとも…。
魔素は負の感情やその他で澱む事がある。それに多く触れれば人もおかしな言動をすると報告が過去にもあった。
聖女であるから、大丈夫だと思っていたが…もしや…

そういう考えや問題視がも多く持ち上がり、私とアシュを急遽昼休み、生徒会室に呼んだのだと言われたんだ。
生徒会室には第二皇子殿下と側近達のみ。
厳重に結界も施し、誓約魔法もかけているから、他にこの事が漏れる事もないと言って…。

一通り話を聞いて、ふざけていると本気で思った。
すると、急にレインの身の危険を感じたんだ。
アシュの方もエルが危険立だと察して…。

「エルとレインが危ない!危険だ!」
「あぁ、殿下、申し訳ないが失礼する!」
「待て、俺も行く!」

苛立ちながらも、殿下達を伴い駆けつけて行った。
私達二人だけなら転移で間に合うのに…
殿下が一緒にと言われてしまえば、断れない…。

全速力でついて来れない者は関係ないと判断して、とにかく走ったんだ。
そして、目的の場所周辺には多くの人だかりが…。
殿下の権限を利用して掻き分けていくと…

レインと、二人の侍従として付いている獣人二人をエルが庇い突き飛ばし、聖女が持つ双剣がエルの身体に吸い込まれるように刺さった…。

血飛沫が上がり、悲鳴が湧き起こる。
聖女の側には他国からきた三人の王子達が呆然としていた。

その三人が、どんな理由でか聖女を守り攻撃したのであろう…その場所は、エルとレインが無意識に力で守った魔力の残滓が残されていたんだ。
教室内で攻撃魔法などあり得ない。
それに…
女生徒達は意識なく倒れているし、男子生徒は何かの力で圧をかけられ、急に解除されたようで、身体が崩れるように床に座り込んでいた。
エルやレインの友人達もそうだ。
何とか手を伸ばしてエルが突き飛ばした三人を受け止めようとしていたのが見てとれた…。

全てがスローモーションのようにゆっくりと見えるが、自分達が加速してエルの側に行けるわけでもなかった。

次の瞬間、エルは自分に刺さった剣を一本抜いて自分の目に切先を…
エルと契約している獣人が急いでそれを止めようとした。

わずかにズレたようだが、先はエルの瞳をしっかりと傷つけたようで、そこからも血が…

侍従はエルに刺さった剣を全て抜き、忌々しく遠くに捨てるようにして投げ、カランカランと音がした…。
急いで止血しようとしてくれているが、血が止まる事は…

「エル!!」
「レイン!!」

そこでアシュと共に叫びかけよる。
アシュは血に濡れたエルを抱きしめて…
私は意識が朦朧としているレインを抱きしめ、魔力を送った。
そうしながらも、周囲の把握を行いながら父上に緊急要請を送ったんだ。

背後で笑い転げる聖女。彼女が無意識に魔力をまた発動させていた。
それは闇…。
アシュが魔力をエルに分け与えながら、聖女からの魔力攻撃を妨害している。
私はレインやアシュ、エルにこれ以上危害が及ばないように配慮して、第二皇子達が魔力で聖女の魔力を抑えこんだ。騎士団の者も駆けつけて、周りが一気に脱力し出した…。
学園長が魔力封じの魔道具を聖女にいくつもつけたからだ。
他国の王子二人を連れて、そのまま出て行ったのを確認する。
何故か一人だけ残った王子が双剣を手にして、自分の空間魔法であるアイテムボックスに投げ入れていたようだが…
それどころではない…。

アシュが懸命に魔力を送り、治癒も試み、傷口の圧迫も行っているが…傷が塞がらない。
血も止まらない…。
床には血溜まりが増えていく…

アシュの方にも行きたいが、レインもかなり魔力を奪われていたんだ。

何で俺は側にいなかった…
何でエルが…
何で何で何で…………………。

アシュがそう心の中で唸り声をあげている。
私とて同じ気持ちだ。
長兄として守らなければいけないのに、なぜ!!

「兄様…ごめんなさい…。」

エルはアシュに心配をかけないように、あの時見せた笑顔を、送っていた。

そのままさらに顔色を無くし、エルの力が抜けて…

救護班がエルを渡すように言ってきたが、拒否して抱きしめて、更に多くの魔力を更に送り続ける。


「俺から奪わないでくれ~~~~!!!」

悲痛の叫びを聞き、慌てて来た父上が、私達の姿を見て驚愕していた。

驚きと悲しみと怒りが湧き起こる…
そして、父上の背後に…静寂な怒りを抑え込んで現れた存在がいた。

その現れた存在に気がついたのは私と父上レイとアシュ…。
そして第二皇子殿下だった…。

その存在はアシュごとエルを抱きしめて、一気に転移魔法を展開したんだ。

現れたのは精霊王フェリス。

転移した場所は屋敷のあの温室。
温室のあの樹の前に転移してきたのは、アシュと抱きしめたままのエル。
あの時いた配置のままで、私と抱きしめているレイン。侍従の二人、父上とレイだった…。

「あの場にいた皇族に後は任せてあるから大丈夫…」

精霊王フェリスは、それだけ言うと、アシュの腕の中にいたエルが…
腕の中から奪った…。

「エルを…」

アシュはそれ以上は声を出すことができないようだ。
この中で一番上位の存在がそれを許さないんだ…。

その存在は、エルを枝垂れ桜の方に抱いて連れて行く…。

枝垂れ桜の枝がサワサワと揺れて、まるでエルを包み込んで抱き上げるように巻きついて…

エルの身体の下半身は幹の中に抱き込むように埋もれていった。
上半身も幹の中に埋もれていき…
首から上だけが埋もれず、枝垂れ桜に抱かれているかのようにも見えた…。

またサワサワと枝垂れ桜は揺れて、エルはまるでその中で眠っているかのようだった…。

「これで傷が癒え、魔力が戻れば目覚めるだろう…」

そう言って、消えたんだ。
精霊王フェリスがエルの命を救うべく現れてくれたんだ…。

アシュは枝垂れ桜のもとに行き、そっとエルの頬に触れる。
さっきの冷えて行く感覚は無く、微かに温もりを感じているようだ…。

流れ出ていた血も既に止まり、傷を負った瞳の方にも瞼は閉じられたままではあるが…
多分、傷は癒えていっているんだろう…。

エルの唇に指を這わせ、そっとアシュは自分の唇をあわせた。
そこから少しだけ魔力を送っているんだろう。

エルの命が繋ぎ止められた事だけ今は感謝する事にした。
だが、何とも言えない気持ちだ。

父上やレイは急ぎ行動を移したようだった。
私はぐったりしているレインを部屋に連れていき、医師に見せる事にした。
獣人の侍従は、一人は私達の後をついてきた。
もう一人はエルの側を離れないつもりだろう…

アシュは…エルの側にしばらくついているだろうと、そっとしておく事にしたんだ。

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