竜の国のご都合主義？

驚きは急にやってくる

誕生日

誕生日当日も、清々しいぐらい、良い天気だ。
僕の日頃のおかげか。
誕生日って、何だかワクワクして嬉しい。

侍女と執事やその他侍従達は大忙しだ。
厨房も、戦争状態だと言っていた。

「ねぇ、やっぱりこれって必要？」

朝から風呂に入れられて、体の隅々までいつもよりも丁寧に洗われた。
その後、マッサージだ。
まるで女性陣がパーティに出席する前の準備みたいだ…

「はい。この後、挨拶文の確認などもありますよ」
「それがあったよね…僕、人前で話すの得意じゃないんだけど…父様が全部喋ってくれないかなぁ…兄様でも良いけど」
「はぁ～～？何を言ってるんですか、ご自分の誕生日会ですよ。参列される皆様に感謝の意を自分の言葉で告げなくてどうするんですか？しかも、今回特別な成人のお歳の…ですよ」
「ジャス。わかってるよ。でもさ、お前には愚痴っても良いじゃないか。それより、いつもの言葉遣いにしてくれよ」
「愚痴ぐらい、いつでもお聞きしますよ。今は仕事中です。それに、他の者もいますから」
「わかったよ…」

そうだよね…仕事中だ。
この前、ベスターに怒られてた…
『きちんとわきまえて接するように』と。
僕にも、『申し訳なく思いますが…』と言いながら、説教された。

生まれる前からベスターはこの屋敷で仕えている。
父と友人関係であり、共に戦ったこともあるのだとか…
そう言えば、若かれし頃、『冒険者』もしてたって言ってたなぁ…
有名人だったとか？
ベスターって、何者？って思う事が時々あるんだよね…
詳しくは教えてもらえないけどさ…

「カルロス様、少し失礼します。ジャスティス」
「何でしょうか？」

侍従の一人が一礼して部屋に入ってきた。そしてジャスに何やら話している。
仕事の連絡事項かな？


「ありがとうございます。カルロス様、父君がお待ちのようです。急ぎ着替えましょう」
「わかった」

侍従にお礼を述べてから、僕に声をかけてきたから、それに対して返事をした。
父は、僕の予定とかを知っているはずだから、少し待たせても怒られることはないが、それでも急いだほうがいいだろう。
準備されている衣装に着替え、髪もセットされた。
少し癖毛のある黒髪を、香油をつけて櫛でとかされた。
公式の場の兄達みたいに前髪を後ろになでつけたかったんだけどなぁ～
だって、大人っぽくてかっこいいと思うんだ。
でも、それは却下された。
何で？

「よくお似合いです」

そう言って、満足げに僕を見るジャスに連れられて、父の待つ執務室に向かった。