竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
239 / 269
未来に向けて

アカデミーに(ジャディール)

しおりを挟む
この頃、私のカルが気落ちしている姿をよくみた。
まだ学生である彼を公の場で『妻』としていないが、既に彼は私の愛しい者。卒業と同時に大々的に挙式を行い名実共に我が妻として共に生きて行く予定だ。

そう、彼はアカデミーの学生であるから、現在は寮生活。
アカデミー内では婚約者である事だけ周知し、教授と生徒の関係になっている。
一人の生徒を特別視する訳にはかないからね。
学業に関しては、そんな事はする必要性は、彼に関してもないのだけれども、贔屓目にしていると勘繰る輩もいるだろうし…

まぁ、講義に対しての資料整理などは手伝ってもらっているが、それは他の生徒もだから…
二人きりの時間が少ないのは残念でならない…

『扉』の脅威も無事に去り、多少の魔物や魔獣の討伐や、その他の雑務も大分と落ち着いて来たから、これから彼が卒業するまでの期間と、アカデミーの仕事を楽しみにしていた。

そんな時、彼の様子が変だと思う報告が上がり、実際もそう感じる場合が多々あった。
側から見れば些細は変化ではあるが…

で、次回使う資料整理を手伝う名目で彼を呼んだんだ。


「どうした?この所浮かない顔をしているが?」

そう声をかけると、手元のある次回資料の整理をしていた彼の手が止まる。
そして、声をかけた私の方を見てニッコリと微笑んだ。
一瞬動揺を見せたが、直ぐにいつもの彼の表情だ。
しっかりと見ていなかったら、見落とすぐらいのほんの一瞬の翳り…

「何でもないよ。それにしても、相変わらずすごい資料だね。次の講義に使うの?」

手に持っている資料を私の方に見せてそう聞いてきた。
今回の資料は、新たな魔法陣と過去の魔法陣に対しての比較検討だ。
過去のもの…そう、大賢者アルストの時代の物が多く現在も残されている。
彼が構築して来た多くに魔法陣に対して、さらなる追求や新たに多くの魔法陣が先人や今代の魔法陣研究家によって現在も多く研究されている。
特に多くの研究者が居るのは、やはりディール帝国の魔塔ではあるけれど、それ以外の魔術師達も研究者は多くいた。

今回は少し趣向を変えてみようと、この内容にしたのだ。カルがアルストと密かに研究していたのも知っていたからね。カル…私の愛しいカルロスのスキルで呼び出された多くの英霊達の中に、大賢者アルストもいた。過去にも英霊召喚者達はいたが、カルロスほどの召喚者はいない。そんな彼は魔法陣やその他の研究をするのも大好きなのだ。
その姿を見守るのも私的には気に入っている。あの子が喜ぶ姿は至上の喜びの一つだから…

そして、彼を守る材料としても利便性が高いと判断してアカデミーの非常勤講師としてアルストを教壇に立たせた。
推薦したのはもちろん私だ。
過去の英雄、大賢者アルストの子孫と言う設定にし、兄上の許可も勿論貰った。
『大賢者であるアルストの講義を、未来を見なう若者が受ける事は多いに歓迎だ!』と言ってもらえた。そこに至るように目論見もしたがな…

大賢者アルストの子孫は現在も居る。
我が国の魔法師団にだ。本来こんなことでは使用しない子飼いに指示して仕事に必要な資料を抜き取らせた。そして、カルに兄の忘れ物を届けるように仕向けた。カルの兄リカルトが王太子である甥の執務室来るようにし、偶然訪れた時に居合わせるように仕向けたのだ。
この計画は兄上も甥にも先に伝えておいた。この国においての重要なスキル持ちであるカルロスは保護対象者になり得るからね。勿論、私の大切な妻であるから、彼らにとっても身内。身内に対しての愛情は、竜人族は他種族以上のものがある。一番は『番』に対してだけれども…

で、その時に私も同席で紹介した。

彼が王太子であるルーズベルトの所に新たな魔法陣の報告をしていて、それに興味を持った大賢者アルストが出て来た。過去の文献にも、そして実際に会ってみた感じでも、彼の探究心は想像以上であったから、きっと食いつくと思っていた。目論見通り…思わず苦笑いしてしまうぐらいだった。

あの時のカルが焦った姿もまた可愛らしく、愛おしかったのだが…

今までも、時々であったが大賢者アルストに意見してもらっていた王太子殿下の執務室であるから、油断したんだろう。で、子孫とご対面だ。子孫である彼はかなり驚いていたけれど、それ以上に目をキラキラさせて喜んでいた。

で、彼からの推薦もあり、計画通りアカデミーの教壇に立つことになったんだ。
名前はそのまま。過去の英雄達の名前を我が子につける事は良くあるからな。ただし、初代聖女の『アカリ』だけは、誰でもつけていい名前ではない。そこは教会からの圧と言っても良い。『神様の名前を勝手に使ってはならない。名乗ることも…』という事だ。

現在、非常勤講師であるアルストの講義は大人気で、いつも教室いっぱいに詰め込まれるように人で溢れていた。カルも時々視聴しに友人と言っていると本人からも、子飼いからも報告は受けている。

「そう言えば、アルスト殿の講義も人気があったな。今度私も覗かせてもらおうと思っているんだ。」
「そうなの?」
「あぁ、カルを通して彼とは何度も話した事はあるけどね。彼の講義は満席だし、私も時間が取れずに視聴できなかったからね。少し国自体も落ち着いて来たから時間が取れるようにもなって来た事だし、大賢者が今の学生にどのように講義をしていくのか興味もある。新たな研究にも参加してるのだろう?本当にカルのスキルがなければこのような体験が出来なかったよ。」

そう言ってクスクス笑った。これで少し油断しただろうか?
追求をやめるつもりはないがな。

「で、何かあった?」

ニヤリと笑って口角を上げてみた。
さぁ。教えてもらおうか…


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる
BL
ベルリアンの次期当主、ノア・セシル・キャンベルの従者ジョシュアは頭を抱えていた。自堕落でわがままだったノアがいきなり有能になってしまった。なんでも「この世界を繰り返している」らしい。ついに気が狂ったかと思ったけど、なぜか事態はノアの言葉通りに進んでいって……?

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...